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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第4章 海原のアクア
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280 万全の矛盾

 澄んだ心のように透き通る青空に、穏やかに波打つ海。

 ボクたちは水の都ヴァッサー・ベスへ向かうため、大型船に乗っていた。甲板から見える景色は長閑なんだけど、反面妙な緊張感に支配されてもいる。

 潮の香りを一人で感じていると、足音が近付いてくる。

「こんなとこにいたのかジャス。なんかおもしろいもんでも見えるか」

「空と海が見えるよ、ワイズ。それ以外は何も見えない」

 視線を海から外さずに言葉を返す。そう、何も見えないんだ。海鳥や魚ぐらいいてもよさそうなのに。

「船旅ってのも退屈なもんだな。部屋で寝転がっていたい気分だ」

 ワイズはボクの隣に並び、茶色い視線を海へと向ける。木製の杖を手に、青いローブを油断なく着込んでいた。

「ありがとう、ワイズ」

「んだよ? 藪から棒に」

「ボクの旅に同行してくれる事にだよ。よく装備を調えてくれていたね」

 ワイズもクミンも、そしてエリス……いやエフィーも平和記念パレードに万全の装備を持って来てくれていた。

 想定外の悲惨な襲撃は許してしまったけれども、おかげで装備を整え直す手間をかけずに出発することができた。

「水臭ぇな。オレとジャスの仲だろ。それに装備を用意してパレードに来てくれって手紙に書いたのはジャスの方だろ」

 え?

 ボクが振り向くと、ワイズは苦笑いしながら続ける。

「平和パレードん時はまさかあんな事が起こるなんて思ってなかったから宿に荷物として置いてきちまったがな。おかげで情けない戦いを披露しちまったぜ」

「待ってくれ。ボクは装備について手紙に書いた覚えはないぞ」

「おいおい。今更変なこと言うなって。クミンと、それにエフィーにも装備のことは書いて送ったんだろ。だからオレ達は装備を……ジャス?」

 ボクが驚きの表情を隠せないでいることに気づいたのか、ワイズが目を見開いて言葉を止める。

「偶然にしちゃ出来すぎだって思ってたがジャス、まさかマジで書いてねぇのか」

 肯定の頷きを返す。

 どういうことだ。手紙の指示でワイズ達が装備を調えてたと言うなら、一体誰がその手紙を書いたんだ。いやそもそも、誰の手紙なんだ?

 ワイズと二人で疑問の海に沈みかける。けども本物の海が考えることを許してくれなかった。

「っ! ワイズ」

「あぁ、考えんのは後だ。おいでなすったぜ」

 海面からたくさんの泡が沸き立ち、水柱を上げながら複数の魔物が跳び上がってきた。

 魚のような顔に鋭い牙。指の間に薄膜が付いている手に握られたトライデント。鱗で覆われた表面。サハギンの群れ。

 ヴァッサー・ベス周辺の海域にはサハギンを始めとした、魚介系の魔物が急激に姿を現すようになった。何隻もの船が被害に遭い、犠牲者は後を絶たないとの。

 一匹目のサハギンが船に着地するのを狙って一閃。ワイズも開幕に火炎魔法を浴びせて海へと撃ち落とした。

「まずは目の前の脅威を取り除こう、ワイズ」

「船上での戦いは気をかけなきゃいけないことが多すぎて苦手だぜ。けど、そんなこといってらんねぇな」

 クミンとエリスもこの船上で、別の魔物と対峙しているだろう。屈強な海兵や冒険者もこの船には乗り込んでいる。

 ボクたちは海の脅威を切り払いながら、ヴァッサー・ベスを目指していく。

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