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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第2章 建築!!魔王城『タカハシ』
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163 B級冒険者

「おうオメェら。奴隷の教育は進んでるか」

 (いか)ついスキンヘッドの男が、声にドスを利かせて入ってきました。手にジャラリと音を立てる鎖を(くさり )持って。

「これからってトコでさぁ兄弟」

「じゃあ、ちょうどいいタイミングだな」

 彼は確か……そう、この奴隷商の店主。あなたが主犯ということは、店の根本が(くさ)っているということですね。

「おら、チャッチャと歩け。俺の手を煩わ(わずら )せるんじゃねぇ!」

 グイッと力任せに引っぱると、くぐもったうめき声が返ってきました。手を後ろで縛られた傷だらけの少年です。首輪に鎖が繋がれています。

 引っぱられた拍子(ひょうし)に、ゴツゴツした冷たい石床に倒れてしましました。ただでさえ危険な床に、受け身も取れない状態で。見ていて痛々しい。

 あの状態で無理やり引っぱられては首がもげてしまいますよ。犬、猫の方がまだまともな扱いを受けています。

 不意に少年が顔をあげました。視線が合わさると、渦巻くような恨みを込めて睨んできました。とても、ドロドロとした不快な闇です。

 自分を恨むなど、筋違いではありませんか。境遇(きょうぐう)には同情できますが。

「さて嬢ちゃん。お勉強の時間だ。なに、覚えることは一つだけだぜ。俺たちに逆らうとどうなるか、だ」

 店主は分厚くよだれだらけの舌で唇をじっとり舐めると、背中から鞭を取り出した。

「自分を、その鞭で打つのですか」

 世紀末(せいきまつ)なアニメのように。

 グヒヒと、いかにも悪党な笑いが返ってきました。上機嫌なのは自分が怯えていると勘違いしているからでしょうか。

「安心しな。いい子にしてれば打たねぇよ。けぇどぉ、もしも暴れたり逃げ出そうとしたときにはこうだぜ」

 ベチンと鞭が唸りました。少年の悲鳴とほぼ同時に。

 なんと(むご)い。彼は見せしめですか。自分を非難めいた視線で睨んだのはコレを知らされていたから、ですね。

 背中を打たれて痛みに悶えながら、歯を食いしばってよりいっそう睨みを強くしました。

「と、こうなるわけだ。教育が行き届いてそうな嬢ちゃんなら、動物みてぇに身体で覚えさせる必要もないだろうがな」

 店主が笑うと、他の男たちもバカみたいに哄笑(こうしょう)しました。

 そうですか。闇が不快なはずです。シャトー・ネージュの裏側でこんなバカどもが蔓延(はびこ)っているのですから。

「まっ、もっとも。逃げようとしてもムダだぜ。俺たちB級冒険者が見張ってんだからな。すぐに捕まえられるぜ」

 誘拐犯が自信満々に笑います。

 冒険者。名前だけはかっこいいですが、言い換えると何でも屋になります。依頼があればこなして金を得るその場(やと)い。

 ちゃんとダンジョンに潜って一攫千金(いっかくせんきん)を得る者もいるようですが、そればかりでないのが事実とチェル様から教わりました。

 クラスもE~A級まであって、Aの方が強く頼りになるようです。詳しくは知りませんが。

 ちなみに勇者はA級の上と仮定してもいいようです。そもそも冒険者というカテゴリに含まないのですけど。

 さて、目の前のコイツらは上から二番目のクラスと宣っ(のたま )ているわけですか。実力があるなら地道に稼げばいいものを。

 思わず嘆息(たんそく)をついてしまった瞬間、自分のボディに拳が(こぶし )突き刺さりました。

「カッハッ」

「テメェ立場がわかってんのか」

 お腹を抱えて蹲っ(うずく )ていたら、髪をつかまれて顔をあげさせられました。下品な顔が近くに映ります。

「もう奴隷として売られて、ご主人様の道具になるしか道はねぇんだぜ。大好きな家族と別れてよぉ。ため息ついてる場合じゃねぇだろぉがよっ!」

 言葉尻にもう一発ボディを決められます。

 家族、ですか。あなた方に心配されるいわれはありませんよ。

「おいおい。イジメんのはいいけど、顔はやめろよ。商品価値が下がるからよぉ」

 注意はするものの、止める気はゼロですね。むしろ楽しんで見えますよ。

「わあってるよ。ただ、コイツがあんまりにも状況をわかってねぇからよぉ。再教育してやってんだオラァ!」

「グフッ」

 けっこう思いっきり殴ってくれるじゃありませんか。人間の子供だったら死んでいるんじゃないですか。それくらい手加減がされていませんよ。

「ったくしょうがねぇな。俺も混ざるか。兄弟、鞭を貸してくれよ」

「ひひっ。ホラよ。ホドホドにしとけよ」

「あぁ。ホドホドにな。ソラッ!」

「グッ!」

 それから男たちは順番交代に、自分をイジメ通すのでした。

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