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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第4章 海原のアクア
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316 分の悪い賭け

 ジャスがアクアへ降ろした剣が、ガキンと床を貫いた。

 動かないアクア。けどまだ生きてる。深刻なダメージは受けているけど、気を失っているだけだ。

 ……はずした。

 クミンがゆっくりとジャスに歩み寄っていく。

「いいのかい? まだ生きてるよ」

 ジャスは床に剣を刺したまま、たっぷりと時間をかけてから答える。

「そうだね。まだ生きてる。ヒール」

 アクアに施す回復魔法。傷口が塞がり、完全に一命を取り留める。

 ワイズは自身を戒めていた氷を溶かすと、杖で肩をポンポンと叩きながら歩く。

「マリーの仇じゃ、なかったっけか」

「憎いさ。今でも殺したいほどに。けど、魔王と割り切って討伐するには、あまりにも無垢な少女すぎる」

 床から剣を抜き、鞘に収め、アタシ達の方に振り向く。

「ねえワイズ。ボクたちは、何と戦っているのかな?」

 水色の瞳が迷いに揺れている。微笑みは酷く歪な作り物のようだ。

 アタシ、アクアとの戦いには違和感を感じていた。全力を出してるはずなのに、どこか手を抜いているような。ジャスも、きっとワイズやクミンも感じていたんだ。

「人類の敵、魔王。答えはそれだけでいいじゃねえか。他の何者かなんて、考えねぇ方がいい」

「けどどうするんだい。アクアを。回復しといてやっぱり殺すかい」

「助けよう。この状況からいたぶるような趣味は持っていないよ」

 ジャスは二人の問いにスッパリと答えた。もう既に決めていたみたい。

「けど、目を覚ましたアクアが再び襲ってきたらどうするの?」

 アタシ正直、勝てる気しないよ。

「まっ、そんときゃ諦めるっきゃねぇな。分の(わり)ぃ賭けだけど、ジャスが賭けちまったかんな」

 ワイズが諦観したような笑みをこぼす。

「もう祈る事しかできないよエリス。ジャスは一度決めた事をなかなか曲げないからね」

 大剣をしまいながらクミンが溜め息を吐いた。

「不安しかないわ。けど、もしも分の良い方に行ったなら、アクアの話を聞きたいな」

 教えてくれるならだけど聞きたい。どういう心境で戦っていたのかとかを。

「決まりだ。帰ろう、ヴァッサー・ベスに。アクアを連れて」

 ジャスはアクアを横抱きにして持ち上げながら決定した。

 ひとまず戦いが終わった、のかな。気を抜いてもいいんだよね。

「ところでジャス、どうやって帰るんだい。見た感じ、出口なんてなさそうなんだけども」

 クミンの指摘にアタシ達はみんなして、あっ、と声を漏らした。

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