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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第3章 魔王と勇者の輪廻
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247 マリー姫の野望

  射貫いた(ちょろい)

 わたくしが一礼しただけで、勇者ジャスは赤面しながらたじろいで一歩後退する。ファーストコンタクトで、確かな手応えを感じたわ。

 短く艶やかな金の髪にアクアマリンの様に煌めく水色の瞳。顔立ちは整っていつつ、眼差しに優しい雰囲気が醸し出されている。

 線は細いが背が高く、女性達からは見上げる太陽と例えられそうなほど輝かしい。

 手綱を握るにはうってつけの優男。

 それでいて幾度の修羅場をくぐり抜けて来たことを感じ取らせる強者のオーラも纏っている。

 荒削りだけど、魔王を討つのに充分な実力は備えていそうだ。

 隣にいる冴えなそうな男には辟易するけど、勇者の仲間だからぞんざいに扱えない。せいぜい勇者の捨て駒として活躍してくれることを祈るわ。


 初対面を終えた夜、勇者登城を記念してパーティを開いたわ。

 なんとしても勇者を味方に付け、あわよくば懐柔したい。どこの貴族も野心を内に隠し、勇者を大げさに歓迎した。

 立食式のパーティに慣れていないのが丸わかりで、硬い笑顔で右往左往している。魔法使いは視線やマナーを気にせず食事に酒にと夢中になっていて嫌らしかった。

 二人ともこっちで正装を用意しなければいけないほどの田舎者。社交場という名の戦場においては赤子も同然。

 反面、世界を左右する程の力を個で持っている爆弾でもある。爆弾を抱えた赤子。取り扱いを間違えれば爆破する危険性もある。

 だから無茶な約束を押しつける貴族へ横やりを入れ、程よいタイミングで保護して上げなければならない。

 勇者はわたくしが声をかけたところで安堵する。慣れない堅苦しい会話の数々で随分と疲れていた。二人きりでテラスへと誘うと、ホイホイと付いてきたわ。

 わたくしは夜空を眺めながら勇者の軌跡に耳を傾ける。

 つまらない生い立ちから始まり、自暴自棄で無謀な旅をしてきた。そんな話を勇者なりに美化して伝えてきた。

 心底どうでもいい話を、親身になったフリをして聞く。感情を合わせ、相づちを打ち、最後は感極まって抱きついて泣いてしまう演技を披露する。

 気持ちよく勇者を、勇者させるために努力して身につけた所作の賜物。

 手応えは充分。わたくしの気持ちと祈りが、勇者をより強くする。

 恋愛ごっこをした先にある、勇者の姫の座をわたくしは手に入れる。

 お母様は姫の座を手に入れて贅沢三昧したかったようだけど、わたくしから見たらおままごともいいところ。

 わたくしは頂点に立って、世界(イッコク)を支配する。勇者の姫ならば、人々を意のままに操ることが可能になる。

 魔王を討伐した後の勇者さえ懐柔し、籠絡すれば全てがわたくしの物になる。

 あぁ、愚かな勇者様。どうかわたくしの為に魔王を討伐して下さいな。

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