212 怒りっぽい巫女と神獣の巨樹
「空気が澄んでいてぇ、清々しいやぁ。着いたみたいだねぇ」
ここだよ。神獣様が待っている神域だよ。巫女様もいるの。
森のなかだっていうのにぃ、開けた場所に出たよぉ。見通しがいいんだけどぉ、空気が湯気みたいに薄っすら白んでいるぅ。
「あれが神獣かなぁ。おっきい樹木だねぇ」
この木なんの木気になる木みたいに幹が太いやぁ。背も高くってぇ、この空間を傘のように覆っているねぇ。
「しかもぉ、存在感が半端じゃないやぁ。どぉして神域に入るまで気づかなかったんだろぉ」
存在感もそうだけどぉ、あの大きさが視界にないらなかったのも変だよねぇ。
首を傾げながらぁ、神獣の根元まで歩いていくんだぁ。意外と遠いやぁ。大きすぎて距離感が狂っちゃうよぉ。
のんびり歩いていたらぁ、小さな人影が見えてきたんだぁ。そういえば巫女がいるとか植物が教えてくれていたっけぇ。
どうでもいいから忘れていたやぁ。
かわいいエルフの女の子だったねぇ。背はあたしと同じぐらいだからぁ、外見は十一歳だねぇ。
尖った耳にぃ、緑色したアーモンド型の瞳をしているぅ。金の短い髪はツヤやかでぇ、活発な感じだよぉ。色白の肌もプニプニしていそぉ。
アイヌ民族風のぉ、若草色の衣装を着ているよぉ。具体的にはぁ、色違いのリム○ルみたいな感じだねぇ。独特な四角い模様がいいよぉ。
ただぁ、なんとなぁくイライラした雰囲気を出しているぅ。腕を組んでぇ、指をトントンしているのぉ。片足の先はダシダシと地面を踏んでいるねぇ。
「どぉしたのぉ。そんなにイライラしているとぉ、お肌に悪いよぉ」
心配になっちゃったからぁ、指摘してあげたんだぁ。するとぉ、キッて鋭い目つきで睨まれたのぉ。
「誰がイライラさせてると思っているのよ。来るのが遅すぎんのよ、この悪しき者!」
指を突きつけるとぉ、思いっきり叫んできたのぉ。エルフっておとなしぃ種族だと思ったんだけどぉ、好戦的なんだねぇ。
「だいたい、アンタがいた位置から神域までこんなに時間がかかることがおかしいわ。どうしてこんなにも待たされなきゃいけないのよ」
頭から湯気が出るんじゃないかってほどぉ、怒っちゃっているよぉ。脳みそが沸騰しないといいけどぉ。
「のんびりとぉ、道を間違えながらきたからねぇ。しょうがないよぉ」
「しょうがないわけないでしょ! アンタ大自然と会話をしていたはずよ。神獣サマネア様から聞いているんだから。迷うなんておかしいわよ!」
「へぇ。あたいと歳が同じぐらいなのにぃ、神獣とお話しできるんだねぇ」
関心しちゃうなぁ。エルフは歳を取るのが遅いみたいだからぁ、実年齢は不明だけどぉ。
あれぇ。なんだか頬を膨らませてぇ、恨めしそぉにしてきたよぉ。
「言っとくけど、わらわはあなたよりずっと年上で偉いんだから。子供だと思わないで」
「奇遇だねぇ。あたいもぉ、見た目通りの年齢じゃないんだぁ」
実年齢を知ったらぁ、驚くだろぉなぁ。想像すると笑えてくるぅ。
「へぇ、おもしろいじゃない。わらわは今年で七〇よ。どーだ大人だろ」
両手を腰に胸を張るんだけどぉ、広葉樹の幹のように寸胴だったねぇ。ヴァリーといい勝負かもぉ。
「だねぇ。ちなみにあたいは二歳と九ヶ月だよぉ」
「二歳九ヶ月! 子供どころか幼児じゃないの。しかも……」
疑惑的な視線がぁ、あたいの胸に注がれたよぉ。この人もぉ、おっぱいを気にしているのタイプかなぁ。
「そのふしだらな胸はなんだ。ズルいぞ!」
怒り混じりにぃ、悔しげな涙声で叫んできたよぉ。あたい的にはぁ、どぉでもいいんだけどねぇ。
いたずらに使うにはぁ、おもしろそぉだけどぉ。
「そんなことよりぃ、待ちたくないならなんで迎えがこなかったのぉ」
不思議だったんだぁ。エルフならいくらでもいそうなのにぃ、案内がザルな植物だけだったのがぁ。
「ふん。悪しき者のクセに生意気ね。エルフは悪い気に敏感なの。わらわだって弓で射抜きたいのを我慢しているんだから」
鼻を鳴らしてぇ、顔を背けながらも続けてくれるんだぁ。意外といい人だねぇ。
「同時に神獣サマネア様は、わらわたちエルフから奉られている。とても尊い存在なの。そんなお方が悪しき者を連れてこいなんて言ったら、エルフたちは混乱するわよ」
だからぁ、気まぐれな植物たちに案内を任せたんだねぇ。納得だよぉ。
「なるほどぉ。だからあたいがぁ、神域に着くまで時間がかかったんだねぇ」
「ソレとコレとは話が違う! アンタがおかしいのよ!」
あたいは納得したのにぃ、巫女さんは憤怒しちゃったよぉ。なんでだろぉねぇ。
「なんでアンタが首を傾げてんのよ。大自然の導きがあるのにどうやったら迷子になれるのかって怒ってんの! わかる!」
小さい子供を叱りつける母親のような言い方だったよぉ。そんなこと言われてもぉ、お話が弾んじゃったからとしか言えないのがねぇ。
「そんなことよりぃ、神獣が用事なんでしょぉ。まだ待たせちゃっているよねぇ」
「アンタが言うな! て言いたいけど、確かに待たせちゃっているわね。それと、神獣サマネア様を呼び捨てにするんじゃないわよ。次は魔法で酷い目を見せるわよ」
かなり尊敬しているんだねぇ。いいかげん名前を覚えるかぁ。サマネアだっけぇ。覚えたよぉ。
「わかったよぉ。じゃぁ、話してくるねぇ」
「不敬な態度はとるんじゃないわよ」
睨みを背中で浴びながらぁ、サマネアの根元に向かったんだぁ。




