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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第4章 海原のアクア
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279 戦う覚悟とフォーレの餞別

 二階建て一軒家のリビングで私たちタカハシ一家とチェル様は、お昼にお父さんが作った一品料理のチャーハンを食べていた。

 お父さんの気まぐれ料理、おいしいんだけどやっぱりおかずも欲しいかな。

 みんな昨日は侵略行為で忙しかっただろうからって。私達に気遣ってくれたのは嬉しいんだけどね。今度は隣で並んでお料理したいな。

「ええ、そう。わかったわ、ご苦労様」

 みんなそれぞれ味の感想を言って食べているなか、チェル様がスキルのメッセージで誰かと連絡を取っていた。

 何事かなって見つめていたら、チェル様と目が合ったよ。

「勇者ジャスたちが一丸となって動いたそうよ。目的地はヴァッサー・ベス。最初に選ばれたのはアクア、あなたよ」

 ロンギングを見張らせている配下からのメッセージだったみたいだね。そっか、一番手は私か。

「マリーを仕留めたのは私だもんね。きっと恨みとか憎しみとかに突き動かされてるんだろうな」

「理屈を考えると妥当でしょう。アクア、大丈夫ですか」

 シェイがまっすぐ視線を向けて心配してくれる。

「大丈夫だよ。覚悟はとっくに決まってるもん。勇者が私の侵略地(ところ)に来るとなると、グズグズしていられないね」

 お昼ご飯を食べ終わったら、歯磨きとかした後でヴァッサー・ベスに向かわなくっちゃ。ご飯は大事だから中断したりしないよ。せっかくお父さんの手作りなんだもん。

「キヒヒっ。勇者達は万全で本気だろぉかんな。泣きべそかいたら笑ってやんぜ」

 デッドがスプーンを(くわ)えながら挑発してきた。器用に喋るね。

「酷いよデッド。ちょっとは心配してくれてもいいと思うんだけど」

 不安はたくさんあるし、かなり怖い。けど私は、そういう戦いに飛び込んだんだ。

 気になってお父さんの席を見ると、私のことを心配そうに眺めていた。

「なぁアクア。怖いなら逃げちまっても構わないんだぞ。本気で望むなら、俺はいくらでもアクアの盾になってやる」

 見栄えだけは格好よくて、とても優しい。実行できる実力がないことを知っているのに、それでも全力で守ろうとしてくれる。

 甘えたい気持ちが湧き上がってくる。けど、ソレをしたらお父さんが押し潰されちゃうよね。

「大丈夫。私だってそれなりに強いもん。フォーレにアドバイスをもらって、シェイに鍛えてもらったんだよ。弱いままの、はずがない」

 自分の右手に視線を落としてグッパグッパと動かしてみる。大丈夫。戦う力はちゃんとあるもん。

「アクアぁ」

 考え込んでたら後ろからフォーレに抱きつかれた。

「きゃっ、ちょっとフォーレ、ビックリさせないでよ、もー」

「ごめんねぇ。はいコレ餞別(せんべつ)ぅ」

 謝りながら私の目の前で、緑色の御守りを手にぶら下げて見せる。

「御守り?」

「そぉ。いざって時はぁ、地面に投げ捨ててねぇ。きっとアクアを守ってくれるからぁ」

「投げ捨てるって罰当たりじゃない。けどありがと。嬉しいよ、フォーレ」

「どぉいたしましてぇ。はぁい」

 フォーレは返事をしながら、後ろから私の首にかけてくれた。胸の中心ぐらいで緑の御守りが揺れる。

 フォーレの想い私を守ってくれる。大丈夫、怖くない。

「私、勇者と戦ってくるね」

 みんなを眺めて宣言した。

 しばらくしてから、行ってきますを言ってヴァッサー・ベスへと向かったよ。

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