197 ヴァリーのデート理論
馬車から降りてヴァリーちゃんはー、パパと別れてデッドとショッピングに向かったんだー。
みんなそれぞれのグループに別れて自由に楽しく過ごすみたーい。
息抜きするときはしっかりとしないとねー。
「あっ、デッドー。おダンゴ売ってるよー。みたらし買おうよみたらしダンゴー」
「おいヴァリー、いきなり手を引っ張んじゃねぇ」
デッドがなんか言ってるけどー、ウキウキして身体が勝手に動いちゃうんだもーん。仕方ないよねー。
道行く人の隙間を潜りながらー、走ってお店の元まで行くんだー。
ガラスの向こうで白い服着たおじさんがー、せっせとクシ刺しダンゴを焼いてたんだー。手のスピードが速くてかっこいー。
「おじさーん。おだんご二つー。一つはみたらしでー、もう一つはー……デッドは何がいー?」
「僕の分まで勝手に注文すんじゃねぇよバカが。えっとぉ」
デッドは目を細くしてー、壁にかけられているメニューを眺めたのー。
「みたらしにアンコ、きなこに抹茶に黒ゴマかぁ。結構いろいろあンだな。オヤジ、僕は黒ゴマだ」
「あいよぉ。まいどありぃ」
イキのいい声で返事をするとー、それぞれのタレをつけて直ぐに出してくれたのー。紙袋に包んであるから持ちやすいねー。
「ほらデッドー。お金出してー」
「はぁ? ヴァリーも小金を持ってんだろ」
「もー、わかってないなー。兄妹とはいえ男女なんだよー。こういう小さいお金は頼れる男が出すものだよー」
「ケッ、またわけわかんねぇことを。いいよ、わあったよ」
デッドは嫌々言いながらもー、ちゃんと払ってくれたんだー。ホントはー、スッと気を利かせて出してくれれば完璧なんだけどねー。
デッドにはもっとー、男を磨いてほしいなー。
店を出て、食べながら歩くのー。みたらしはトロッとしていてー、甘さが口のなかに絡みついてくるー。触感もモチモチでサイコーだねー。
「おいしーい。ねー、デッドのはどう?」
聞いてみるとー、デッドはおダンゴを奥歯で噛みしめるように食べていたのー。あれー? なんで眉間に力が入ってるのー。
「別に食えりゃなんでもいいだろ。黒ゴマは風味があって、甘さ控えめで悪くねぇけどよぉ」
「なんか投げやりだよー。それよりどんな味か気になるなー。一個ちょーだい。ヴァリーちゃんのも分けてあげるよー」
「別に欲しいなら全部くれてやるぜ。交換なんてめんどくせぇしな」
毒をはきながらクシを押しつけてきたよー。ホーント、デッドはわかってないんだからー。
「って、なんで膨れてんだよ。甘いもん二つ食えんだろ。バンバンザイじゃねぇのか?」
「ぶー、互いのものを交換し合うのがいいのにー。デッドもロマンチストになろうよー。そんなんじゃモテないしー、彼女ができても直ぐにフラれちゃうんだからねー」
兄妹じゃなかったら見放してるんだからー。
ヴァリーちゃんはプイッて首を振ってー、デッドを置いていくつもりで早足になったんだー。
「ったく、めんどくせーな。おい待てよ、ヴァリー」
「ふーん。デッドなんて知らないもーん」
「待てって」
ソッポを向いて歩いていたんだけどー、デッドが正面に回り込んだんだー。ナマイキー。
「何よー」
「ヴァリーを一人にしたら面倒なヤローが集ってきそうだかんな。おもしろくねぇから一緒にいようぜ」
睨みつけるとー、赤い瞳を伏せながらデッドが頭をかいたのー。
へー、デッドってばヤキモチ焼いちゃうんだー。どうしよー、ニヤニヤが止まらないやー。ヴァリーちゃんかわいいもんねー。
「ンだよ。気持ち悪く笑いやがって」
「なんでもないもーん。あっ、かわいい雑貨屋さんはっけーん。一緒に行こーよ」
「だからぁ、急に僕の手を引っ張んじゃねぇ」
聞こえないもーん。あー、二人っきりでショッピングって楽しー。特にデッドを振り回しているのがいいねー。
特にデッドは目を離すとー、すーぐに単独行動しちゃうんだもーん。ヴァリーちゃんが目を光らせないとー。妹は大変だねー。
気になる場所を見つけてはー、デッドを連れてお店に入っていったんだー。
いろんなお店をひやかしながらー、大通りを歩いたのー。
「ところでー、パパは誰と一緒にいるんだろー。さすがに誰かと一緒だよねー」
「ンぁ。ジジイだかんな。一人にすると一番危ねぇし、シェイかグラスあたりが勝手について回ってんじゃねぇのか」
どうでもいいやって感じで返事をしたのー。デッドは心配じゃないのかなー。
「もー、デッドはまたー。でもそうだねー。フォーレも目を光らせているだろうしねー。あっ、服屋さんだ」
「ンあぁ! いいかげん手を引っ張んの止めろっての」
デッドの文句を置き去りにするように走っていくー。興味があるのを見つけたらー、直ぐにつかまえないとねー。
「シンプルだけどかわいい服が多いねー」
「ちっとは僕の意見も聞けっての。服ぅ? まぁ、市民の街に売られてる服だかんな。店のコンセプトもあるだろうから、ゴッテゴテのドレスはねぇだろぉ」
デッドは夢がないんだからー。女の子は否定より同意を求めてるんだからねー。正論だけじゃつまんないよー。
「んー、ペアルックがあったらよかったのになー。ざーんねん」
「待て。誰とペアルックするつもりだったんだよ」
「デッドに決まってるじゃーん。あったら着てくれるよねー」
「勘弁してくれ。ペアルック以外ならなんでも着てやっから」
デッドがゲッソリしながらお願いしたよー。
「しょうがないなー。許してあげるよー。キャハ」
なんでも着るって言ってくれたしねー。何を着せよーかなー。
「ちょ、なんでご機嫌なんだよ。嫌な予感すんだけど」
「なんでもないもーん。キャハ」
危機を感じたって遅いんだからねー。あー、楽しかったー。
「満足したしー、そろそろ帰ろーかなー。あれ」
「ん、どうした」
デッドの疑問をよそにー、お店で配布されていたチラシに目を向けるのー。
やばーい。おもしろいもの発見しちゃったー。どうりでー、門で並んでるときに貴族をたくさん見たんだねー。
「へー、そんなことやんのか。でも僕らにはカンケーねぇな」
デッドがなんか言ってるけどー、ヴァリーちゃんは楽しくて堪らなかったよー。
チラシを一枚貰ってー、ヴァリーちゃんたちは集合場所へ帰っていったんだー。




