365 縦横無尽
「その思い上がった自信と殺戮、オレが止めてやる。フリーズ!」
ワイズが威勢と共に氷結魔法を放つ。
「誰が止まるか。ストリングプレイスパイダーベイビー」
複雑な形をしたクモの巣を天井付近に張って遮断をし、凍結魔法を防御する。
カチコチに凍てついてゆくクモの巣が、パリンと音を立てながら落石にぶち抜かれて砕ける。
「なっ、ざけんな! そんなデケぇのポイポイ落としてくんじゃねぇ!」
堪らず逃げに入るワイズ。直撃こそ回避した物の、落下の衝撃に押されて地面に転がってしまう。
痛みを抑えながら起き上がろうとするワイズに天井から影が迫る。
「上だワイズっ!」
ハッと見上げるワイズに、八本の鋭い足が迫る。
「空中のデカい的を射抜けないほど、アタシの腕はへなちょこじゃないわよ!」
急襲を仕掛けていたデッドに、矢の連射が迫る。
「くだんねぇ。僕が逃げれねぇとでも思ってんのかよ」
デッドは天井にクモの糸を伸ばすと、自由落下から方向転換をして射線から外れた。
更に天井から床にかけてクモの巣を張り、真横に着地する。
「ホント一筋縄じゃいかないわね。射抜けるまで何度だって放ってやるわよ」
言い張りながら弓を引くエリスに、デッドは手のひらを向けた。
「遠距離攻撃がテメェの専門特許だと思うなよ」
白い固まりが発射されたかと思った次の瞬間には、展開してクモの巣状になった。逃げ場を覆い尽くすようにエリスへと迫る。
「ちょっ、焼けろぉ」
引いていた矢に火炎属性を付与して迫るクモの巣を連射、焼け落ちて空いた空間に身体を潜り込ませてどうにか難を逃れる。
「デタラメに広い攻撃なんてかまさないでよ……って、嘘でしょ」
通り過ぎたクモの巣へ振り向きながら文句を言うエリスだったが、そのまま後方に張られたクモの巣に愕然とする。
後ろ一面の回避経路を塞がれた。
攻撃力も然る事ながら、張られるクモの巣のスピードも段違いに上がっている。おまけにデッドは、足場を選ばずに着地を出来る。
クモの巣を張るほどデッドは自由を増やし、ボクたちは自由を減らされる。
わかりやすいほど長期戦が不利だ。けど短期決戦も望めない。
デッドの立ち位置状、接近するまでが難しい。距離が離れていると一方的に攻撃されてしまう。
いかに素早く接近し、少ないチャンスで斬らなければ勝機はない。
「んじゃ、そろそろクモの巣に捕らわれてみっか?」
デッドが標準をエリスに定め、手のひらを向ける。
クモの巣を放とうとした瞬間、クミンが大剣を振りかざして跳びかかった。




