表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第5章 毒牙のデッド
350/738

349 宣戦布告のプレゼント

 蠢きの洞窟最深部で薄汚れた人妻共に、土埃に(まみ)れた干し肉を与えながらほくそ笑む。

「メシを用意してやったぜ。まっ、食うも食わねぇも自由だがな」

 一応勇者にアクションを起こすまでは生きていてもらわねぇと困るからな。勇者が慎重で僕の所まで来るのに長い時間を食ったなら仕方がねぇが。

 今日も岩陰にはアイポが隠れてるぜ。あんまり愉快な見世物をするつもりはねぇんだけど、どうしてもひっついてくんだよな。

(やっほーデッド。元気にしてる)

 不意に陽気な声が頭ん中に聞こえてきやがった。舌打ちをしながら対応する。

(んだよアクア。直接メッセージ使ってんじゃねぇよ)

(相変わらずだね。私たちはヴェルクベルクに着いたよ。ジャスってばせっかちで、明日鉱山に乗り込むって)

 相変わらずフランクに情報漏らしてくれるな。(はえ)ぇ方がめんどうが少なくて助かるけども。

(そいつは上々だ。それとボクの根城は蠢きの洞窟って言うんだ。鉱山と思って入ったら痛い目見るって伝えとけ)

 せっかくかっこいい名前をつけたんだ。僕と戦っている間だけでも覚えておいてもらわねぇとな。

(わかった。それとなく伝えとくね。戦いには私も観戦に行くから)

(あ?)

 コイツ来んのか? 戦場(ここ)まで?

(デッドのかっこいいところ、楽しみにしてるからね)

 アクアは言うだけ言うと、メッセージを一方的に切断しやがった。思わず重い溜め息が出ちまう。

 改めて残った人妻共を見比べる。今回は一番若いやつがいいな。

「なんだかムラムラしてきたな。お前にすっか、使い終わったら解放してやるぜ」

 視線に気づいた相手が恐慌(きょうこう)した面持ちで見上げてきた。

 主語を言わないまま新妻ドワーフの髪を鷲づかみにして、地面へと放り投げる。痛みで怯んでる内に服を力尽くで引き千切って襲う。

 愛情も同意もへったくれもねぇ。泣き喚く顔を殴って、前戯もなくむりやりヤる。

 女としての自尊心も、生きる希望も、何もかもをぶっ壊してから勇者に贈ってやる。僕からのプレゼントだ。キヒヒっ。

 とにかく狂気に走った笑みを貼り付けながら、ひたすらに嬲る。

 息をのんで眺めるギャラリーを背中に感じながら。

 じっくりと仕上げ、腹ん中に仕掛けを植え付ける頃には新妻はすっかり気を失っていた。

 僕は肩に抱え、怯える視線を捨て置きながら蠢きの洞窟入り口府付近へ向かっていく。

 大広間を出るとすぐに、アイポが黙って僕の隣に駆け寄ってきた。今回だけアイポ用の抜け道を作ったかんな。用が終われば崩すだけだ。

 気まずい沈黙を抱えたまま、並んで歩く。

 やっぱ怒ったか? それとも失望か? 特にアイポが見ていて気持ちいい見世物じゃなかったかんな。

 この蹂躙(じゅうりん)は元々予定してたんだ。アイポに気遣って変更する気はなかったわけだが、出来ればアイポがいない時を狙いたかったぜ。

 何かとお喋りなアイポが無言貫いてんのが怖くて仕方ねぇ。何とか言えよなチクショー。

 長い時間をかけて、陽の光が届く場所まで歩いちまった。

 肩に背負ったものを乱雑に地面へ置き、来た道を引き返す。

 コレで目を覚ましたら村の方に戻るだろ。その先にどう行き着くかは知らねぇ。

 僕から喋りかけられないまま、前を向いて歩く。不意に、隣を歩く足音が消えた。

 止まった? 止まったか。

 立ち止まって振り向きそうになるのを堪え、足下を見ながら歩き続ける。

 ケっ、決心すんのが遅いんだよバカが。

 やっとついてこなくなったかと清々しながら、後ろめたく進む。やっと道が正しくなったと信じて。

 不意に駆け出す足音が近付いて、背中にドスンと衝撃を受ける。

「ねえデッド、この前私とヤった時って初めてだった?」

 いきなり飛び乗ってきたかと思ったら、妙なことを聞いてきやがる。

「んだよ(やぶ)から棒に。初めてだったらなんだってんだ」

 ぶっきらぼうに答えると、そっかそっかと満更じゃない笑みを浮かべやがった。いや訳わかんねぇから。

「じゃあこれから口直しにわたしとヤる?」

「なんでそうなるんだよ。この前の経験で味でも占めたかクソビッチ」

 初潮もまだのクセしてよぉ。どこをどう曲解したらそんな結論に辿り着くんだ。

「ふーんだ。初体験で味を占められなかったお子ちゃまデッドには言われたくないもーん」

 この期に及んで挑発してきただと?

「上等だ。ベッドに戻ったら覚悟しやがれ」

「わたしは今ここでヤっても構わないけど」

 にんまりした笑顔が鼻先にある。クソっ、なんでこの手の話で僕が劣勢になんなきゃいけねーんだよ。

 腑に落ちねー事ばかりだってのに、僕は何にホッとしてんだかな。

「だいじょーぶ。わたしがちゃんと愛してあげるからね」

 無遠慮に頭撫で回すんじゃねぇっての。そう思いながらも止めろとは言えなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ