204 上流階級の妬み
コンテストに結果は残せなかったけどー、個人的には大満足だよー。
鼻につく貴族たちをー、いー感じにおちょくれたからねー。
ランラン気分でパパの元に戻れるよー。
参加することに意味があったしー、観客の受けもよかったからご機嫌だねー。兄弟も楽しかったーってお喋りしてるもん。
ヴァリーちゃんはー、みんなの様子を見ながら一番後ろを歩いていたよー。
十字になってる廊下を通過しようとしたらー、横から腕をつかまれて引っ張られちゃったのー。それも強引にー。
痛ったいなー。かよわい女の子になんってことするんだろーねー。ブーブー。
振り払おうと思えばできたんだけどー、おもしろそうな予感がしたからー、なすがままになってあげたんだー。
ヴァリーちゃんを引っ張るのはー、コンテスト前にいじめをしていた女の子だったよー。
顔は覚えていなかったけどー、ドレスは印象的だったからねー。
無言のままドスドスとー、奥にある部屋まで連れてかれたのー。
部屋に入るとー、勢いよく壁に投げ飛ばされちゃったー。背中からドンッて酷いよねー。
「痛ったー。いきなり乱暴だねー。でー、ヴァリーちゃんに何か用かなー」
顔を上げるとー、部屋に控えていた二人の少女がドアを閉めたのー。三人で寄って集ってー、どうするつもりなんだろー。興味あるー。
「用なんてもんじゃないわ。やってくれたじゃない。薄汚れた一般市民が」
「そーよ。由緒正しき高貴なコンテストを土足で踏みにじってくれちゃって」
「この落とし前はどうつけてくれようか。あなたの家族なんて簡単につぶしてやるんだから」
憎しみでゆがみまっくた顔して脅してきたよー、元は悪くないのに醜いもんだねー。
「確かにヴァリーちゃんたちは異質だったかもねー。けどー、あなたたちには関係ないでしょー。表彰台をかすめ取ったわけでもないしー」
よっぽど身分の高い貴族の子みたいだねー。なんでも自分の思い通りになると勘違いしているみたーい。
おちゃらけた態度をとりながらー、神経を逆撫でるように首を傾げたよー。
「黙りなさい。あんなお遊戯のせいで、表彰台に上がっても全然称えられなかったのよ」
「お世辞の言葉ばっかり。気分が悪いわ」
「謝りなさいよ。ドブネズミのように汚いあなたが、土足でコンテストを台無しにしてごめんなさいって」
一方的な意見ばっかりだねー。聞いていて楽しいやー。だってー、それだけムキに怒っているってことなんでしょー。
「へー、それはヴァリーちゃん知らなかったなー。でもー、話題になっているってことは楽しんでもらえたってことでしょー。だったらいいことじゃーん」
両手を広げて満面の笑みを返してあげたよー。謝る理由もないしねー。
気に障っちゃったのかー、少女たちは目をキッと吊り上げて葉を食いしばったのー。
カツカツと靴を鳴らして近づいてくると―、勢いよくヴァリーちゃんを引っ叩いたよー。
こう勢いよくパァンってー。避けようと思えば余裕だったんだけどー、あえて痛みに怯えるフリをしてあげたんだー。
膝から崩れ落ちてー、痛そーに頬を手で押さえるのー。震えながら怖じおじと見上げるんだー。
「ふざけないで! パパに頼んでここら辺を人払いしてもらったんだから。助けを呼ぼうったて無駄よ」
「素直に謝った方が身のためよ。あんまり強情だと私たち、何をするかわからないから」
目に黒いものを宿らせちゃって怖いなー。視野が狭くなっちゃているようにも見えるねー。
それにー、人払いされているんだー。だったらー、遊んじゃおーっと。
「やめてー、ぶたないでー。痛いのは嫌だからー」
悲痛を演じて泣き叫ぶのー。演技派なヴァリーちゃんはー、涙を一筋ツーって流したんだー。
するとー、少女たちは狂気を含んで笑ったのー。口なんか三日月の形になっているよー。もういじめたくて堪らないって顔だねー。
「黙りなさい! ぶたれたくなかったら跪いて謝るの。この害虫!」
ダメ押しにもう一発ぶとうとしてきたのー。つい口元がゆるんじゃったねー。誘導が簡単すぎるんだもーん。
打たれる瞬間を狙ってー、ヴァリーちゃんは完全人化を解除したのー。
土色の光を放つとー、眩しさにキャって悲鳴が上がったよー。けど勢いの乗った腕は止まることなくー、ヴァリーちゃんの頬をぶったのー。
「ヒッ、ばっ……ばっ……」
「またぶったねー。このヴァリーちゃんをー。キャハ」
ハーフスケルトンの姿にビビってるねー。醜いことは知っているしー、恐怖を煽るにはもってこいだよねー。
腰を抜かして動けなくなっている子もいればー、逃げようと四つん這いになっている子もいたよー。
ヴァリーちゃんをぶった子はー、肝が据わっているのか後ずさる程度のリアクションだったよー。瞳孔が小さくなって死相が出ちゃっているけどねー。
「どうしたのー。跪かせて謝らせたかったんじゃないのー。このヴァリーちゃんをさー。キャハ!」
顔を近寄せてー、骨の手で頬を撫でてあげたんだー。するとジョジョジョジョって水音が聞こえたよー。
「ダッサーイ。いい歳なのにお漏らしなんてしちゃったのー。キャハハ」
けどー、まだまだこんなものじゃないんだからねー。




