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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第4章 海原のアクア
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293 浮き彫り

 頭から被ってしまったタコスミを、ワイズが魔法を使って洗い流してくれた。まだ生臭さが身体に張り付いていて気分は最悪。

「また派手にぶっかけられたな。けど生きててよかったじゃねぇか。タコスミじゃなかったら死んでたかもしんねぇかんな」

 あっけらかんと笑いながら突きつけられた現実。アタシの弱さが浮き彫りにされた感じ。

 弱気なんてダメ。なんの為にジャスたちについてきたと思ってるのよ。けど……。

 ジャス達の会話を聞き流しながら歩く。

 次々と湧いてくる弱気を振り払っている間に、宿まで戻ってきていた。

 選ばれたのはワイズの個室。

 眠るだけの個人部屋だからベッドがひとつに窓がひとつと、五人で入るには窮屈な空間。

 ワイズがベッドを占領し、アタシ達はそれぞれテキトーな床に座る。なぜかアクアの釣り竿と魚入れの箱も回収されていた。

「じゃあそろそろ情報交換でもしようか。まずエリス、君から教えてほしい」

「あっ、うん」

 アタシはジュンに出逢ったところから、砂浜でアクアの焼き魚をもらったところまで話した。

「なるほどな。それで偶然とは言え、単独でアクアに出逢っちまったわけか。ケンカをふっかけなかったのは正解だったぜ。ジャスだったら見かけた瞬間斬り掛かってただろうがな」

「酷い言いがかりだね。身体揺するよ」

「ちょ、止めろジャス。頭がグワングワンしてんだぞ」

 仰向けで頭を押さえていたワイズを、ジャスが無遠慮に揺する。クミンが楽しんでより揺する。ワイズはよりグッタリなった。

「じゃあ次はボクたちだね。西の海岸に塔が出現したって話を昨日聞いただろう」

「他にアクアに繋がる情報もなかったからね。ワシたちはその塔……アクアリウムって言ってたかい。その観察に向かおうと思ったわけだ」

「まぁ、漁港で魔物の被害とか聞き回った後で向かったんだけどね。土地勘もないから道を探りながらだったわけだけども」

「っで、エリス達がちぐはぐな空気で焼き魚を食べてるところに遭遇したしわけ」

 そっか。ジャスたちは地道な聞き込みから始めてたんだ。ワイズが寝込んでるからって、アタシみたいに時間を無駄にしてたわけじゃない。

 一回の行動ひとつでさえ差がついてる。

「ボクたちはこんなところかな。っで、ワイズはどうして?」

「今日はしんどいから一日寝て過ごすつもりだったぜ。けど虫の知らせってやつかねぇ、西の海岸にある塔を拝んどきたくなったんだよ。なんとなく胸騒ぎもしたしな」

 ワイズに至っては直感だった。けど体調が悪い中で行動できるなんて、持ってる器が違うのかも。

「で近付いたら轟音が聞こえてきたもんだからよぉ。後は流れ任せだな。一難去ったし、今度こそ静かにさせろよな」

「偉そうな言い草だねえ。もっかい揺すろうかい」

「ノーサンキューでお願いしますクミン様」

 みんないちいちワイズに突っかかるなぁ。楽しそう。

「さて、後はジュンだったっけ。君の話も聞こうか。今話せること、話したいことだけでいいから」

 ジャスは話の最後に、元気を失って黙り込んでいたジュンに水を差し向けた。

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