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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第4章 海原のアクア
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308 撤退

 アクアは退きながら、振るわれる剣にトライデントを必死に合わせる。けれども腹蹴りが聞いていて対応が鈍くなっている。

 ジャスが突きを放つと、アクアは歯を食いしばりながら後退し、水魔法で牽制する。

 距離が開くと、アクアの右腕に切り傷が出来ていた。腕伝いにポタポタと血が滴り落ちる。

「当てられちゃったか。捌ききれる自信はあったんだけどね」

「痛そうだね。けどマリーの受けた痛みはそんな切り傷程度じゃない。必要以上にいたぶる趣味もないけど、せめて同等に痛みと恐怖ぐらいは味わってもらう」

 チャキリと剣を構え直すジャス。クミンもワイズも、アタシだって戦意を込めて武器を構える。

「みんな凄い気迫。怖いな。怖いから奥の手使っちゃうよ」

 アクアはトライデントを構えながら微笑むと、足先でトンと床を突いた。

 部屋中央にあった白い円の床が開いた。

「奥の手だと。何か出す気かっ!」

「気をつけなエリス。アクアはここで待ち構えてたんだからね」

 クミンの忠告で気を引き締める。待ち構えていたって事は、部屋に有利になる為の仕掛けや準備をしていたって事よね。

 穴の大きさからして、中型の魔物ぐらいは余裕で出てきそう。援軍による数任せの乱戦か、それとも強力な魔物が数匹追加されるのか。どっちにしてもやってやるわ。

 増援に注意を分散させると、アクアが穴に向かって走り出した。

「このままじゃ敵いそうにないからね。ここは逃げさせてもらうよ。あ、先にジャンピング土下座でも見せた方がよかったかな?」

 よくわからないことを言い捨てながらアクアは穴に飛び込んだ。

「ちょっと。まさかこの穴、脱出経路?」

 あんな偉そうな口叩いておいて、人間を小馬鹿にして、ちょっと危なくなったら逃げる?

「ふざけんじゃないわよ。そう簡単には逃がさないんだからっ!」

 衝動に任せて飛び込む。

「追うなバカっ、くそっ、この下って確か……」

「迷っている暇はないよワイズ。それに魔王アクアは逃がせない」

「ジャスっ! あーもお、ワシらも飛び込むよワイズ」

「ったく、嫌な予感しかしねぇぞコンチクショぉ」

 アタシたちを追いかける声を聞きながら、下を見据える。思ったより高くないところに足場があった。着地してから確認する。

「編み目の足場。その下は、水?」

 周囲を見渡してみると、壁は全面ガラス張りだった。ガラスの向こうの壁には、さっき登ってきた螺旋階段もある。

「ちょっと、ここって、まさか」

「また会ったねエリス。すぐに飛び込んでくれると思ってたよ」

 微笑みかけるアクアはどこまでも穏やかで、狡猾(こうかつ)さなんて気配にも出していない。

 対峙をしていると、ジャスたちも次々に降りてきた。

「なるほど、いい心がけだね。どこにも逃げ場がない」

「ちょっと特殊だけど、足場は悪くなさそうだね」

「気ぃつけろよ。誘い込まれたことには(ちげ)ぇねぇんだからよ」

 みんな周囲に注意しながら立ち位置を変えていく。アタシも弓を構えながら後方へと足を動かす。

「まずは軽くいこっか、それっ!」

 アクアが喋った瞬間、足下の水面から水が噴き出してきた。

 ちょっ、上で見た時より出が速っ。

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