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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第3章 魔王と勇者の輪廻
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265 攻守逆転

 頭を失ったエフィーは膝から力が抜け、地上へと落下する。

「おとおさん……おとおさんっ! いやぁぁぁ!」

 娘のエリスは周囲の戦闘に目もくれず、エフィーの身体にしがみついて泣き叫んだ。

 ボクはその光景を、戦いの最中だというのに呆然と眺めてしまった。

 あのエフィーが? 冷静沈着で、親馬鹿で、その割に気前がよくて、弓の名手で、何度だってボクを助けてくれた、あのエフィーが?

「余所見をするとは余裕ですね。それとも、平和ボケして仲間が死んだことをすぐに割り切れませんか」

「なんだって?」

 暗く冷たい声がボクの怒りを焚きつける。

「勇者をしていたあなたなら、仲間の死を理由に致命的な隙は作らなかったはずですよ」

「黙れっ!」

 ほろ暗い感情を剣に込めて全力で剣を振るが、空を切るばかりでシェイを捉えられない。

 倒さなきゃ、コイツら全員、これ以上被害が増える前に、一人も残らず……殺さなきゃ!

 視界の端で紫のクモ男と屍を操る少女が一般市民を笑いながら蹂躙している。

 水色の少女と植物の少女が腕を絡み合わせて強大な合体魔法を放っている。

 馬男がとにかく女性たちを口説いている。

 せめて一人でもいい。一人でも倒して早く突破行為を……。

「おまえらっ! 俺は一足先に撤退するっ! テキトーに暴れてもいいけどよぉ、おまえらもマリーを仕留めた後で撤退しろよっ! 絶対帰ってこいっ!」

「……なんだって?」

 遙か上空から降り注いだコーイチの声に、ボクは思考を停止させられる。

 今コーイチは誰を仕留めろと言った?

 シェイの視線が不意に逸れる。追って目を向けると。その瞳は、馬車の上で青ざめるマリーを映していた。

 そして気づく。エアを除く六人の魔王が、目の色を変えてマリーを標的にしていることに。

 まさか最初からそうだったのか。コイツらの第一目標は、マリーだったって言うのか。

「ふざけんなっ! なんとしてでも守り通すっ!」

 反射的に全力を選ぼうとしていた。勇者の力を剣に込め、必殺の一撃を振るおうと思った。

 飾り物の剣が軋む。充分な力を込められない。あまりにも不完全なバランスに舌打ちしながら、ボクは剣を振るった。

「届けっ! ブレイブ・ブレイドっ!」

 コーイチを目がけて横一線に剣を振るい、聖なる斬撃を飛ばす。

 充分な力が込もったブレイブ・ブレイドなら、標的を切り裂くまで自動追尾をする必殺技だ。

「させねぇよ。ストリングプレイスパイダーベイビー!」

「止めます。乱れ影手裏剣!」

「お父さんは()らせない。集中豪槍雨しゅうちゅうごうそうう!」

 複雑な形をしたクモの巣に絡みとられ、複数の黒い投げ刃と密集した槍の雨にブレイブ・ブレイドが打ち消された。

「くぅっ!」

 小さく遠ざかっていく標的に、ボクは為す術がなかった。

「コレで自分たちが護る者は安全になりました。今度はそちらが護る番……攻守逆転ですね」

 集中する殺意の対象が、ボクでないことが何より怖い。

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