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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第5章 毒牙のデッド
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345 期待の反抗

 殴る。殴る。ひたすらに殴る。フレイルがヒットした感覚を身体に覚えさせる為、ひたすらに。

 息をのんで見守っているギャラリーなんか目もくれず、変形していくだけのサンドバッグにフレイルを振るう。

 やっぱ素振りとは訳が違うぜ。動かなくったって的に当てる事には意味があるってもんだ。

 狂ったようにキヒヒと高笑いしながら死体蹴りをし続ける。

 人攫いをしておいて、さっさと殺して、死んだ後も殴り飛ばす。ひでぇヤツだよなぁ僕も。こんな非道見続けていたら、文句のひとつも言いたくなってくるってもんだろぉ。

「ちょっとアンタ。いい加減にしなさいよ。こんなになるまで殴り続けるなんてかわいそうじゃないか。アンタには血も涙もないのかい」

 最初こそ惨劇に飲まれて怯えていた人妻共だったが、一時間も何もされず放置されていたら緊張が薄らいできたんだろうな。

 見せしめに一人殺してから僕は、他の生きてる連中には何もしてなかったかんな。何もされないんじゃないかって、そう頭によぎっちまったんじゃぁねぇか。

「あぁん?」

 フレイルを肩に置きながら振り返ると、非難がましい怯えた目が僕を見据えてたぜ。

「かわいそうなのか? 死んでんだぜ。もういくら殴られようが痛みも感じねぇだろぉ」

「かわいそうに決まってるだろぉ。あんなにも醜くされちまって、酷いじゃないかい。例え死んでいても自尊心ってもんがあるでしょ」

 自尊心? はっ、死んでも綺麗でいたいってか?

 鼻で笑っている間に、他の連中も口を揃えて僕の批難を再開しだした。

 あーあ。せっかく恐怖で黙れてたってのによぉ。勢いを取り戻し出しちゃったよぉ。

 僕が黙っているのをいい事に、最前にいる最長の人妻を中心に、ボロクソ言ってきやがった。

 ……いいねいいねぇ。実はずっと待ってたんだぜぇ、そういう風に怒りが再発火するのをよぉ。

 肩を揺らしながらキヒヒと笑う。人妻共は不気味に感じたのか罵倒を言えなくなったぜ。

「そうかいそうかい。僕は酷いヤツだよなぁ。対していっちゃん最初に声をかけたお前はすこぶる優しいやつだよなぁ。死んじまってるヤツの為に勇気を振り絞れるんだもんよぉ」

 言いながら手の平を差し出し、クモの糸を発射。最前にいる人妻を捉える。

「ひっ! やめてよ。やめて……」

 恐怖で顔を引き攣らせながら身じろぎするが、構わず僕の傍まで引き寄せ、宙に吊す。

「お前の優しさに免じて、そいつは解放してやんよ。テメェら、鉱山の入り口まで運んどけ」

 最初のサンドバッグを降ろし、魔物に命じて運搬をさせる。

「さぞ優しいあんたの事だ。自分の身体を差し出して他人を助けるぐらいわけねぇよなぁ。僕もそろそろ生きた感覚がほしかったところなんだ」

「いやっ! そんな事言ってない。やめて、やめてっ!」

 フレイルを肩でトントンとしたと構える。そしてたっぷりと素振りを演じる。まだ殴られてもねぇのに波だが出てきてんぜ。

 選ばれなかったヤツらも恐怖で黙りこくってらぁ。もぉ今度は喋れねぇだろぉな。

「さぁ、何分鳴けるかなぁ!」

 今度は誰の邪魔もされずに、僕の気が済むまでフレイルを振るい続けた。

 使い終わった二つ目のサンドバッグも魔物に命じ、タイミングを見計らって鉱山の外にポイしるぜ。

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