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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第4章 海原のアクア
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309 水

 真下から湧き出た水柱を全身で受けてしまう。どこもかしこも衝撃だらけで、息をするのもままならない。

「エリスっ!」

 凍えそうな身体を抱きしめてくれる温かな腕。よく見えないけど、ぬくもりだけが確かにある。

「ヒール」

「……ぁ」

 ぼやけた視界が定まると、ジャスの心配そうな顔が映る。かなり近いような。

「無事かっ!」

「無事? えっ、あっ、アタシっ」

 魔王アクアとの戦いの途中だったと思い出して身体を動かそうとして、激痛が走った。

 そうよ。思いっきり攻撃食らっちゃったのよ。意識が飛んでたわ。

「ボクのヒールは神官(ほんしょく)よりも効果が弱い。あまり頼りにならないから、気をつけて」

 ジャスが一点を集中しながら注意を促した。視線を追うと、微笑んでいるアクアの姿がある。

「今のでエリスは落とせたかなって思ったんだけど、ジャスも必死だね」

 落とす? どこへ。

 ジャスの後ろを確認してみる。穴が空いたように足場のない空間がある。あんな所から落ちたら、魔物が蔓延(はびこ)る水槽に真っ逆さまじゃない。

「随分厄介な場所じゃないかい」

「足場全てに武器を仕込んでるってかぁ、シャレになんねぇぜ」

「エリス、一人で動けるかい。庇いながら戦える状況じゃなさそうだ」

「えっ?」

 お尻から床に降ろされる。って、アタシはジャスにどう助けられてたのよ。抱きかかえられっ……、違う。今は魔王アクアだ。

 軋む身体にムチを打って、弓を構えながら周囲を警戒する。

「準備万端だね。今度は接近戦でいくよっ」

 トライデントを振り回しながら、楽しそうに駆け込んでくる。

「ヤケにでもなったかよ、こんにゃろぉ」

「さすがにワシらを嘗めすぎじゃないかい」

 ワイズが複数の火球を放とうがお構いなしに切り捨てながら、クミンへ斬り掛かかってくる。けれども合わされた大剣の勢いのが強かった。

 アクアがバランスを崩しながら後退する。

「わっとっと。って、怖っ!」

 生まれた隙を突くべくジャスが接近戦を仕掛けた。慌てふためきながらトライデントを振り回して防御に徹する。けど逃げた先が間抜けだった。

 あ、このまま行ったら。

「って、ちょっと待って。もっと勇者らしい正々堂々した戦い方とか……」

「おまえを殺せれば、なんだっていい!」

 ジャスが渾身の横振りをトライデントの柄で防御するアクア。けど衝撃が強くて踏ん張りきれず、床のない空間へと後退した。

 ドボンっ。

 落ちた。誘い込んでおいて、あっさりと自ら作り出した環境で自滅した。

「わっぷ。やだっ、溺れるっ、溺れっ」

 水面でバシャバシャと足掻き、涙目で手を伸ばしてくる。

 ちょ、正気? っていうか泳げないっ? こんな戦場を用意した、水を自在に操る魔王が?

 呆然とアクアを眺めていると、程なくして水へと沈んでいく。次第に泡は小さくなり、水面に静寂が広がる。

「えっ? 倒した、の?」

「水魔法のスペシャリスト様のクセして、溺れ死ぬなんてな」

「終わってみれば呆気ないねえ。っで、ジャスはどう思うんだい?」

 微妙な空気感。ワイズもクミンも武器を構えたまま、軽口を言い合う。

「これで終わり……なはずがないだろう」

「だよなっ、警戒しろエリス。足下全部がアクアの攻撃範囲だかんな」

「こうなると厄介だねえ。こっちから攻撃する機会が少なくなるんだから」

 みんなの雰囲気からして、やっぱり戦いは続いてるよね。けどどう警戒すればいいのよ。

 混乱していると、穴の空いた足場から水飛沫が舞った。

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