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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第3章 魔王と勇者の輪廻
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230 チェチーリア・フォン・ノーバート

「魔王様の側にいさせていただきます」

 サルターレ様……勇者様一行を返り討ちにした獰猛なお姿の魔王様に、わたくしは見上げながら答えました。

 毒々しい紫色のお肌に、逞しく太い体つき。身長はかなり高く、赤い瞳に視線を合わせるにはかなり見上げなければなりません。

 返り血で全身を汚していることがより一層恐怖感を増させます。

 まるで人間を殺す為の化身。化け物の総大将。その気になればわたくしなど、赤子の手を捻るが如く処理を出来るお方。

「震えているな」

「震えるなとでも、言うおつもりで」

 わたくしが問うと、魔王様は視線を外されましたわ。

「だって、わたくしにはもう、人間の国に帰る場所などありませんもの」

 たぶんもう、わたくしの城に居場所なんてありませんわ。


 わたくしチェチーリア・フォン・ノーバートは王都ロンギングの第一王女として産まれましたわ。物心がついたときには、お稽古と勉強に浸かっていましてね。

 イッコクの歴史、貴族としての作法、本当に厳しい子供時代でしたわ。

 いずれイッコクをよりよき国にする為、舵を取らねばならぬ事が、産まれる前から定められていました。

 時折お父様とお母様の優しさに触れることが嬉しかった。愛されていることを実感できたことで、わたくしは自分を保てましたわ。

 わたくしには弟や妹がたくさんいます。国王故に、血を絶やせぬ定め。側室との子供もたくさんいましてね。

 兄弟の仲は、良かったり悪かったりでした。血の繋がった兄弟であると同時に、負けることが許されない競争相手でもありましたもの。

 優秀でなければ地位の確保が出来なかったわ。

 王城は(きら)びやかで優雅に見える反面、腹の内を探り合う魔境でもありました。

 とはいえ、最初から諦めていた子達には関係ありません。ただ楽しそうに遊んでいましたもの。ある意味羨ましくもありましたわ。

 兄弟の仲で一番接点があったのは、妹のマリーヌでしたわ。髪と瞳の色はわたくしと同じで金髪碧眼。同じ母親から産まれたから、当然と言えば当然でしてね。

 わたくしのことをお姉様と言って、随分と慕ってくれている()にしていましたわ。

 魅せる所作に長けていて、頭のキレも鋭かった。野心が強そうなところが玉に(きず)でしてね。

 油断をしていたら、足下を掬われるような油断のなさもありましたわ。

 思うところも多々ありましたが、切磋琢磨するライバルとしてはありがたい存在でした。

 上手に付き合えていたと、そう思っていました。

 彼が王城に現れるまでは。

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