表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第4章 海原のアクア
327/738

326 船は進むよ

「持ってきたけど、こんなのしかないぜ」

 ジュンが近くから木製の船を持ってきてくれた。動力なんてない、手漕ぎのやつ。浅瀬用で、間違って沖に出ちゃったら普通は帰ってこれない作りをしている。

「不安と言うより無謀だね。アクアリウムに行くにはやっぱり、ちゃんとした船と船長を雇った方がいい」

 堅実に否定するジャスだけど、アクアリウムに行く事には反対してない。私が戦う気になるとか考えてないのかな?

「ダメだよ。できるだけ少人数にしたいもん。それに、この船で充分」

 船の形をしていて全員が乗れる大きさもある。これ以上はないね。

 みんな訝しげに渋っていたけど、やがてエリスが投げやりに溜め息を吐いた。

「はいはいわかったわよ。乗ればいいんでしょアクア。ほらジュンも一緒に行くよ」

「おっ、おい」

 戸惑うジュンの手を取り、船首の方に座るエリス。

「しゃーねぇなぁ乗り込むとすっか」

「快適な船旅を頼んだよアクア」

 ワイズが伸びをしながら乗り込み、クミンも続く。ジャスも無言で船尾の方に乗り込んだ。

「それじゃ行くよ」

 私は船を押しながら最後に飛び乗った。水の流れを調整して、まっすぐ自動でアクアリウムへと進んでいく。

「すげぇ速ぇ、オールも漕いでないのに」

 進行方向を眺めながら驚きの声を漏らしたのはジュンだね。普段この船に乗り慣れている分、驚きも大きいみたい。でもこんなもんじゃないよ。

 内心微笑みながら、いそいそと準備をする。

「凄いスピードね。コレならあっという間にアクアリウムに着くわ。さすがアクア……って、何脱いでんのよっ!」

 喜色満面の笑みを浮かべて振り向いたエリスが、私を見るなり怒声をあげた。隣のジュンは顔を赤くしている。

「なんでって、服濡らしたくないもん。ハイこれ、ちょっと血で汚れちゃってるけど、持ってて」

 近くにいたジャスに脱ぎたてホヤホヤの衣服一式を渡し、海へと飛び込んだ。今更だけど買ったばかりの服に穴空けちゃったな。もうちょっと物を大切にした方がいいのかも知れないね。

 海中で元の姿に戻り、船尾に両手を伸ばして身体を出す。

 私が何をするかいち早く感づいたのはワイズだね。鼻の下を伸ばしてた表情が驚愕したもので固まってる。

「おいまさかアクアさん。ひょっとして物理的に押す気かい?」

 ワイズの問いにみんなの表情が固まる。私は微笑みを答えに、加速した。

「ちょっ! ちょぉぉぉぉぉおっ!」

「速いっ! アクア速いからっ!」

 盛大に水飛沫を上げながら、超加速で船は進んでいく。

「速すぎんぞアクア。船の耐久考えやがれぇ」

「大丈夫だよ。水の抵抗はほぼゼロになるように水の流れを整えてるから」

 ワイズのクレームを置き去りにするように、更なる加速をする。なんか楽しい。

 アクアリウムに着く少しの間、絶叫とスピードが船を支配していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ