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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第4章 海原のアクア
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323 矛先

 ざっ、ざっと砂を踏む音に振り返ると、銛を持った少年がいた。

 紺色の短い髪に同じ色の瞳。程よく焼けた肌は健康的で、少年ながらなかなか引き締まった体付きをしている。

 ヴァッサー・ベスの侵略中に出逢った男の子。

「おはようジュン。今日は早いね」

 いつも元気で、かなりヤンチャで、私の事をお姉さんって慕ってくれてた。おかしいよね。

 ただ今日はいつもの元気さはなくて、かなり暗い表情をしてる。重々しい。

 まぁ当然か。私の正体、晒しちゃってるからね。

「銛なんて持ってどうしたの? 素潜りかな? 今なら近くに魔物もいないし、もし溺れても私が助けてあげるよ」

 ジュンってば、一言も喋らない。

 どういう風に行動してくる予感しながらも、視線を海に戻してリールを引く。

 竿を全力でしならせ、餌に命の動きを吹き込み、今日全力の釣りをする。

「っ! うわあぁぁぁぁあっ!」

 甲高い雄叫びに走る足音、振り返った瞬間、ジュンの銛が私の身体を貫いた。

 ……フィッシュ。

 なんて思ってる場合じゃないね。貫かれた身体が熱い。重要な内臓も貫かれてる。熱いものが喉から口まで逆流してきた。

 傷口と口元から流れ落ちる赤が、ジュンの身体を汚く染める。

 あぁ、なんてことだろう。コレ、マズいや。

 銛を力強く握っていた両手が震えてる。

 睨み付けていた紺色の瞳が、怯えたように揺れた。手を離し、後退っていく。

 ジュンってば動揺しすぎ。見ていて気の毒になちゃうよ。

「……どうして」

 ジュンが疑問を口にし、更に続けていく。

「どうして漁師を襲ったんだよ! どうして魔物なんか従えてんだよ! どうしてたくさんの人間を襲ったんだよ!」

 泣きながら一つずつ語尾を強くして訴えかけてくる。

 やっぱりジュンは強い男の子だ。私の強さを知りながら、真っ正面からぶつかってくる。そういう所、好感持てちゃうな。

「どうして……勇者に殺されてないんだよ。助かってんだよ……」

 膝をついて(うずく)まっちゃった。

 ジュンには結構酷い仕打ちをしたつもりだったんだけどな。好きを嫌いになりきれなかったみたいだね。

「助けられた理由なんてわかんない。私が知りたいぐらいだよ」

 この状況だと喋るのも億劫だね。けど答えられるところぐらいは答えないと。

「ふざけんなよ。なんで微笑んでんだよ。オレはそんなにバカなのかよ」

 んー、バカにしてるわけじゃないんだけどな。どうしよっか。あれ?

 近付いてくるみっつの気配を感じてゲンナリする。

 ジュンとの会話にのめり込んでたところだったのに、タイミングの悪い部外者だなぁ。

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