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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第3章 魔王と勇者の輪廻
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267 敗北と撤退と

 アクアから放たれた青いトライデントは光線のような速度でマリーへと飛来する。

 恐怖に硬直するマリーが避けられるはずもなかった。

 まっすぐ胸を貫き、勢いよく身体ごと持っていっては壁へと貼り付けにされる。

 感情を失った表情、宙にぶら下がる身体、流れ出る鮮血。

「……マリー?」

 地面を這って迫る植物の対処をしているタイミングで頭上を抜かれた。

 たわいないことで微笑むマリーが、感情のまま抱きついてきたマリーが、争いの被害に悲壮を浮かべるマリーが、マリーが、マリーが……

「えっと、()ったかな?」

 きょとんとしたアクアの呟きが、耳の中で反響する。

 ()った? ()られた? 誰が?

 剣を地面に落として両膝をつく。目の前で起こったことを受け入れられない。悪夢なら早く覚めて欲しい。地面にぶつけた膝が痛い……現実。

「ぁ……あぁ……マリぃぃぃぃぃい!」

 叫ぶ力はあるというのに、動く気力がなくなってしまった。

「みんな逃げるよ。もうロンギングに用はないから」

「これより撤退を開始します」

 アクアの声かけにシェイが撤退を宣言する。

「待ってくれ。もう少しでレディを口説き落とせそうなんだ」

「はぁ。お願ぁいシャイン。アタイを乗せて一緒に逃げてぇ」

「フォーレもしょうがない姉だな。こうもおねだりされては致し方ない、レディ達とはまたの機会の夜にひっそりと出逢おう」

 執拗に女性騎士へ迫っていたシャインの背にフォーレが乗り、耳元で説得した。撤退を決めたシャインは瞬く間に走り去っていく。

「なら俺はアクアを連れて行こう」

「おねがいね、グラス」

 グラスがアクアを横抱きし、屋根の上へと跳び上がる。軽快な足取りで屋根伝いに逃げ去っていく。

「デッド、ヴァリー。自分たちも撤退しますよ」

「おいおいシェイ、つれねぇ事言うなって。もうちょっと遊んでいこうぜ」

「そーだよー。まだダンスの相手はたくさんいるんだよー」

 デッドとヴァリーが殺戮を続けながら、シェイに反抗する。

「そうですか。でしたら気が済むまで暴れてください。自分は逃げます」

 シェイが二人を見放すと、呆然とする僕に近寄ってきた。

「今日はいい準備運動になりました。今度戦うときは、万全の態勢を整えて全力で。楽しみにしています」

 一方的に告げるとシェイは、微笑みながら影へと姿を消す。

 遠くでデッドとヴァリーのペアが、暴虐を限りを尽くしていた。

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