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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第4章 海原のアクア
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318 破れたワンピースを羽織った男

「ところで私、どうしたらいいかな?」

 アクアは一頻り悲しんだ後で、きょとんと聞いてきた。

 そういえばどうするんだろう。ジャス任せになんとなく助けちゃったけど、逃がすわけにもいかないわよね。

「とりあえず人間の姿に戻ってくれ。その姿だと悪目立ちが過ぎるから」

「一応こっちが元の姿なんだけどね。はい」

 アクアは青く輝くと、人間の姿に戻った。青い髪と瞳に白い肌。二本の素足で砂浜に立っている。ただ血まみれのワンピースが前からスパンと切り裂かれているから、かなりあられもない姿になっている。

 ジャスが目を背け、ワイズが釘付けになる。このおっさんは。

「あんたノーパンだったのかい。パンツぐらいは穿きな」

「元の姿で戦うつもりだったのにパンツなんて穿けないよ。姿を変えた瞬間に破れ爆ぜちゃうんだよ」

 アクアが指摘すると、呆れていたクミンの表情がゲンナリしたものに変わった。

 下半身、イカの足になって膨れ上がってたもんね。そりゃパンツなんて弾け飛ぶよ。

「あっ、そうだワイズ。私の服いる? 破れちゃってるけどドロップアイテムになりそうな物、これくらいしかなくて」

「言葉の応酬のつもりだったがそういうことなら。今この場でくれグボっ!」

 ワイズが何食わぬ顔でアクアを()()こうとしたので、アタシ達は全員で打撃を入れた。砂浜に沈む。

「ったくこのエロじじいが。あんたも変な誘惑するんじゃないよ」

「結構本気だったんだけどね。一見すると普段着だけど、強い魔物の素材をふんだんに使ってるから並みの防具以上には衝撃を流してくれるし。なにより着心地もいいよ」

「ちょっと羨ましいね。けどその破れたワンピースをワイズが着れるとでも」

「見ての通り前が切り裂かれてるから、羽織れば良い感じの変態おじさんが出来ると思うな」

 どうしよう。危ないおじさんがハイになって魔法をぶっ放ってる姿が想像できちゃった。

「のっ……望みだったらやってもいいぜ」

「ワイズは黙って砂浜に寝てな」

 クミンの足がワイズの横っ腹に入った。うめき声が一つ。

 ジャスが深い深い溜め息を吐いてから、顔を上げた。

「とりあえずボクたちと一緒にいてもらうよ。クミンとエリスはコイツの服を簡単に見繕ってくれ」

「あいよ。とりあえず着られるものを買ってくるよ。エリス、今から行くよ」

「あっ、うん。終わったら宿に戻ればいいよね」

 確認するとジャスは頷いた。

「ボクたちは一足先に宿に戻ってるから。ほらワイズ、いつまでも蹲ってないで行くよ。お前も、ついてくるんだ。妙な動きをしたら斬り捨てるから」

 ワイズには慈悲のない言葉を押し付け、アクアには棘のある態度で命令する。

「暴れるつもりはないけど、退屈なのは苦手だから。話し相手になってくれると嬉しいな」

 アクアのお願いを無視する形でジャスは歩き出した。

「やれやれ。嫌悪するのはいいけど警戒心がなくなってっぞ。行くぞアクア」

 ワイズが起き上がると、軽口を叩きながらアクアと一緒にジャスについて行った。

 なんか、空気がゆるい。

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