211 木々の導き
「あっちゃぁ。見事に分断されちゃったなぁ」
エルフの強襲を受けてぇ、あたいはみんなと離ればなれになっちゃったよぉ。
自然豊かな森のなかでぇ、ポツンと一人きりだねぇ。
「なんとなぁく、そんな予感はしていたけどねぇ」
ヴァルト・ディアスに入ってからぁ、木々が何かを企んでいる感じだったからねぇ。
一本の木に手を添えてぇ、葉を見上げるのぉ。
あたいのスキル『植物学者』はぁ、植物となかよくなってお話しすることができるんだぁ。
「エルフたちをけしかけたのは誰かなぁ。あたいに用事があるみたいだけれどぉ」
呼んでる。呼んでる。神獣様、呼んでる。
木霊するようにぃ、木々が教えてくれるよぉ。
神獣ねぇ。エアと戦ったぁ、スーグルのことを考えるとゲンナリしちゃうなぁ。あたいはぁ、正面を切って戦うの苦手なんだけどぉ。
あっち。あっち。あっちで神獣様、待ってる。
「拒否権はなさそぉだねぇ。先に聞きたいんだけどぉ、家族はみんな無事ぃ?」
おじさん疲れてる。男の子、矢をたくさん受けて血だらけ。けどピンピンしてる。それ以外は無事。
矢を受けて血だらけでピンピンしている男の子ねぇ。シャインだろうから問題なしだねぇ。おとーは大変だっただろうなぁ。
「そっかぁ。ついでにぃ、みんながどんな様子かも教えてほしぃなぁ」
慌ててる。慌ててる。一人足りなくて探そうとしてる。特におじさんが暴走してる。
あぁ、おとーがどうなっているか凄く想像がつくぅ。
(チェルぅ、聞こえるぅ)
すぐにメッセージを使ってぇ、あたいの生存確認をするよぉ。
(フォーレ、無事ね。あなたと逸れたせいでコーイチが大変よ。戻ってこれる)
(無理っぽいねぇ。神獣があたいに用事みたいだからぁ、たぶん出られないよぉ)
(そう。こっちから全員で救援するのはどう)
(それもキツイよぉ。エルフの方々がぁ、マークしていると思うからぁ。チェルやみんなは大丈夫だろぉけどぉ、おとーがねぇ)
もう一度襲われたらぁ、たぶん死んじゃうんじゃないかなぁ。おとーだしぃ。
チェルもぉ、困ったように沈黙しちゃったよぉ。想像できちゃったんだろぉなぁ。
(そういうわけだからぁ、みんなでおとーを抑えてほしいなぁ。あたいは行ってくるからぁ)
(気をつけなさい。フォーレに何かがあったら、コーイチが後を追うことになってよ)
(シャレにならないなぁ。いってきまぁす)
片眉が下がっちゃうねぇ。絶対に帰ってこなくっちゃぁ。
「いいよぉ、案内してぇ」
こっち。こっち。ちょっと遠いから歩くよ。疲れない、大丈夫。
「遠いのは大丈夫だよぉ。これでも体力はあるからねぇ。けどぉ、歩くペースはのんびりだよぉ」
いいよ。いいよ。来てくれるなら時間がかかっても大丈夫。お話しよ、お話。
なんだかぁ、大量の幼児に迫られている感じだねぇ。小さな妖精風に擬人化をしてくれていたらぁ、かわいいんだろぉけどぉ。
残念ながら木や草そのものがぁ、喋っているんだよねぇ。
「どんなお話をしようかぁ、宇宙でロボットが戦うアニメの話でいぃ」
何それ。おもしろそう。お話して、お話して。
自然とは正反対のお話なんだけどねぇ。まぁ、楽しければいいよねぇ。
木々に導かれながらぁ、のんびりゆっくり歩いていくのぉ。途中でのどが渇いたんだけどぉ、アクアも傍にいないんだよねぇ。
魔力が詰まっていておいしぃからぁ、元気も出てくるのにぃ。ちょっぴり物足りないねぇ。森林自体が雰囲気いいからぁ、自然と力は湧いてくるんだけどぉ。
こぉ萎びかけた花がぁ、水を吸って元気になる感じぃ。
あっ、いけない。迷子になってる。えっと、こっち。こっち。
木々たちも道を忘れるくらぁい、アニメに夢中になっていたよぉ。一年戦争は偉大だねぇ。
そんなこんなでぇ、ヘビがうねるように進んでいったよぉ。時間はたっぷりかかっちゃってたからぁ、定期的にメッセージでお話したよぉ。
「遅くなっちゃってるからねぇ、家族に心配かけないようにしなくっちゃぁ」
神獣様はのんびり待ってくれるだろぉからねぇ。急いでいたらぁ、エルフたちがとっくに連行してるだろぉしぃ。
「そういえばぁ、エルフたちの顔をまだ見てないやぁ」
襲われたときは死角からぁ、一方的に射られたからねぇ。おとーも楽しみにしてたからぁ、残念だっただろぉなぁ。
エルフの容姿が気になるの。すっごくきれいだよ。キレイ。キレイ。神獣様の近くに巫女様もいるよ。もうすぐ見れるよ。
「そっかぁ。教えてくれてありがとねぇ」
あたいもエルフがどんな美貌をしているかぁ、楽しみだったんだぁ、シャインほどじゃないけどぉ、期待してたんだからぁ。
もぉすぐ見られるんだねぇ。楽しみだなぁ。
ウキウキしながらぁ、もう一時間ぐらいかけて神獣様のもとに向かったんだぁ。
一人きりになってからはぁ、三時間が経っていたみたぁい。
時間はメッセージでチェルが教えてくれたんだぁ。




