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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第3章 魔王と勇者の輪廻
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235 帰還の選択

「まずチェチーリアがここ、魔王領に飛ばされたた経緯だ。マリーヌの陰謀により転移魔方陣の上に立たされ、飛ばされた先がたまたま魔王領だったのだ」

 マリーヌが最後に見せた笑みが思い浮かびました。ただそれ以上にいろいろ気になることがあります。

「どうして魔王様はマリーヌの名を呼んでいるのですか? わたくしにはおまえでしたのに」

「今一番気になるところはソコなのか?」

 だって悔しいではありませんか。ついつい頬が膨れてしまいますわ。

「うっ……遠くにいる相手を名無しで伝えるのは難しいであろう」

 うろたえて視線を彷徨わせる魔王様。付き合いは短いですが、結構かわいいところがおありなのよね。ウブですわ。

「冗談ですわ。魔王様は長い間孤独で居たぶんシャイですもの。仕方ありませんわ」

「今更だが、随分図太い精神をしているよな。ワシ魔王だぞ」

「おどおどしていては会話が成り立ちませんもの。質問を変えましょうか。どうしてマリーヌと、魔方陣についてお知りなのですか」

「半分は酔ったチェチーリアから聞いたから、もう半分は城に忍び込ませている魔物からの報告だ」

 あら、喋ったかしら。まぁそっちはいいとして、王城も安全ではありませんわね。知らず知らず魔物に潜り込まれていただなんて。

「それで、わたくしはどうなった事になっていますの?」

「お茶会の途中、翼ある魔物が窓を破って侵入。そしてどこかへ連れ去られた事になっている」

 ということは、あの後で窓を破壊する工作でもしたのかしら。マリーヌがストレス発散も兼ねて椅子でも投げつければ、丁度いい案配で散らかるかもしれませんわ。

「今マリーヌは激高する勇者を宥め、取り入ろうと躍起になっているところだ。そのうちチェチーリアは行方不明から死亡扱いに成り変わるだろう」

「……でしょうね。目的は勇者の妻か、その後の権力か」

 強欲なマリーヌのことです。おそらく後者が目的でしょう。

 納得したところで、ふと不吉な単語を思い出します。

「そういえば、わたくしが魔王領に飛ばされてのはたまたまだと仰いましてね」

 わたくしを魔物の手で亡き者にするならば、魔王領(ここ)以上に相応しい場所などないと思いますが。

「調べたところあの魔方陣、方向性は決められていなかった」

「……はい?」

「どこか遙か遠い場所へ、魔法を発動した者でさえわからない場所へ飛ばされるようになっていたのだ」

「それは……まぁ。近くに飛ばしてすぐ見つかっても本末転倒、それどころかマリーヌが窮地に立たされかねませんものね」

 遠ければわたくしの発見に時間がかかりますけど、いくら何でも無計画すぎやしませんこと。

「下手をすれば崖の斜面や海上、雪原にポツンと飛ばされている事になっていたぞ」

 頭から身体中がサーっと冷やされていきます。血の気が引くとはこのことを言うのですね。

「ぞっとしませんわ。魔王領に飛ばされたわたくしは運が良かったです」

 命あっての物種ですわ。

「言い得て妙だな。でだ、チェチーリアはこれからどうするつもりだ?」

「どう……とは?」

 一生魔王城で暮らしていくか、或いは用なしになったわたくしを魔王様自らが手にかけるかすると思っていたのですが。

 あら? わたくしすんなりと死を受け入れていましてね。

「今ならまだチェチーリアは行方不明。こちらで状況を用意すれば、王城へ生還することも可能だ」

 帰る? 王城へ?

 捨てていた選択肢の浮上に、一瞬思考が止まりましたわ。

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