表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第2章 建築!!魔王城『タカハシ』
165/738

164 仕事人のシェイ

「おら、泣き顔見せてみろよ。それとも怖くて声もあげれねぇってか!」

 膝蹴(ひざげ)りを受けて壁に叩きつけられます。ホドホドがどういう意味だったのかPCでググりたいぐらい、やりたい放題ですね。

 えっと、いくら殴られましたっけ。全員から五発以上もらいましたが、もう数えてないです。

 それだけならまだいいのですが時折、見せしめに少年がムチで打たれるのが不条理(ふじょうり)ですね。

「テメェもかわいそうになぁ。嬢ちゃんが強情(ごうじょう)なせいで痛い思いしなきゃいけねぇんだからよぉ!」

 ほら、また。自分が泣きついたところで、簡単にやめるつもりもないクセに。少年に(うら)ませることによって、自分のメンタルも壊すつもりなのでしょう。

「ホント、痛いですね」

「ようやく泣き言か。聞いたかみんな。強情なお嬢様が泣きに入ったぜ」

 耳障りな哄笑が合唱になって部屋に響きます。何がそんなにおもしろいのだか。

 身体をゆっくり動かそうとするだけで、ピリッとする痛みが走りますね。が、耐えられないほどではないです。

「あぁ? 誰が立っていいって言った。地面に這いつくばってる方がお似合いだぜ!」

 またピシャンと、身体をムチで打たれました。右肩から左の腹まで熱い衝撃に襲われます。が、もうオーバーにリアクションするのも飽きました。

「おいおい、嬢ちゃんが立ったままじゃねぇか。手心(てごころ)でも与えてやったのか?」

「いや、そんなはずは」

 手応えがあったはずが、相手が微動だにしない。そのことに動揺を覚えているのでしょうね。少し恐怖を(あお)ってみますか。

 前髪で瞳を隠したまま、ニヤリと笑ってみます。するとヒッて悲鳴が聞こえました。

「みょ、妙な真似すんじゃねぇ」

「おいおい、何ビビってんだよ。B級がガキにみっともねぇなぁ」

 仲間に対する嘲笑。かわいそうに、まだ事態の変化に気づいていないのですね。後ずさりしている一人だけが、転機(てんき)に気づいているだなんて。

「うっせ。下手なことをしてみろ。そっちのガキが酷い目に合うぞ」

 情に(じょう )訴え(うった )る策できましたか。相手によっては有効ですが……自分は生憎(あいにく)、魔王サイドですよ。

「どうぞ。好きに痛めつけてください」

「うっ、うおぉぉぉ!」

 雄叫びは鼓舞(こぶ)するためか、それとも怖気(おぞけ)にあてられたのか。必要以上にオーバーモーションで鞭を振るいました。

 少年がギュっと目をつむって、顔を背けます。

 スパン! と影から闇の手裏剣を放って鞭を切りました。

 まぁ、自分なら動かずとも助けられるのですけどね。

「なんだ! ムチが勝手に切れやがった!」

 ワナワナと震える男。傍観(ぼうかん)していた男たちも驚きに目を向けました。

 あぁ、いいですね。この湧き上がる恐怖を抱いている闇は。やっと心地よい闇に触れられましたよ。

 頭のなかでは必殺仕○人のBGMが大音量で流れています。さぁ、()りますか。

 肩をつかんで首を回しながら、一歩ずつ踏みしめるように前に出ます。

「はぁ? 鞭が勝手に切れたからって調子に乗んっ……あぁ?」

 プスリと、男の左腕に闇の剣を刺します。剣は、自分の右腕から伸ばしました。

「ギャァァァ!」

「今更ですが忠告(ちゅうこく)しておきます。ケンカを売るなら、まず相手をよく見ることですね。まぁ、自分の場合は大穴(おおあな)もいいところですが」

 クスリと笑ってやると、ヒヤリと縮こまった視線を向けられました。怖気(おじけ)づくのがお早いことで。

「なっ、何をしているんだ。高い金で雇ったB級冒険者だろうが。そんな見せかけだけのガキ一人ぐらい、どうにかしっ!」

 壁際にいた店主が(わめ)きだしたので、彼の影から斧を作って真っ(ぷた)つになっていただきました。

「うるさいです。黙って下さい」

 血が、ドロリと床に広がります。

「うわぁぁぁ! 何がどうなってやがんだ。今夜はガキいたぶるだけの簡単な仕事のはずだろ!」

 最初に刺した男が喚きます。傷を負っているせいか、動揺(どうよう)も激しいようです。もう一人ぐらい消しても、いっか。

「あなたも黙って下さい」

「アガッ!」

 叫び散らして注目を浴びていた男の影から、闇の槍を突き刺します。特に隠密(おんみつ)にしようと思っていなかったので、全員が目撃したでしょう。

「ガイラス!」

「なんだこの槍。いったいどこから」

「フフ。B級が揃ってみっともないですね。そんなので魔物と()り合えるのですか」

 慌てふためいていたはずが、自分の小さな声を耳に拾ったようです。さて、どんな温度で聞こえたのでしょうか。

「ガキ……いったい何をした」

 ツバをゴクリと飲み込む音が聞こえました。最初の威勢が見る影もなくなっていますよ。

「闇の魔法でスパン、ですよ。そういえば人を殺したのは初めてですね。案外、どうとも思いませんね」

 自分の手を見つめる。生粋(きっすい)の人間だったら、何かを思っていたのでしょうか? (せん)なきことを考えても仕方ありませんね。

「テメェ、誰にケンカ売ってんのかわかってんのか。俺たちはB級なんだぞ」

 まるで男自身に言い聞かせるよう叫びました。そうでもしないと動けないのでしょう。

「わかっていますよ。だから、連携が取れるよう残しておきました。B級を、正面から体感しておこうと思いまして」

 ついでです。脅しも踏まえて正体も明かしますか。

 自分は闇色の光に包まれると、一つ目の姿に戻りました。

「なっ、魔物だと。城塞都市のなかに!」

 B級たちは怯えながらも、それぞれの得物(えもの)を取り出し構えます。

 部屋のなかで前衛三・後衛一ですか。さて、お手並み拝見といきましょう。自分も両手に闇の剣を(まと)います。

「あっ、そうそう。自分が勝ったらここの奴隷、全部もらっていきますね」

 余裕の笑みを見せるとB級から冷汗が流れ、石床に落ちたのでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ