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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第2章 建築!!魔王城『タカハシ』
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195 少女三人のウィンドウショッピング

 商業地区でパパと別れた私は、エアとフォーレと一緒にウィンドウショッピングに向かったの。

 甘い匂いに誘われるように、クレープ屋の列に並んでいたときは驚いたな。三人で別々の味を買って、食べ歩きしているの。

「クレープおいしいね。ブルーベリーの甘酸っぱさとクリームの甘さのマッチが最高だよ」

 クレープをはむはむと食べ進める。一口食べる度に口のなかが甘さで包まれて、幸せな気分だよ。

 ブルーベリーのツブツブした触感(しょっかん)もおもしろいし、()きないなぁ。

「へー、アクアの一口ちょうだい。ウチのバナナクリームも一口あげるから。こっちもおいしいよ」

「ホント。じゃあ分け合っこしよ」

「ありがと。はい、あーん」

 エアがニコリと笑って、手に持つクレープを口元まで伸ばしてくれた。口から直接、パクりとする。

 バナナの塊がすごく存在感ある。風味も強くて甘いよ。クリームも甘いんだけど、全然くどくない。手を取り合って踊っているようなコンビネーションがあるよ。

「アクアってかわいいよね。幸せそうに顔がほころんでるよ」

「えっ、ほんとエア」

 指摘されると急に恥ずかしくなってきたよ。私、そんなにわかりやすかったのかな。なんか顔が熱くなってきた。

「うん。ほんとほんと。ほら、アクアのもちょうだい」

「あ、うん」

 貰いっぱなしはよくないもんね。

 顔のほとぼりが冷めないまま、エアと同じようにクレープを伸ばした。

「はむ。んぐんぐ……うん。ブルーベリーもおいしいね」

 首を伸ばして啄む(ついば )ように一口持っていくと、エアは笑顔に花を咲かせる。

「もー、エアだってわかりやすいよ」

「だっておいしいんだもん。隠すこともないしね」

 ほわぁ。エアは私と違って堂々としているなぁ。羨ましい。前向きだし、頼りになる。背が小っちゃいのもかわいいなぁ。

「アクアぁ、あたいにも一口ぃ。キウイ味をあげるからぁ」

 エアとの間を、フォーレがズイっと割って入ってきた。

「うん、いいよ。はい」

 フォーレの口元にクレープを持っていくと、わぁいと喜びながらパクついた。モムモムとゆっくり味わってから飲み込むと、にへぇとゆるく微笑んだよ。

「おいしぃ。糖分さいこぉ。はいおかえしぃ」

「ありがとフォーレ。あむっ……うん。キウイも風味があっておいしいね」

 (ひか)えめだけど、クリームに混じっているふんわりしたキウイの風味が鼻孔(びこう)に届くよ。アリだね。

 果肉も入っていて、ツブツブと細い種の存在感が強い。

「そっちもおいしそうだね。フォーレ、ウチにも一口」

「いいよぉ。エアのもちょうだぁい」

 エアとフォーレも一口ずつ分け合う。お互いに食べさせ合う姿は、微笑ましいほど仲良しさんだった。つい口元が緩んじゃうね。

 クレープがなくなるまで、ウィンドウショッピングを楽しむ。

「あぁ、お花屋さんだぁ。お部屋で植木を育ててみたいなぁ」

「あっちにはかわいい小物のお店もあるよ。個人部屋があったら買っちゃってたかも」

 人間の街には興味を引くものがいっぱいあって、ついつい目移(めうつ)りしちゃったよ。見て回るって、すごく楽しい。

「アクセサリーのお店もあるよ……って、あれ?」

「あっ、父ちゃんだ。父ちゃんもかわいい装飾で着飾りたいのかな」

 パパが緑色のペンダントを買っているところだった。そんな趣味があったなんて知らなかったなぁ。後でパパにプレゼントする装飾を探そうかな。

「違うと思うけどぉ、おもしろそうだねぇ。おとーに秘密でぁ、三人でプレゼントを贈ろぉよぉ」

「いいね。じゃあ、こことは違うお店で装飾を買わないとね。サークレットなんかちょうどいいかも」

 フォーレの提案にエアも乗り気だ。二人とも普段より楽しそうに笑っていた。きっとパパが喜ぶ姿を想像しているんだろうな。

「うん。私も一生懸命、パパに似合うの探すね」

 両手を胸の前でガッツすると、三人で手を取り合った。

 目的地が決まったから、本格的に探し始める。けど、思ったより多くないのか、装飾品店は見つけられなかった。

「おっかしーな。さっきまでたくさんあった気がするんだけど」

「探し始めた途端にぃ、見つからなくなるなんてぇ」

「んー、困っちゃうなぁ。あっ!」

 立てた人差し指をあごにつけながら探していたら、とあるお店が目についたよ。

「なになに、見つけたのアクア」

「あれぇ。装飾品のお店にしてはぁ、物々しい気がするなぁ」

 看板には二本の剣がクロスして掲げられていた。なかを覗くと、剣とか斧といった武器が並んでいるよ。

 鎧姿(よろいすがた)の逞しいお客さんたちが、武器を吟味(ぎんみ)しているね。

「えっと、装飾品はないかもだけど、覗いてみてもいいかな」

 普通の槍が気になるんだよね。いつも使っているのはスキルで作った水の槍だから、違いを知りたいなぁ。

「あはは、ある意味アクアらしいかも。いいよ、ひやかしていこ」

「だねぇ。せっかくだからぁ、気の済むまで見ていこっかぁ」

「ごめんね、ありがと。エア、フォーレ」

 実際の槍は大きくて重くて、振り回すのは苦労しそうだった。エアとフォーレもいろいろ武器を触ってみたけど、どれもシックリこなかったみたい。

 感想を言い合ったり感触を確かめたりで、とても楽しかったな。

 周りからは不思議そうに見られていたけどね。でも、これてよかった。

 ただ、ジックリ見ていたら時間が無くなっちゃったのが残念かな。

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