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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第4章 海原のアクア
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329 崩壊

「さてと、そろそろ用事を済ませちゃわないとね」

 改めて見上げる私のお城。フォーレからたくさんアイデアをもらって、魔物達が暮らしやすくて戦いやすい環境を詰め込んだんだよね。

「具体的に何をするつもりよ。こんな所までアタシ達を連れてきて」

「アクアリウムの崩壊」

 サラっと答えると、はい? って間抜けな相槌が返ってきた。

「この塔があるから私を倒した事を疑われてるんだよね。だったら名残惜しいけど、壊しちゃった方が手っ取り早いよ」

「そりゃまぁ手っ取り早いけどよぉ、思い入れとかはねぇのかよ」

 ワイズがためらいがちに気を遣ってくれる。

「戦いの舞台として造っただけだから、それほど名残惜しくもないかな。中の魔物達も避難してると思うし」

 船を押している最中に魔物達を介して伝達したからね。逃げ遅れた子はいないと思う。

「苦しい思いをさせられた城だけどさ、なくなるとなるともったいなく思っちゃうね。立派なのにさ」

「決着の形はわかりやすくしないといけないもん。それじゃ崩すよ」

 港に手を当てて魔力を込める。ここら辺一体が揺れ始め、アクアリウムの外壁にひびが出来ていく。

「ところでさお姉さん。この辺って安全なのか?」

「あっ!」

 考えてなかった。

「ちょっとアクア!」

 エリスが両肩を掴んでブンブン揺さぶってきた。頭がグワングワンになっちゃうから落ち着いて。

「とりあえずみんな船に乗り込んで。安全は私が確保するから」

 港に停めてあった小舟にみんなを乗り込ませてから、船尾を押して軽く距離をとった。瓦解したときに生じる波にとかは魔法で押さえ込むから、間違っても転覆はさせない。

 水の流れに気を遣いながら、崩れゆくアクアリウムを眺める。

「そんなに思い入れとかないはずなんだけどな。崩壊するお城を見ると、悲しくなってきちゃう」

「やっぱりお姉さんにとって大事なお城だったんじゃねぇか。ムリすんじゃねぇよ」

「別にお城に未練はないの。ただ、崩壊するお城を見てたら、お母さんが死んだときの事を思い出しちゃって」

 実際に死んだところを見たわけじゃない。身体が取り残されているっているのに助けにいけないもどかしさとか、弱さとか無力さとかを実感させられたりとか、動く事の出来ない薄情さだとかを突きつけられた。

「どうして死んだんだよ」

「お母さんはクラーケンでね、先代魔王のおじさん……アスモデウスの部下? だったの。攻め込んできた勇者達の足を止める為に、命懸けで戦ったんだよ」

 アクアリウムが次々に壊れていって、大きな破片が落ちては発生する波を沈静していく。

「それじゃぁさ、お姉さんにとって勇者達は仇って事か?」

「違うと思う。お母さんが居たのは魔王のおじさんが居たところより遠かったから、一緒に攻め込んできた人間の誰かに討たれたんだと思う。それで最期は、崩れゆく魔王城の中に置き去りにしちゃった」

 一際大きな亀裂が生じたと思った次の瞬間、アクアリウムが一気に崩れ落ちる。生じる波の大きさも尋常じゃないから、押さえ込むのに苦労するよ。願わくば、何も巻き込まれてない事を祈ってるからね。

「お母さんは使命を全うして散った。結構強かったから、討伐した人間からすれば勲章物なのかもね。一般的な視線で見れば正義になるんだと思うよ」

 崩れ去った。ちょっと港の部分は残ってるけど、海岸からは視認出来なさそう。仮に出来ても跡地って事で問題にはならないかな。

「恨まないのかよ。お姉さんは人間を」

「恨んだってしょうがないもん。殺す殺されるって、どこででも行われている事だから。それにしても、ジュンにお姉さんって呼ばれるのっておかしな気分なんだよね」

「オレおかしい事言ったか?」

「だって私六歳だもん。私の方が年下なのにお姉さんなんだよ」

 振り向いて微笑むと、呆けた沈黙の後に絶叫が上がった。

 ネタばらしって楽しいよね。

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