表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第3章 魔王と勇者の輪廻
261/738

260 始まりの悪夢

「うがぁぁぁ!」

 一斉に響く悲鳴と舞い散る血しぶき。兵士達の影から無数の黒い刃が伸びており、腕や足を切り裂いている。

「なっ」

 そしてコーイチの前に、影のように黒い少女がいつの間にか姿を現していた。

「父上、コレより作戦を開始します」

「頼んだぜ、シェイ」

 コーイチが頭を撫でると、少女は笑みを浮かべながら黒く輝いた。おさまるとソコには、ひとつの大きな目をした、色白すぎる肌の少女が立っていた。明らかに人間ではない。

「なっ、まさか。こんな少女が魔族だと!」

 強い。鋭く突き刺すような殺気を肌で感じる。

「必ず期待に添えて見せます。はっ!」

 影の少女、シェイが気合いを入れると同時に複数の断末魔が上がった。周囲にいた兵士達が、影から伸びる各々の刃に胸を貫かれる。

「きゃあぁぁぁ!」

 民衆からの悲鳴。目の前で起こった悪夢に目が釘付けになる。

「あぁ、そうでした。もう影に縛り付けていないので、自由に動いて構いませんよ」

 シェイの言葉を皮切りに、兵士達が動き出した。

 まさかコイツ、兵士達を束縛していたのか。

「折角の初陣です。楽しませていただきますよ」


「動ける……囲め、敵はザコと女のだけだ。数で押せばどうと言う……今度はなんだ」

 驚く兵士達の足下が、クモの糸のような物で絡め取られていた。引き千切ろうともがき、槍で切り裂こうとするも余計に雁字搦めになってしまう。

「キヒヒっ、テメェらの相手はシェイだけじゃねぇ。もっと恐怖を刻みつけてやんよ!」

 声を辿ると家の壁面に、下半身がクモの格好をした紫色の男がへばりついていた。手には地に伸びたクモの糸を握っている。

「おいデッド、遊び過ぎんなよ」

「聞こえねぇんだよジジイ!」

「うわぁぁぁぁ!」

 紫の男デッドが腕を振る。クモの糸に絡まっていた兵士達が宙へと引きずり上げられる。

「そぉら堕ちなぁ!」

 絡め取られた兵士達は身動きも出来ないまま、民衆の中へと叩き落とされた。

 クモの子が散るように逃げる民衆を見て、デッドが高笑いをしていた。

「キヒヒっ。次はどいつを落とそうか? 特別に選ばせてやっていいぜ」

 怪しく輝く赤い瞳に、慈悲なんて含まれていなかった


「キャハハ。みんなリラックスリラックスー。まだ余興は始まったばかりなんだからねー」

 緊張に固まる兵士達の真ん中に、赤いドレスを纏った少女が踊るように現れた。かわいらしくも嗜虐的な笑みに、更なる緊張が走る。

「ご機嫌だなヴァリー。一生一度の初舞台、存分に楽しめよ」

「もちろんだよパパ。ヴァリーちゃんのダ・ン・ス、しっかり目に焼き付けてよねー。舞踏会を始めよっかー。カーニバル・ザ・アンデット」

 少女ヴァリーが手を広げて空を見上げる。その周囲からはボコボコとスケルトンの群れが湧き出してきた。

「アンデットが昼間からこんなにっ? ふざけんぎゃあぁぁ!」

 骨の獲物を持ったスケルトン達は、兵士も民衆も関係なく、平等に襲いかかっていった。

「ははっ、やっぱヴァリーは派手好きだな」

「キャハハ。パパも一緒に踊る? ヴァリーちゃんが優しくエスコートしてあげるよー」

 コーイチを誘う無邪気なヴァリーが、この惨状からは異質すぎて悪寒を覚えた。

 なんなんだよコレは。平和パレードは……幸せな世界はどこにいっちゃったんだよ……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ