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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第2章 建築!!魔王城『タカハシ』
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170 荒野にある町の名前

 シャトー・ネージュで大量の奴隷を入手したはいいが、急にまとまった数をヴェルダネスに送ったため場所が問題となった。

 急遽(きゅうきょ)、奴隷用のマンションを建築することに。状態の悪い奴隷の療養(りょうよう)もさることながら、少しずつヴェルダネスの環境に慣れてもらおうと教育を開始する。

 同時に、事切れてしまった奴隷たちの墓場を最優先で作る。死人は丁寧に供養(くよう)しておきたい。

 大移動の際に無茶をしたことが災いし、助けられそうな奴隷さえも犠牲になってしまった。それに、死体を長々と放置するわけにもいかない。

 俺とシェイがシャトー・ネージュの状況を確認している間に、他の子供たちが墓場を作ってくれていた。後で教会も立てるつもりなんだと。

 ごたごたのせいで魔王城の建築が遅れ気味だが、まぁ大丈夫だろう。たぶん。

 冬を越える頃には、奴隷たちもヴェルダネスに馴染み始めていた。

 子供たちは健康になってゆき、遊んだり仕事の手伝いをできるようになった。

 無邪気で元気なのが一番だな。ススキはまたひどい視線を送ってくるんだけどな。なんとかならんかねぇ。

 逆にキレイな性奴隷のおねーさんたちは農作業を苦手としている。下手に大人なせいで忌避感が激しいのだろう。

 本来の役目通り、身体を村人に売ってもらうことにした。不満は出るだろうが、ソレしかできなさそうなので説得した。シェイと一緒に説得した。

 シェイのおかげですんなりいったけど、避妊の管理だけはしっかりさせないといかんな。

 そんなこんなで春が巡ってきた。イッコクに転移してから三年、イッコクのヘソに来てからは一年が経った。

 子供たちも八歳ぐらいの見た目になったぜ。

 地下鉄もまた新しい土地へと開通した。イッコクのヘソより東の地へ。


 一面に広がる荒野は、赤茶けた砂の色をしていた。風が吹くたびに砂が舞うぜ。

 細長いサボテンが所々に生えている。人を寄せつけない刺々しさが、どうも苦手なんだよな。

 空は青く、太陽も眩しい。あまり雨が降らない地方らしく、空気が乾燥していた。

「うん。遠くまで見渡せるいい場所じゃねぇか」

「言いてぇことはそれだけかよ、ジジイ」

「なんにもないよねー。土地がでこぼこしてるから景色はきれいだけどー」

 デッドが毒をつくと、すかさずヴァリーがフォローを入れた。

「うわぁ、お肌が乾燥しちゃうよぉ。アクアぁ、お水ちょうだぁい」

「いいけど、フォーレ大丈夫。(しお)れたりしない」

 アクアが眉を寄せながら魔法で水を出すと、フォーレは両手で受け止めて喉を(うる)おした。

「大丈夫だよぉ。だからぁ、おかわりぃ」

 二コリと微笑みながら手を差しだす。アクアは困ったように二杯目を出した。フォーレが満足するまで続くやつだな。

「太陽が眩しいじゃないか。ミーの美貌も一際輝くだろう。あと足りないのは、美女だね」

 シャインが手をあごにやり、キラリを歯を光らせた。

「とても不快ですが、今は捨て置きましょう。父上、向こうの方に町の気配があります」

「大丈夫かシェイ。かなり無理してそうだが」

 シェイが歯を食いしばりながら報告するのを、グラスが心配そうに眺めていた。今すぐシャインに鉄槌を食らわしたいんだろうな。それもシャトー・ネージュよりも先に。

「そうか。ンじゃ早速、向かうとするか」

「コーイチ。その町の名前はちゃんと調べていて」

 示された方角を向いて気合を入れたところで、チェルの言葉が突き刺さってきた。思わずウグッと悲鳴が漏れる。

 気のせいか汗がダラダラしてきたぜ。

「はっ……ははっ。とりあえず町についてから考えようぜ」

 問題を先送りするために愛想笑いでふるまうと、赤い瞳が責めるように睨んできた。

「コーイチはそればかりね。いいわ。町を見て名前が出なかったら、覚悟しておくことね。答えてくれることを祈るわ」

 フフっと妖艶(ようえん)に微笑みながら、俺の退路にトラップをセットしやがった。

 町に着くまでにどうにかしないと。隙を見てアクアかシェイあたりに教えてもらうしかねぇな。

「と、とりあえず町に向かうぜ、みんな」

 みんな元気な返事を返してくれた。けど、一番元気な声が足りない気がした。

「あれ、エアはどうした?」

 見渡すと、空を見上げて遠い目をしていた。何が見えているのか、反応を全く示さない。

「おーい、エア」

 エアの前で手を振ると、まるで意識が戻ったように表情をハッとさせた。

「父ちゃん。ここは風が気持ちいいね。それに、あの塔が気になるな」

 エアが指差すと、高い塔が空に伸びていた。雲を突き抜けていて、大気圏にも届いているんじゃないかと思うほどだ。

「そっか。向こうの方には町があって、まずはそこに行くことに決めたからな」

「いつの間にかそんな話になってたんだね。わかったよ、父ちゃん」

 いつもの元気なエアに戻ってホッとしたが、何に気を取られていたんだか。

 見上げた空は、キレイな青だった。

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