表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第2章 建築!!魔王城『タカハシ』
210/738

209 エルフの住む森

 外の空気が寒くなり、コタツが恐ろしい魔力を()びてくる今日この頃。ヴェルダネスに実家を作ってから二回目の冬が訪れたぜ。

 まぁ、コタツの魔道具は作ってないんだけどな。

 魔王城は手間取っていた配管工事をどうにか終わらせて、内装に取りかかっている。

 もう完成が間近に迫っている。見上げるだけで一苦労する巨大な城……住みたくねぇな。俺、城内で迷子になる自信あるぜ。

 ヴェルダネスの村は農作業が落ち着き、村人たちは薪を作ったり身体を鍛えたりしている。なんでも自衛(じえい)のために子供たちが一体(いったい)となって訓練しているんだとか。

 ご苦労さまなこった。俺らがいる限りは安全だと思うんだが、討伐されてからのことを考えると不安もある。

 愛着も湧いちまっているしな。

 意外だったのは、ススキが積極的に取り組んでいることだ。農作業では無駄な動きが目立ちがちだったんだが。案外、武器を振るっている方が性に(しょう )合っているのかもな。

 目なんて真剣そのものだかんな。まるで敵を想定しているかのような気迫だったぜ。

 はてさてイッコクに転移してから三年九ヶ月、イッコクのヘソにきてからは一年と九ヶ月が経ったぜ。

 子供たちは十一歳ぐらいの集団へと成長している。

 フォーレは胸がどんどん膨らんでいき、グラスは腹筋が割れてきた。

 デッドは手足を細長く伸ばし、ヴァリーはちょっとだけ背が伸びたかな。

 アクアの成長も良好で、シャインなんてどこまで背が伸びるんだと疑問に思うほどだ。

 エアはホントに成長しなくて、シェイの成長も芳し(かんば )いところだ。

 そして地下鉄は、ついにエルフの元へと線路を伸ばしたぜ。


「この森に、エルフが住んでいるんだな」

 冬だというのに、木々は力強く緑の葉をつけている。

 吸い込む冷たい空気は浄化されているように透き通っていて、どっか臓器(ぞうき)にやさしい気がする。

 イッコクのヘソから南西に位置する森は、手前で眺めているだけで偉大さを感じたぜ。

「さて、ここで問題よ。この森の名称はなんというのかしら」

 黒のキャスケット帽に赤いロングコートを羽織っているチェルが、優美に微笑みながら問いかけてきた。赤い瞳が挑戦的にとがっている。

 いつもなら答えられずに言葉を(にご)すところだが、今回は一味違うぜ。さすがにハード・ウォールで怒らせちまったからな。

 さすがに反省して予習をしてきたぜ。今日の俺に死角はねぇ。

「ふふふっ。エルフの森はバッチリだぜ。ヴァ、ヴァ……ヴァル……」

 おっ、おかしいな。ド忘れしちまった。確かに覚えたはずなんだが。

 俺の勢いが()えると、チェルは残念なため息をしたぜ。

「まっ、最初の一文字が出てきただけでも進歩(しんぽ)と考えるべきかしら」

 悪かったな。期待に応えられなくてよぉ。

 俯い(うつむ )てため息をはくと、手をポンポンと叩かれたぜ。水色のポンチョに白いコサック帽、青いマフラーを巻いたアクアが見上げていた。

「神聖なる森『ヴァルト・ディアス』だよ、パパ」

「そうだった。ヴァルト・ディアスだった。頭の奥底には刻まれてたんだけどなぁ」

 (くや)しくて(たま)んねぇぜ。ちなみに子供たちの防寒着は去年と同じデザインのまま、成長に合わせて作り直してある。

 別に、新しいデザインを考えるのが面倒だったわけじゃないんだからね。

「マイナスイオンにあふれた、いい森ではないか。シェイ、さっそくデートをしないかい」

「父上、ここらへんに樹海(じゅかい)はありませんか。ぜひともシャインと一緒に行きたいのですが」

 言葉を運ぶようにシャインを行方不明者(ゆくえふめいしゃ)にしようとしないでくれ。

「キヒヒっ。この森、なんか出そうじゃねぇか、ヴァリー」

「キャハハ。森に迷い込んだ冒険者やー、置いてかれた子供の亡霊がたくさんいるよー」

「……マジで」

 デッドが恐怖を(あお)るんだけど、ヴァリーに平然と返されちまったぜ。

 てかホントに出るの。俺、寒気を感じちまうんだけど。

「亡霊か。力押しで勝てるだろうか」

「普通の魔法すら(つう)じない気がするな」

 グラスとエアが頼もしい会話をしている。そのタフな精神が羨ましい。

「この森はぁ、気持ちがいい場所だねぇ。けどぉ、何か隠し事をしている気がするなぁ」

「隠し事? フォーレは何かわかるのか」

「元気な植物がたくさんあるからねぇ。ひょっとしたらぁ、用心した方がいいかもしれないよぉ」

 用心ねぇ。魔物は基本、俺らの味方だしな。エルフはおとなしい種族だって教えてもらったし、フォーレの気にしすぎな気がする。

「まぁ、ここでウダウダしてても仕方ねぇし、森へ入ろうぜ」

 俺が促す(うなが )と、子供たちの元気なオーが返ってきたぜ。ただフォーレだけが、浮かない表情をしていたけどな。

 待っていろよエルフたち。噂の(うわさ )美貌(びぼう)がどれほどか確かめに行くかんな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ