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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第4章 海原のアクア
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331 実家帰り

 ジャス達が揃って祝勝会へ出かけたのを機に私は、秘密の地下鉄を使って実家へと戻る。

 この地下鉄もヴァッサー・ベスに繋がっている部分は破壊しなきゃいけないな。下手に人間に見つかると色々悪用されちゃいそうだし。

 立派に建てた魔王城タカハシ、のすぐ近くにある二階建て一軒家の玄関を開けた。

「ただいまー」

 家に入るなり、背中にドサッと衝撃が降ってくる。

「おかえりアクア。勇者は強かった」

 エアが私に負ぶさりながら顔を出して聞いてきた。いきなりだなあ。黄色くて短い髪が頬をくすぐる。

「強かったよ。私じゃ勝てなかった」

「だっせぇなぁアクア。負けて戻ってくるなんてよぉ」

「ほーんとー、中途半端に戻ってくるぐらいなら死んじゃえばよかったのにー」

 リビングに入るなり罵倒を浴びせてきたのはデッドとヴァリー。デッドは嘲りが強くて、ヴァリーは直線的。

「ごめんね、死ねなくて」

 素直に謝ると、デッドがケっとそっぽを向く。

「二人共アクアに心ない言葉を浴びせるのはやめて下さい。それとエアはいい加減下りてください」

 シェイが私とデッド達の間に割って入ってくれる。エアも背中から飛び降りてくれた。

「お疲れ様ですアクア。立派に一番槍をやりきってくれました」

 切れ長の黒い瞳でまっすぐと労いの言葉をかけてくれた。それが凄く申し訳なく感じる。

「立派になんてできなかった。私、シェイみたいに格好よく戦えなかったから」

「例えアクアがそう思っていても、自分は立派だったって思いますよ」

 微笑まれると情けなさで泣きそうになってきちゃう。俯いていたら、背中から優しく抱きしめられた。

「おかえりぃアクア。生きててくれて嬉しぃ。お水ちょうだぁい」

「もお、フォーレってば相変わらずだなあ。おセンチな気分がどっか行っちゃったじゃない」

 生き残っていて申し訳ない気持ちが、生きてて嬉しいって言葉に吸い取られちゃったよ。生きてフォーレと触れ合える。生きてみんなと関われる。当たり前で、凄く嬉しい。

「お水あげるからいったん離れ……やっぱりもうちょっとこのまま、フォーレのあたたかさを感じさせてほしいな」

 触れ合っている体温に生きた証を感じる。

「しょうがないなぁ。気が済むまでぬくもりを堪能するといいよぉ。アタイもアクアが好きだからぁ」

「ありがとうフォーレ。大好き」

 気兼ねなく大好きを言い合いながら微笑み合える。血の繋がった、一緒に育った兄弟だから遠慮なんてない。

 安心できる居場所が確かに存在してる。

「あなたたちは相変わらず仲がよくてね」

「おかえりアクア。元気そうでなによりだ」

「チェル様。お父さん」

 フォーレとじゃれ合ってたら二階から二人して下りてきた。チェル様が優しく微笑んでくれて、お父さんが頭を撫でてくれる。

「ただいま。お父さんあのね、私、旅に出ようと思うの」

 お父さんの顔を見て早々にカミングアウトを決める。頭を撫でていた手が止まり、家族全員から視線を浴びせられる。

「そっか。もうやりたい事が決まってたのか」

「うん。勇者側に気に入った子を見つけたからついて行く事にしたの。勇者側の視点がどんなのかも気になったし」

 心に決めた事を話すと、チェル様でさえも驚いた表情を浮かべていた。最初に笑ったのは、エアだった。

「あははっ。おもしろいよアクア。ウチ達の戦うんだね」

「え?」

 声を上げて首を傾げると、みんなから、え? が返ってきた。

「あぁ。ついて行くだけで私が加勢するつもりはないよ。勇者視点に立って観光するのが目的だから」

 危ない危ない。誤解されるところだったよ。ほっと安堵したら、フォーレがニヤリと微笑んだ。

「そっかぁ。コレはおもしろい事になりそぉだねぇ。特大級の楽しみが増えたよぉ」

「ですね。自分も今以上に腕を磨かなければなりませんね」

 ジェイが向上心を高める笑みを浮かべる。(つい)に浮かない顔をしたのはデッドとヴァリーだった。

「いいわ。好きになさいアクア」

 チェル様も吹っ切れたような、門出を祝うような微笑みを浮かべてくれた。対してお父さんは、溜め息をひとつ吐いてから笑みを作った。

「好きにしろって言ったのは俺だったな。楽しんでこいアクア。んでもって疲れたらいつでも帰ってきていいからな」

 不服がありそうながらも背中を押してくれる。頭をポンポン叩かれるだけで愛されてるって感じられる。だから行動しよう。私も。

「ありがとう。行ってくるね。みんな大好きだよ」

 今日中に帰るって旨の置き手紙を残してきちゃってるから早々に勇者の元に戻らないと。

 私はみんなに見送られながら、旅行をスタートさせる。

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