表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第4章 海原のアクア
290/738

289 切り離された共感

「人質でもとったつもりか?」

 声が怖いよジャス。もう剣を抜いてアクアを睨んでる。

「人質なんて。あなたたちを誘き寄せる為に散々大事引き起こしたんだもん。今更そんな事しないよ」

 対するアクアは波も立たない水面のように穏やかだ。

 雲行きの怪しさに気づいたのか、ジュンが挙動不審になってきた。

「なぁエリス。アレって勇者だろ。なんでお姉さんをあんなに睨んでんだよ」

「それは……」

 答えるべき、それともまだ隠した方がいいの?

 アクアを見上げながら悩んでいると、どこまでも無遠慮な微笑みが返ってきた。

「ヴァッサー・ベスを戦場に選んだのは私だからね。私のお城、アクアリウムを建てて、水辺のモンスターを使役して船を襲ったり、島ごと波で飲み込んだりしたもの」

 海の向こうにそびえ立つ灯台のような塔を視線で示しながら、あっさりと悪事を曝け出す。

「お姉さん……笑えない冗談だな。お姉さん一人でそんな大それた事できるわけないじゃん。笑いのセンスなさ過ぎだぜ」

 震えた声で笑い飛ばそうとするジュン。見ていていたたまれないよ。

「それぐらいの力はあるよ。なかったら弟妹達と肩を並べられないもん。がんばって強くなったんだよ」

「……オレの父ちゃんが死んだことを悲しんでくれたのは、嘘だったのか?」

「嘘じゃないかな。私だって戦いでお母さんが海に散ったこととか悲しかったもん。ソコだけは間違いなく共感できたよ。けどソレを理由に、私が仕掛けた戦いを後悔しない」

 紺色の瞳が涙で揺れる。どんな感情が混ざっているのか見当もつかないけど、負の方向だって事だけはわかる。

「魔王アクアっ!」

「おっと」

 ジャスが飛びかかり、アクアがどこからともなくトライデントを出して応戦。勢いに任せて剣を振るうも、トライデントが全てを弾き返す。それどころか隙を見つけて反撃さえしてきた。

「弓を構えなエリス。距離は充分空いたよ」

 クミンからの叱責を受け、反射的に弓を手に取る。ジャスが猛攻してくれたおかげで、アクアはかなり退いていた。矢を引きながらチャンスを待つ。

「アンタの相手はジャスだけじゃないんだよ」

 ジャスが後退したタイミングに合わせ、クミンが横から大剣を振るう。アクアは驚きながらも大剣を逸らすけど、生じた隙をジャスが衝く。

「ちょ、いきなり全力すぎだよ。軽い小手調べのつもりだったのに」

 猛攻に耐えきれず態勢が崩れ、射線が開く。

「今だっ!」

「きゃっ!」

 間髪入れずに放った矢は、奇しくも緑色の御守りを切り飛ばすだけに留まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ