表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第4章 海原のアクア
333/738

332 生きてくれている事

 アクアが顔見せに帰ってきてくれた。元気そうな顔を見れて安心したし、やりたい事を見つけたようだったから応援したいとは思う。

「けどまさか、勇者について行って旅行がしたいだなんて言い出すとはなぁ」

 オレ達が復興した村ヴェルダネスを、チェルと並んで歩きながら呟く。

 アクアは勇者達の目を盗んで抜け出すように実家帰りをしたようなので、早々にヴァッサー・ベスへ帰っている。

「楽しそうにしていたのだからよかったのではなくて」

「それはそうなんだけどよぉ、アクアが無自覚に敵に回るのがなんとももどかしくてな」

 戦いに参加せずついて行くだけとは行っていたけど、他の子供達が目の色を変えてたんだよなぁ。

 道行く村人に挨拶を仕草で返しながら、当てもなく進む。

「アクアは気づいていないでしょうね。一番仲がいいフォーレでさえ好戦的な笑みを浮かべていたわ」

 恨みとか殺意じゃなくてみんな、純粋な好敵手が敵についた事で闘争心に火がついちまったんだよなぁ。

「つくづく生きるって残酷だよなぁ。都合の悪い事ばかりが起きてくれる」

「まったくね。けど生きてほしいと求められてしまう。例え役立たずでも、死を許されない」

 チェルだって状況に魔王の重責を押し付けられかけながらも、アスモのおっさんとリアに楽しく生きてほしいと残されちまってるからなぁ。

 魔王は俺が引き受けたけども、やっぱり申し訳なさとかは心の片隅に残っちまうよな。けど。

「誰だってどこかが誰かの役に立ってるし、心の支えにもなってんだ。俺だってチェルに楽しく生きてほしいって思ってるぜ」

「あら、私が役立たずとでも言いたげね役立たず。まぁ許してあげるわ」

 頬を赤らめながら貶してくれるじゃねぇか。けど満更じゃなさそぉだから許してやるぜ。

 テキトーに歩き回っていると、ススキと遭遇する。向こうも俺らを見つけたようで、大きく手を振りながら近付いてきた。

「あっ、コーイチにチェルじゃない。二人きりでデートでもしてるわけ」

「デートだと思ったのなら、話しかけるのは無粋だと思わないのかしら」

「常にラブラブしてる二人を相手に遠慮してたら話しかけられないじゃない」

 牽制するチェルに真っ向から反論するススキ。俺としてはデートと言う言葉が公認されているのか比喩表現なのか気になるところだ。

「それにしてもコーイチ。今日はスッキリした顔をしてるわね。ここ最近は気が気じゃないって、雰囲気醸し出してたのに」

 ススキに指摘されて驚いた。胸の内の心配事はシッカリと隠し通せていたつもりだったのだが。

「勇者に戦いを仕掛けたアクアが生きて帰ってきたのよ。もう全身でよかったって雰囲気をダダ漏れにさせていてよね」

 あのチェルさん。俺が何も言っていないのに心の代弁をするのはどうかと思いますが。

「そっか。家族の生死がかかった戦いだったもんね。よかったね、生きててくれて。それは嬉しいよ」

 納得したススキが背伸びをしながら頭を撫でてくれた。

 おっさんが少女に道中で頭を撫でられるのって、かなりむずかゆいんだけどなぁ。

 けどストレートに感情をぶつけてくれるのは、悪い気がしねぇ。

「ありがとな、ススキ」

「またツラくなったり嬉しい事があったらあたしの会いに来てもいいんだからね。情けなくて見ていられないから慰めてあげるわ」

 一方的に好意を押し付けると、手を振りながら走り去っていった。

「ススキも強くなってね。私が傍にいるというのに、見上げた胆力だわ」

 微笑むチェルもススキを受け入れているように包容的だ。お前ら仲よかったっけか?

「いつの間にか立ち止まっていてね。散歩の続きをしましょ。平和なんてあっという間に過ぎてしまうのだから」

「……そうだな」

 もう戦いの火蓋は切って落とされてんだ。ゆったり出来る貴重な時間を楽しもう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ