表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第2章 建築!!魔王城『タカハシ』
174/738

173 大空の支配者

 太陽の塔を横目に、ウチはぐんぐんと高く飛んでゆく。地上にいる父ちゃんたちが点に見えるのに、まだまだ頂上にたどり着く気配がない。

「遠いな。飛び甲斐があるね。風も気持ちいいし」

 翼を羽ばたかせながら、ビュンビュンと風を切る。太陽の塔の壁面が、下に流れていくように見えるくらい速度が上がっている。

 間違いなく自己最高速度を出している。今なら誰よりも速い自信があるね。

「この空、すごく居心地がいい。まるでウチを歓迎してくれてるみたい」

 頂上に近づくほど、心地よさが強くなっていく。ウチのハーピィの部分を招いている気がしてならないよ。

「それに、ずっと気になっていたこともあるし。ソル・トゥーレに来たときから雲の向こうに感じていたんだ。挨拶しなきゃもったいないよ」

 口元が自然と笑ってしまう。町を散策していたときも、昼ごはんを食べていたときうずうずして仕方なかったんだよね。

 ただひたすら空を目指していると、不意に空気が揺らいだ気がした。

「あはは。そっちから来てくれたんだ。嬉しいな。さ、一緒に飛ぼうよ」

 空の向こうに語りかけると、雲を貫くように大きな鳥が急降下してきた。ワシの顔をしていて、鋭い視線とクチバシがウチを捉えていた。

 間違いなく敵として見ているね。叩き落とすつもりかな。

「わぉ。盛大な歓迎だね。でも、そう簡単にはへばらないんだから」

 進路を急変更して巨体の体当たりを回避する。出会いがしらの一撃を避けたことで、相手との距離が大きく開いた。

 ちょっと猶予(ゆうよ)ができたかな。今のうちに上っておこっと。

 塔を旋回しながら上っていると、後ろからとんでもない威圧感が迫ってきた。

「あはは、ちょっと追いつくのが早くないかな。ウチこれでもMAXスピードなんだけど」

 逃げながら振り向くと、巨大な鳥が後ろについていた。距離にして十メートルはまだあいていると思う。

 顔つきのわりに首が長い。胴体部分だけでウチが収まっちゃうくらいの大きさだよ。

 鶴のように優雅で大きな翼が羽ばたくたびに、衝撃のような風が身体に届く。色合いの鮮やかなクジャクの尾が揺れている。

 少しずつ、距離が詰まってきている。

「悪しき空気を(まと)う小娘よ。なぜ太陽の塔を狙う」

 空が震えているんじゃないかって声が耳に届いた。ダンディな低音だね。

「空が大好きだからだね。とっても上りたい気持ちになっちゃったんだ。それと、ウチはエアだよ。いつまでも小娘はやめてほしいな」

「エアか。純粋が故に厄介な娘だ。我が名は神獣スーグル。太陽の塔を守りし大空の番人なり。悪しき娘よ。塔を上ろうならそれ相応の覚悟を示してみよ!」

「ヤバッ」

 スーグルが羽ばたくと、衝撃に身体がさらわれた。崩れかけた態勢をどうにか立て直す。

 やー、危なかった。身体中が冷えたよ。って、冷やひやする隙もないね。

 滞空した瞬間にスーグルが迫ってきた。とっさに風魔法を放って、風圧の反動で回避を試みる。

 紙一重で躱すことに成功するものの、すれ違った際の風圧で空へと弾かれた。

「うっわ。すれ違うだけで死ぬかと思った。これは、危ないかも」

 一撃を受けるたびに態勢が崩されちゃうよ。下手したら衝撃だけで墜落しちゃうかも。

「ほぅ。なかなか器用なことをする」

 旋回して進行方向を塞いできた。思わず急ブレーキで止まっちゃったよ。

 滞空して見上げる。スーグルはとうせんぼするように翼を広げていた。翼の影にとらわれちゃったような感覚に襲われるよ。

「器用じゃなかったらとっくに落ちてるからね。ウチはまだ死にたくないし、父ちゃんやみんなを残して死ねないもん」

 方向転換して翼の影を逃れる。回り道はするけど、後退だけは絶対にしないんだから。

 螺旋(らせん)の軌道を描きながら、ちょっとずつ上ってゆく。

「その心意気やよし。だが我が領域に入った貴様を生かしては帰さん。せいぜいあがいてみせよ」

 ウチの上空をキープして並行飛行してきた。翼の影から逃がさないようにでもしているのかな。

「ウチより速いから厄介だよ。やっぱり世界は広いね。向こうは羽ばたくだけでウチに衝撃与えるんだもん。ほらきた……って」

 風圧に振り替えると、鋭い羽根が十本ぐらい迫ってきていた。

 ちょっと、ただでさえキツいのに追加攻撃なんてしないでよ。

 左右に身体を揺らしながら回避行動をとるんだけど、右手と横っ腹と右足を掠めちゃったよ。

 鋭い痛みが走った。腕を見ると赤い線がにじみ出てきた。

「あちゃー。切れてるね。痛いはずだよ。けどまだ飛べ……」

「もらった!」

 痛みで動きが鈍っているところを狙って、急降下の体当たりをしてきた。

「ちょっと大人げないって。手加減してよね」

 風魔法の打った反動でどうにか躱すことに成功。ヒヤッとしたけど、これでスーグルの上をとれたね。

 ここからは慎重に戦わないとね。あー、気持ちがヒリヒリするな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ