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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第3章 魔王と勇者の輪廻
242/738

241 訃報

「サルターレ様が討ち死になされた。それは本当ですのっ!」

「魔王討伐に向かった正規軍も壊滅し、這々(ほうほう)(てい)で伝令が勇者様の訃報をお伝え下さったと……マリーヌ様、心情お察しいたします」

 わたくしは豪華に彩られた自室にて、侍女から勇者の敗北を伝え知った。

 フィンガーレスグローブを付けた両手で顔を覆い、部屋の中央にある丸テーブルの側でしゃがみ込む。

「マリーヌ様……」

「ごめんなさい、少し、一人にしてちょうだい」

 侍女は少しためらってから、失礼しますと言って部屋から出て行った。ドアが閉まり、人の気配が去るのをたっぷりとしゃがんで待つ。

「……行きましてね」

 一人になったことを確認してから顔を出し、おもむろに立ち上がる。

「あーあ。せっかくあの女から勇者の姫の座を出し抜いたっていうのに、死んじゃうなんてとんだ役立たずね」

 部屋の壁にでかでかと飾られた、勇者だった男の肖像画を眺める。普段にへらとしていた男は、キリッと引き締まった表情で描かれていた。

「もうちょっと甲斐性みせて、魔王の一人や二人ぐらいちゃちゃっと倒しちゃいなさいよ。わたくし、勇者の姫に収まって好き勝手する事を待ち望んでいたのに」

 勇者の姫は国王の姫の比じゃないほど権威を持てるっていうのに、とんだぬか喜びだったわ。

「あんたバカだったものね。魔王さえ倒しちゃえば国……いいえ、世界(イッコク)はわたくしの物になっていたというのに。ガッカリよホント」

 衝動に任せて肖像画をズタズタに引き裂きたい気分だけど、後々のことを考えると都合が悪いか。

「勇者が負けた後の姫にもいい縁談がもらえる保証があるからまだマシだけど、やっぱり身分に天と地ほどの差があるのよね」

 こんなことならあの女を処分するんじゃなかったかな。優秀なのがわたくしの気に障ったし目障りだったけれど、自ら動くリスクも大きかったし。

 優秀で完璧な淑女で、血が濃く繋がった実の姉。わたくしが輝くにあたって邪魔者以外の何者でもない存在。今思い出しても腹立たしい。

 転移魔方陣でどっか遠くに飛ばしちゃったから死に様は見れなかったけど、音沙汰がないって事はまずくたばっているに違いないわ。

 あの女にはできる限り無残な最期を遂げてほしい。

「けどまっ、終わったことは仕方ないか。最上の権力は失ったけど、せめて最大限の権力は手に入れなくっちゃね」

 あーあ、贅沢するのも楽じゃないわ。宝石もドレスも調度類も、まとめて着飾るのってお金がかかるものね。

「……この肖像画、高く売れるかしら? 見ていると心苦しくなるとか言えば、周りはごまかせるよね」

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