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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第4章 海原のアクア
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313 近付く決着

 足下にある凍てついた水が、ひび割れて氷塊へと変わる。

 さっきまで完全に固まってたのに、今じゃ氷塊がたくさん浮いている水に戻ってる。

 ワイズが必死で封じたアクアのテリトリーが、ほんの僅かで復活するなんて。

「なんかこうみるとコップみたいだよね。冷たい水に氷を浮かべているような感じ。ちょっと傾けたらカランって音が鳴りそうな。さすがに水槽は傾けられないけれど」

 水面が渦巻き、氷塊同士がぶつかり合っては鈍い音を鳴らす。

「わっ、酷い音。やっぱりコップを回すような小気味のいい音は鳴らないか」

 不意に水柱が上がり、アタシ達に降り注がれる。

 また槍の雨が降る。違う、氷塊が直接落ちてくる。

 ジャスはアタシとクミンを抱えながら逃げる。網目の床にガツガツと氷塊が落ち、デコボコに歪んだ。

「うわぁ、せっかく綺麗に整えた足場がメチャクチャになっちゃった。氷は直接操れないから、そうなっちゃうか」

 足場がへこんだ事で悲しそうに呟くアクア。戦いの最中だって言うのに、随分と余裕そうじゃない。

 嘗めた態度に怒りを覚えたくなる。けど、アタシもクミンも満身創痍で回復が追いついていない。ワイズも魔力を使い切った挙げ句、氷漬けにされている。

 まともに戦えるのはもう、ジャスしか残っていない。

 負ける。負けが着実に近付いてきてる。怒りを通り越した悔しさで手を強く握り込む。けどそれ以上に動けない。

 誰一人倒せないどころか、足を引っ張ってばかりで終わる。終わる。

 悔しくて情けなくて、どうしよもなくなっているアタシを、ジャスは床へとそっと降ろした。

 凜々しい水色の瞳でアクアを見据え、両手で持った剣に力を込める。

 どこまでも鋭く、限りなく大きい威圧感がジャスから溢れ出る。

「ついに真打ち登場かな。お仲間が戦闘不能になって覚悟でも決めた?」

 引きつった笑みに強張る身体。さっきまで優勢だったアクアが明らかに尻込んでいる。

「一撃だ。この一撃で形成を変える。もうこれ以上、仲間を傷つけさせない」

「いいよ。大切な仲間、生きてるうちに守ってみせてよ。勇者らしいの期待してるよ、ジャス」

 トライデントを握り直して待ち受けるアクア。真正面から勝負する気だ。

「見せてやる、勇者の力を。ブレイブ・ブレイド」

 全力で放った聖なる斬撃が、アクアへと解き放たれた。

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