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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第2章 建築!!魔王城『タカハシ』
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179 目に物を見る

 太陽が真上に昇ってきた頃、醤油(しょうゆ)の香ばしい匂いが漂ってきやがったぜ。

「んー、いい匂ーい。今日のお昼は何かなー」

「ンぁ。焼き魚かなんかじゃねぇか?」

 どうでもいいと思いながら、組んだ腕に頭を乗せて寝転ぶ。

「もー、デッドだってお昼ご飯はおいしい方がいいでしょー」

 ヴァリーがブーたれながら肩を揺すってきやがった。ウザッてーての。

「昼飯なんてマズくなけりゃなんでもいいだろぉが」

 ンなことより、どぉやってジジイのメシに毒を仕込むか。僕が配膳(はいぜん)すんのは不自然な気がすっし。

 唸りながら空を睨んでっと、ヴァリーの膨れた顔が遮りやがったぜ。影になりながらズイッと近づけてきた。赤い髪先が頬をくすぐりやがる。

「よくないよー。みんなで食べるご飯がおいしくなかったらつまんないもーん」

「近ぇ、近ぇよバカ」

「近いとバカってどういうことかなー」

 僕が嫌がって離そうとすると、逆にニヤニヤと機嫌よくして近づけてきやがった。

 さっき何を聞いてやがったんだっての。ジジイに毒を盛るんだぞ。どうすればうまくいくか悩んでるって……ヴァリーがいるじゃねぇか。

「なぁヴァリー、ちょっと手伝ってくんねぇか」

 ニヤリと笑ってやると、ヴァリーは表情をちょっとだけ暗くしやがったぜ。


 毒をヴァリーに渡してから室内に戻った。階段を下りてキッチンに顔を出すぜ。

「あっデッド、ヴァリー。エアが目を覚ましたよ」

 アクアが僕らの顔を見るなりに、ダイニングで席についているエアに青い視線で誘導したぜ。

 手には湯気の出ているラーメンドンブリをもっていやがる。漂う(ただよ )醤油の匂いはラーメンだったんか。

 テーブルにはエアを含めて、全員が揃っていた。

「おはようデッド、ヴァリー。なんか一日以上も寝ていたみたいだね。どうりでお腹がすくはずだよ」

 能天気にエヘヘと笑ってやがるぜ。なんか腹立つ。

「ケッ、そのままくたばっちまえばよかったンにな」

「まーまー。デッドも素直に喜ぼうよー。心配だったんでしょー」

「誰がっ!」

 僕が叫ぶと部屋のなかが笑いで包まれやがった。何がおもしれぇんだよ。ったく。

 おい、ヴァリー。今がチャンスだぞ。

 気を取り直して視線を送ると、ヴァリーは顔を引きつらせて肯定したぜ。

「キャハ、ご飯を運んでるところだよねー。パパの分はヴァリーちゃんが運んであげるねー」

「もぉ、ヴァリーはマイペースなんだからぁ」

 アクアと一緒に配膳していたフォーレが、しょうがないと言いたげに微笑んだぜ。視線もヴァリーから外してっし、疑いのウの字もねぇ。

 今だ、入れちまえ。

 ヴァリーがジジイ用の大きいドンブリに、僕の渡した毒液を入れた。これで目に物を見せてやれるぜ。キヒヒっ。

 ほくそ笑みながら何食わぬ顔で、席に着くぜ。後はヴァリーに任せときゃ勝手に決まる。

「はーい、お待たせパパ。ヴァリーちゃんが特別に運んであげたよー。感謝して撫でてもいいんだよー」

 いつも通り……いや、いつも以上にヴァリーは愛想を振りまいてやがる。見ていてバレねぇかヒヤヒヤすっぜ。

 けどアホなジジイは甘ったれた笑顔で、赤いツインテールの頭を撫でたぜ。

 ヴァリーはエヘヘと笑ってるけど、眉が八の字になっているのがちっとだけ気の毒かな。

 まっ、ちょっとした意趣返しだ。ヴァリーは気にする必要ねぇよ。

「エアも元気になったことだし、おいしくラーメンを食えそうだ。じゃ、いただきまーす」

 みんなでいただきますをしてから、ラーメンを(すす)る。

「んっ……うん。やっぱりアクアの作ったメシはうめぇ……ぇ……」

 笑顔で咀嚼(そしゃく)していたジジイの動きが止まるぜ。キヒッ、さっそく痺れやがったな。

「パパ? どうしたのパパ! ねぇ!」

 アクアが叫ぶも、ジジイはうずくまったまま動けねぇ。立ち上がるどころか、イスから転げ落ちて床に倒れたぜ。

「コーイチ! どうしたの、しっかりなさい」

 僕とヴァリーを除くみんなが慌てふためいたぜ。って、エアとシャインはそんなでもなさそうだな。まぁいいけど。

「おいおいジジイ。ずいぶん大袈裟じゃねぇか。ちょっと痺れてるぐらいで情けねぇぜ」

「デッド! お前父さんに何をした」

 グラスが牙を向いて怒鳴ってきやがった。おーおー、怖いねぇ。

「ジジイが僕を舐めやがったからな。ちょっと痺れ薬で灸を(きゅう )すえてやったんだ」

 これで身に染みっだろ。僕が上でジジイが下だってことがなぁ。

 エビのように背中を丸めながら、痙攣(けいれん)してやがっぜ。目を見開いて口なんかパクパクさせて……ジジイ?

「ねーデッド。ホントに大丈夫なのー。パパ、死んじゃいそうだよー」

 ヴァリーがオロオロしながら(すが)るように、僕の肩を揺すってきやがった。

「大丈夫に、決まってんだろぉが。ちょっと痺れる程度の毒だぜ。そこら辺の魔物で実験もしたし、間違いねぇよ」

 チクショー。どうして声が震えやがんだ。ジジイがオーバーなだけだろうが。

 胸騒ぎが止まらねぇ。どうして僕の方が目に物を見せられなきゃいけねぇんだよチクショーが!


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