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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第3章 魔王と勇者の輪廻
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258 とてもとても小さな兆し

 昨日はとても充実した日だった。久しぶりに仲間達に出会い、他愛ないお喋りをできた。最近は堅苦しい会話も多かったから、肩の力を抜ける会話がとても心地よかった。

 途中でマリーが部屋に来てくれたから、夫婦仲がよいことも伝えれたと思う。みんなには安心してボクらを見守って欲しい。

 そして今日は魔王討伐一周年記念、平和パレードが催される。

 国民みんなが楽しんでくれる、喜ばしい日だ。

 だと言うのにボクは起きたときから、とてつもなく小さい嫌な予感を感じている。

 予感が小さすぎて時折見失ってしまうのだけれど、勇者としての勘が危険だと囁いている。

 赤を基調として見栄えのいい服を着て、頭に輝く王冠をかぶり、儀礼用の装飾された剣を()いてマリーと落ち合う。

「あら、ジャス様。とてもかっこいいですわ。王としての貫禄も出ていましてよ」

 ボクの姿を見るなり、マリーは手放しで褒めてくれた。

「ありがとう。マリーも凄く綺麗だよ。世界で一番輝きを放っているようだ」

 対してマリーは青を基調としたドレスを纏っている。胸元から肩、背中まで透き通るような肌をさらけ出していて見るものを魅了するだろう。

 ウェーブのかかった長い金色の髪は光を浴びて輝き、イヤリングやネックレスにはめ込まれたアクアマリンにも負けないほど綺麗だった。

「ジャスも口が上手くなりましてね。とても嬉しいですわ」

 碧色の瞳をまっすぐ向け、とろけるような笑顔を見せる。

「わたくしたち、きっと世界で一番お似合いの夫婦でしてよ。民にも存分に見せつけてあげましょう」

 ボクの手を取って急かそうとする姿はとても嬉しそうで、平和パレードを心待ちにしてきたことが全身から伝わってくる。

 誘われるままパレードに臨みそうになるのを、グッと堪えた。

「ねえマリー。ボクの剣だけど、今からでも本物の剣を用意しちゃダメかな」

 何もないと思うけど、何事もないと願うけど、それでもお守り代わりに戦える剣が欲しい。

「あら、どうして今更そんなことを。別に今回は戦いに出るわけではありませんわ。言ってしまうと勇者を格好よく魅せる為のお祭りでしてよ」

「マリーの言うことももっともだけど、どうにも嫌な予感がするような……そうでもないような気がするんだ」

 ボクの言い回しに、マリーの表情が少し崩れる。

「随分と曖昧な予感でしてね。弱気から来る不安ではありません事」

「だといいんだけどね。なんって言うか、油断すると消え入りそうなほど弱い気配なんだ。けど確実に存在している。頼む、剣を用意してくれ」

 剣があれば守れるわけではないのだけれど、剣さえない状態では戦うことさえ出来ない。ボクはどうしても、不安を断ち切る剣が欲しい。

「……大丈夫でしてよ。だって魔王は滅んだんですもの。さつ、早く行かないとパレードが遅れてしまいますわ」

 しかしマリーの無邪気な姿にボクは、勇者としての勘を押し切ることができなかった。

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