表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第4章 海原のアクア
320/738

319 広がる不穏

 ジャスとワイズに半裸のアクアを任せている間に、アタシはクミンと一緒に服屋を漁っていた。

 効率重視でこの別れかたしたけど、宿で一騒動起きちゃいそう。

 アクアってばプロポーションいいのよね。元々着ていたワンピースもシンプルながらに凝ってたし。色はやっぱり青系の方が好みなのかな。

「ちょっとエリス。庶民向けの服屋で物色しすぎじゃないかい。ワシらはとりあえずの繋ぎを買いに来てるだけなんだよ」

「そうはいっても必要最低限は着飾りたいじゃない。元がいいんだよ。組み合わせ次第では気に入ってくれるかもだし」

 下着に服にズボンを買ってはい終わりでもかわいくなりそうだけど、下はスカートの方がいいのかな。でもアクアってどこか無頓着そうなのが怖いのよね。

「ちょっとしたアクセントに帽子でも追加で買っていこうかな。でもそのためにはここでベースを決めちゃわないと」

 あれこれ悩んでたらクミンに溜め息を吐かれた。いいじゃない、おしゃれも着飾るのも楽しいし。

「アクアに気を許しすぎじゃないかい。さっきの戦い、アクアが気分次第では呆気なく全滅してたんだよ」

 クミンの指摘で、服を物色していた手が止まる。

「アタシだって、それくらいわかってる」

 戦いに勝てたのは偶然とか奇跡とか、正義とか執念とかそんなんじゃない。

 間違いなく、接待だった。それも全力の。

「アクアって全力で正面からぶつかってきてたよね。手なんて抜いてなかったし」

「それに関しては間違っちゃいないねえ。けど、もっとずるく戦ってたらワシらは、手も足も出せなかっただろうね」

 圧倒的な水の魔力も槍の雨もそう。アタシなんてイカ足に捉えられたからその時点で普通なら終わってる。それ以前に、塔を登っている途中でアクアが奇襲する事も可能だった。

 考えるほど色々出てくる。地の利を活かそうと思えば、いくらでも活かせたんだ。

「おとなしくしているのがわからない分、ワシは近くに置いとく事が怖いよ」

 寝首を掻こうと思えばいくらでもできる距離。クミンの言う事ももっともだ。けど。

「店員さん。コレ下さい」

 服を選んで店員に渡す。ぎこちない動きで買い物に応じてくれた。

「アクアをあんまり警戒しなくても大丈夫だと思う。なんかあの子、戦いに向いてなさそうだから」

 お金を払い、服を胸に抱いてクミンと一緒に店を出る。

「考え方がおかしいから目は離せないけどね」

 最後に付け加えると、しょうがないとでも言うのよに苦笑いされた。

「おい、あの二人って勇者の仲間だよな。確か今日魔物の親玉倒しに行くって話だったけど」

「ここにいるって事はもう倒したのか? けど勝ったって話は聞いてないけど」

「海に建つ塔を確認すればわかるんじゃないか」

 不意に耳に届いた噂話。折角気分がよくなってきたのに、急に悪い事してる気分にされる。

 よくよく周囲を見渡してみると、遠巻きからの視線が多い。嫌な感じだ。

「行くよエリス。ワシらは何も聞いてないから、普段通りにしな」

「あっ、うん」

 帽子を買いに寄り道するつもりだったけど、表情を硬くしたクミンの後を追って宿へと戻っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ