表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第3章 魔王と勇者の輪廻
244/738

243 新たなる勇者

 ボクはジャス。小さな田舎町プテイトで産まれた、やんちゃな男の子だった。

 町はよく言えばのどか、悪く言えば何もない退屈な場所だ。

 畑や川、近くには森もあるけど、娯楽施設と呼べるものはない。

 危険だから勝手に森に入るなと、両親からは散々注意されてきた。けど子供の秘密の場所にするにはうってつけだ。

 二つ年上の男の子ワイズと、同い年の女の子トロップがおなじみの遊び仲間だった。

 ワイズはやんちゃしているせいか、茶色い髪をいつも跳ねさせていた。トロップは黒い髪をツインテールにするのがお決まりだ。

 ボクも含めてみんな好奇心旺盛で、両親以外怖いものなしだった。

 川遊びをしてはずぶ濡れになり、イタズラをしてはカミナリを落とされる。それでも懲りずにおもしろそうだと思ったことを迷惑顧みずにやってきた。

 ボクらの中でリーダー格は意外にもトロップだった。

 無茶苦茶なことをたくさん言っては、ボクとワイズをかき回す。

 とにかく毎日が楽しくて、これからもずっと楽しい日々が続くものだと思っていた。


 ボクが四歳の頃だ。トロップに誘われて、三人で森へ探検しに行った。

 細い木の枝を片手に、歌を歌いながらご機嫌に隊列を組んで散歩した。

 ガサゴソと木陰から物音が聞こえては怖くなって震え、何もなかったら強がって威張り散らした。

 薄気味悪いからってビビってたら、弱虫扱いされてしまうから。

 この時ボクは、真の意味で弱かった。

 魔物、ウルフの群れと遭遇してしまう。強がりなんて一瞬で砕け散り、みんなして走って逃げた。

 トロップが転び、無慈悲にウルフに襲われた。恐怖と痛みに上がる悲鳴と、目を逸らしたくなる惨劇。

 衝撃的すぎて目を逸らせなかった。足を止めて竦んでしまった。一瞬でボクたちもウルフに襲われる。

 なんでこんなことになってしまったのか?

 世界の理不尽さに怒り、ボクの中の何かが目覚めた。

 感情のままに身体を動かし、気がついたらウルフの群れを殲滅していた。

 もう動かないトロップと、重傷を負って息絶え絶えのワイズと、呆然と立ち尽くすボク。

 無我夢中でわからなかったし、突然目覚めた力に振り回されてもいた。けどコレが、勇者として目覚めた瞬間だった。

 後から何度も悔やむことになる記憶だ。もっと早く勇者に覚醒していれば、トロップは……


 魔物とは魔王の配下であり、魔王は人間をいたぶる悪だと知った。

 魔王がそんな存在だから、トロップは魔物に殺されてしまった。

 勇者の使命とは別に、魔王への殺意が高まる。必ず魔王を討つと、強く決意する出来事となった。

 ボクは勇者としての道を歩み始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ