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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第3章 魔王と勇者の輪廻
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249 反省会というなの雑談

「全くもって、わたくしの姪っ子ながらマリーは厄介な娘ですわ。まだマリーヌの方がかわいげがありましてね」

 リアは急須でお茶を注ぎながら文句を吐き捨てる。

「ねえアスモ、勇者の怒りを買う役目がトロップの命の必要はあったんですの?」

「勇者ジャスの時期や近況を鑑みるに、トロップが最適だったのは間違いない」

「今になって思うのですけど、対象がマリーの方が何かと都合が良かったように思えましてよ」

「無茶を言うな。勇者を突つくと決めたとき、マリーはまだ生まれてすらなかったのだぞ」

 んっ、昔話に浸ったせいか、茶が随分と冷めてしまったな。

「勇者を突つくのが早すぎたのではなくて」

「頃合いだった。強くなるきっかけを早くに作らねば、ワシと戦うまでに力を付けることが出来なくなってしまう」

「むー、本当に現実は上手く進まないものでしてね」

 リアがふて腐れながら、指でピンと湯飲みを弾いた。

「わたくしよりもマリーの方が魔王の姫の座が相応しく思えてきましたわ……アスモはわたくしのモノでしてよ」

 上目遣いで恨みがましく睨まれても困るのだが。

「ワシもマリーは願い下げだ。それとよくわからん理屈で(ひが)まんでくれ」

 ため息をついて茶を啜る。

「それにしても、フォーレちゃんはいいお茶を作りましてね。母親も斬新なハーブティーを作ってくれましたが、フォーレちゃんはその上をいきましてよ」

 マンドラゴアの母娘は意表を突いた創作が得意だからな。良くも悪くも。

「フォーレも然る事ながら、コーイチの子供達はどの子も末恐ろしい潜在能力を秘めているぞ」

 共通の父親があの冴えない男だというのに、不思議なものだ。

 天井を仰いで複雑な心境になっていると、クスクスとリアが笑みをこぼした。

「チェルもとんだ大物を引っかけてきましたものね。チェルじゃなかったらきっと、大魚を逃していましてよ」

「逃すどころか殺してしまっていただろうな。羽虫を潰すように」

「まぁ。アスモもわたくしも見る目がありませんわね。結果最後の希望になったというのに」

 楽しそうに微笑むリアに釣られてしまう。

「コーイチが現れなければチェルは、きっとアスモを次ぐ魔王になってたでしょうね」

「かも、しれないな」

 魔王が二代続く歴史は聞いたことがない。聞いたことないが、例外がないとも言い切れない。

「さっきはわたくしが魔王の姫と言いましたが、チェルだってれっきとした魔王の姫でしてよ。決して魔王ではない。魔王になんてさせませんわ」

 マジメな母親の顔になっていた。凜とした表情だ。四十代特有の衰えを微塵も感じさせない。

「やれやれ。娘を託す父親とは、こんなにも行き場のない気持ちを抱えたもんなのかのぉ」

 ワシは勇者に討たれてイッコクが平和になればどんな景色になってもいいと思っていた。だが、今は未来を見通してみたい。未来のチェルが幸せであるかどうかを。

「大丈夫よアスモ。だって、わたくしたちの自慢の娘なんですもの」

「リア……そうだな」

 わからん未来を愁いていても仕方ないか。信じて魔王をまっとうしよう。近い決着の時まで。

 ワシらは他愛なくもかけがえのない会話を続けるのだった。

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