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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第2章 建築!!魔王城『タカハシ』
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180 効き目

 おとーが倒れた。

 油断したよぉ。まさかお昼に堂々と毒を仕込んでくるだなんてぇ。

 でもデッドには目を光らせていたのにぃ、いったいどうやってぇ。

 うんん、そんなことは後だねぇ。デッドはちょっと痺れるぐらいって言ったけどぉ、どう考えても致死量(ちしりょう)の毒を盛られているよぉ。

 早く治療しないとぉ、おとーが死んじゃぁう。

「パパっ! しっかりしてパパ!」

 青い瞳から涙をボロボロと流しながらぁ、おとーの身体をユサユサと揺すっているよぉ。

「アクア駄目っ! 揺すらないでぇ」

 あたいが叫んだらアクアはぁ、怯えるように身体を凍らせちゃったよぉ。ごめんねぇ、怖がらせるつもりはなかったけどぉ、今は一刻を争うからぁ。

 それに余計に毒が回るかもしれないからぁ、身体を動かされるわけにはいかないのぉ。

「ゴメン、アクアぁ」

「キャっ、フォーレ……」

 肩からタックルするようにアクアの場所を奪い取るぅ。アクアを突き飛ばしちゃったけどぉ、気にかけている余裕がないよぉ。

 服から試験管に入った解毒薬を取り出してぇ、おとーの口に流し込むぅ。

 デッドがおとーに痛い目を見せようって言ってきてからぁ、あたいは警戒して解毒薬を開発していたぁ。

 どんな毒がくるかわからないからぁ、何種類も用意をしたよぉ。

 もちろぉん、取り越し苦労ならその方がよかったんだけどねぇ。ホントに使うことになるなんてぇ、ちょっと悲しいかなぁ。

「ケッ、解毒薬かよ。フォーレもご苦労なこったなぁ。ジジイなんかのためによぉ」

 誰のせいでってぇ、ちょっとだけ思ったねぇ。けどぉ、すぐに気分が冷めたぁ。

 デッドの憎まれ口は、震えていて弱々しく聞こえたからぁ。(むし)(あわ)れにも感じたよぉ。

 だってぇ、自分の盛った毒に自分が苦しめられている感じだもぉん。

 あたいは冷静になれたけどぉ、みんなは怒っているねぇ。荒い足音が聞こえたと思ったら、パァンって平手打ちの音が聞こえたのぉ。

「デッド! あなた何をしたかわかっていて!」

 チェルだったぁ。言葉が刃物のように尖っているよぉ。

「何って、ちょっと痺れ薬を盛っただけだろぉが。ビックリするだけで死ぬような(もん)じゃ……」

「それは魔物にとってでしょう! 相手はコーイチなのよ! イッコクで一番弱い男なの! 毒の効き目も普通より(ひど)いって、どうして考えられなかったのよ!」

 言い切った後にぃ、(すす)り泣きの音が聞こえてきたぁ。ストンって膝から崩れ落ちる音もぉ。

「なっ……僕は、ただ……」

「ちょっとデッドー!」

 デッドの声はしどろもどろでぇ、言いたいことが定まっていないようだったぁ。ヴァリーが悲痛な叫びをあげたよぉ。

 おとー、チェルが泣いちゃったよぉ。おとーが心配で泣いちゃったんだよぉ。

 苦しそうに身体が震えているぅ。その耳には今の音は届いているかなぁ。届いてなくてもいいからぁ、このまま死んじゃうのだけはなしだからねぇ。

 解毒薬がなかなか効いてこなぁい。ポーションをかけて体力も回復させた方がいいかもぉ。

 一本ポーションを振りかけたぁ。あんまり効果がなさそぉ。二本、三本と連続でかけるぅ。

 ……全然よくなる感じがしない?

「うそ、解毒薬もポーションも効き目が薄い!」

 助け、られないかも。

 不穏な言葉が頭によぎった瞬間、風邪を引いたかのように身体が寒くなって震えたよぉ。

「フォーレ! パパは大丈夫なんだよね。大丈夫なんだよねぇ!」

「父上、そんな……デッドォ!」

 アクアが慌てふためき、シェイが怒りに叫んだ。

 どうにかしなきゃ。おとーさえ治せれば元に戻せる。

「フッ、オヤジの悪運も尽きたようだね。しかし任せておきたまえ、プリンセス・チェルと麗しき姉妹たちはミーの手で幸せに……」

 一人で冷静にラーメンを食べ続けていたシャインが何か言いだしたぁ。

「シャイィィン!」

 シェイの怒りの矛先がシャインにシフトチェンジするぅ。情けない悲鳴と爽快(そうかい)な打撃音が聞こえるけどぉ、気にしてなんていられなぁい。

 けど、他にどうすればぁ……

「フォーレ、父さんは大丈夫なんだよな。もう、フォーレしか頼れないんだ」

 グラスが必死に懇願(こんがん)してくるぅ。でもあたいだってぇ、どうしていいかわからないよぉ。

 視界が潤んで見えにくくなるぅ。ダメだよぉ、泣いていたら何もできなぁい。でもぉ……

「コーイチ……コーイチぃ……」

 チェルはもぉ、おとーの名前しか言ってない。祈ることしかぁ、できないのぉ。

「ねえ、シャインだったら父ちゃんを、どうにかできるんでしょ」

 悲観の空気で包まれていたリビングを、エアの一言が貫いた。あたいはぁ、おとーから気を逸らして振り向いたぁ。

 みんなエアに視線を向けているよぉ。

 シェイですらぁ、シャインの襟首(えりくび)をつかんで宙吊りにしながら振り向いているぅ。

「はっ、ははっ。何のことかな、エア?」

 顔を()れあがらせたシャインがぁ、視線を泳がせるぅ。

「とぼけるのもいいけど、このまま父ちゃんが死んだらシャインをずっと恨むよ。ウチだけは最後まで恨み続けるから」

「やれやれ、エアには敵わないな。すまないがシェイ、手を放してくれないかい」

「え……あっ、はい」

 歯をキラリと光らせながらお願いすると、シェイは動揺しながら素直に従った。

「今回だけだぞオヤジ。男を救うのはね。エアに感謝することだ」

 シャインがおとーの身体に触れるとぉ、眩い光を放ったぁ。

 震えていた身体はぁ、安らかに収まったよぉ。

 苦しそうだったのがウソだったようにぃ、穏やかな寝息を立てていたよぉ。

 よくわからないけどぉ、おとーは助かったみたぁい。

 よかったよぉ、ホントにぃ……

「ひっぐ……うわぁぁぁぁ!」

 あたいは安心したのかぁ、悔しかったのかぁ、よくわからなかったけど大声で泣き叫んだよぉ。

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