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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第5章 毒牙のデッド
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363 破壊

 矢と魔法が集中している中心に、剣を振るいながら跳び込む。

「ケっ、遠距離攻撃に紛れながら襲いかかってくんじゃねぇよ。こちとら対応中だ!」

 フレイルで飛来する攻撃を的確に弾きながら、飛び退いてボクとの距離を取ろうとする。

 逃がさない。その悪意に満ちあふれた非道のフレイル。何が何でも壊してやる。

「近付いてくんじゃねぇっての!」

 デッドが退(しりぞ)きながら、近場の岩を破砕して石礫を飛ばしてくる。

「その程度、わかっていればなんとでもできる」

 迫り来る石礫を剣で叩き切りながら接近。フレイルを振り抜いて硬直しているデッドの口が驚きで開く。

「なっ……」

「うおぉぉぉぉお!」

「って驚くと思ったか?」

 ニヤリと笑みに変わる表情。フレイルを両手で持ち、上段から叩き下ろそうとする。

「対処してくる事は想定済みだってんだよ。ひしゃげろ!」

 予感がする。デッドのフレイルはボクの剣より速い。参ったな。完敗だ。ボク一人じゃデッドには敵わない。けど。

 振り下ろさんとするフレイルの鈍器部分が、横から割り込んできた大剣に弾き壊される。

「ワシを吹き飛ばした程度で存在を忘れ去らないでもらえないかい。悲しくなって存在を示したくなるじゃないか」

 ボロボロのクミンが岩陰から現れて一撃を浴びせた。

 驚きで声も出せないデッドに、追撃の横一線を放つ。

 もはや棒きれとなったフレイルを両手で突きだして防御をしたが、構わず振り抜いてデッドを押し飛ばす。

 壊した。デッドの戦力を。怨嗟(えんさ)を生み出す悪意の象徴を。

 デッドは突起した岩に背中から衝突し、座り込んだ。

「あっ」

 不意に漏れてきた声は誰のだろうか。戦場に似つかわしくない、甘い声のように感じられる。

「っ……()ぇなぁ。あぁ?」

 デッドは不快そうに声を漏らしながら立ち上がると、両手にそれぞれ握っているフレイルの破片を確認する。

「あーあ、壊れちまった。せっかくのお気に入りだったのによぉ」

 デッドはフレイルだった物を後方へ投げ捨てながら歩く。カラランと二つ、小気味のよい音が広間に響く。

「頼みの武器はもうないぞデッド。今負けを認め、自らの行いを悔やみ反省するのなら見逃してやってもいい」

 仲間に衝撃が走るのを感じる。ボクは甘いのかも知れない。けど、こんなでもアクアの家族なんだ。手を差し伸べずに、一方的に断罪はしたくない。

「キヒっ……キヒヒヒっ」

 デッドが俯き、肩を揺らしながらほろ暗い笑いをこぼす。

 なんとなくわかってしまった。コレは、ダメなやつだって。

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