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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第2章 建築!!魔王城『タカハシ』
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171 太陽の塔

 地面に穴を掘って作られたドーム状の家や、動物や植物のデザインをされたテントが町に広がっていた。

 どの家にも鳥の骨らしき物が飾ってある。風土の(なら)わしかなんかだろう。

 地面は平らだけど、崖のように立つ岩がいくつかあった。その崖さえも掘って集合住宅になっている。

 この町の人たちはしたたかな性格をしていらっしゃるようだ。

 俺たちは町の手前で様子を眺めていた。太陽の塔は町の外にあるみたいだ。

「へー。なかなか風情が漂う町だな。家屋を見ると村と間違えそうだけど、規模が村じゃねぇな」

 ただ気になるのが、T・○ークやジェロ○モみたいな衣服のやつがウジャウジャいることだ。なんって言ったっけ、そういう民族を。

「ふっ、アメリカン・インディアン女性の民族衣装もそそるものではないか。ここの女性たちは落とし甲斐がありそうだ」

「ぜひ男性の民族衣装を目に焼きつけてください。ほら、あの上半身。程よく鍛えられて腹筋が割れていますよ」

「やめてくれシェイ。ヤローの上半身なんてほとんど裸じゃないか」

 そーそー、インディアンだ。シャインがいつものバカをやっているようだけど、たまには役に立つじゃねぇか。

 本人は目を押さえて深刻そうにうずくまっているがな。

「で、コーイチ。町の名前は思い出せたかしら」

「あっ」

 エアの様子がおかしかったのが気になってすっかり忘れていた。チェルを見ると赤い瞳がジトリと俺を捉えてやがった。

「あっ……なんて町の名前ではなくてよ」

 不意に上げちまった声を俺の答えにしないでくださいませんか。なじるような態度もやめてさぁ。

 タジタジになっていたら、グラスが嘆息をはいたぜ。

「この町は『ソル・トゥーレ』だよ、パパ」

「そうそれだ。アクア。ソル……なんやらだ」

「おとーはぁ、相変わらずだねぇ」

 アクアの援護射撃を無駄にしたら、フォーレに苦笑いされちまったぜ。いやぁ、申し訳ない。

「キャハハ。とりあえず町に入ろうよー。デッドも気になって仕方ないよねー」

「はぁ? 別に僕は……」

「デッドも気になるって。パパ、チェルちゃん早く行こうよ」

 デッドが文句を言っているが、ヴァリーは聞く耳なしだった。

「落ち着けヴァリー。町は逃げねぇから」

「おいヴァリー。僕とジジイを同じ扱いすんじゃねぇ」

 俺とデッドの手を取り、町へと引っ張っていった。みんなも微笑ましく笑って、後に続いたぜ。


 町には川が流れていて、カボチャやトウモロコシ、豆などの作物が育てられていた。不毛の地のように見えたけど、思いのほか農業もできるようだ。

 町の人たちも気さくで、喋ったら冗談交じりに言葉を返してくれたぜ。

 インディアン嘘つかない。みたいな堅苦しいイメージをしていただけに、フレンドリーなのは助かった。

 町の近くにいる動物や魔物を狩ることもあるようだが、意外と頻度は低いらしい。魚や木の実、農作物が盛んなおかげなんだと。

 それと鳥の卵もおいしいらしい。なんでも、町の定位置に巣があって、人気の少ない時間に飛んできては生み落して帰っていくそうだ。

 そういえば、ソル……ソルぅぅぅ。そう、ソル・トゥーレに入ってから鳥を見ていない気がする。なんでだろうな。

 テキトーな店に入って昼食もとったが、悪くなかった。ちょっとクセが強かったから、子供たちで好き嫌いがわかれたぜ。

 店は木造の吹き抜けで、風通しがよく景色がいいぜ。

 箸やフォークがなくてチェルが戸惑ったが、渋々と手づかみの料理を堪能していたぜ。

「旅の方。我が料理は満足いただけたかな」

 給仕の若い男が食器を下げながら話しかけてきた。顔にペイントがしてあり、落ち着いているダンディな男だ。

「いい味だったよ。ここらへんに来るのは初めてでね、土地の味を知るいい機会だった」

「僕はあんま好きじゃねぇけどな」

「あっ、ヴァリーちゃんもー」

「あなたたち、少しは場をわきまえなさい」

 チェルが窘め(たしな )めると、給仕の男は声を上げてハハハと笑ってくれた。

「いやいや、子供は正直が一番さ。ソル・トゥーレにはなんで来たんだい」

「家族で世界旅行さ。イカレてるだろ」

 ニヤリと笑ってやると、気分よく背中を叩かれたぜ。痛いから手加減してほしいもんだ。

「ねーおじさん。あの塔って見学できるの」

 エアが景色の一部となっている太陽の塔を指差し、興味津々に聞いた。黄色い瞳が輝いている。

「太陽の塔か。鳥神様(とりがみさま)(まつ)られるているから神聖で、魔を打ち払う力が宿っている場所だ。けど入らなければ怒りに触れることもないだろ。かっこいい塔だろ」

「うん。特に高いところがかっこいいな。父ちゃん。後で行ってもいいかな」

 テーブルに身を乗り出した。行きたくてウズウズしているのが見ただけでわかるぜ。

「エアは空とか好きだからな。わかったよ。なぁ、ここから塔までどれくらいかかるかな」

「見た目に反してかなり遠いからな。三〇分はかかるぞ。おチビちゃんたちにはツラいかもしれないぞ」

 店主の心配にデッドが噛みつく。

「けっ、僕をなめんじゃねぇっての」

「そうだよー。楽勝だねー」

「はっは。いやおじさんが悪かったよ。おまえらは立派だ」

 店主が褒めると、デッドとヴァリーは満足しておとなしくなった。子供の扱いがうまい方だぜ。俺も見習いたいもんだ。

「太陽の塔か。楽しみだな」

 エアはターゲットを定めるように、塔から視線を離さないのだった。


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