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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第2章 建築!!魔王城『タカハシ』
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153 約束

 鉱山で見つけたヘソクリは予定外だったぜ。お宝には(ちげ)ぇねぇが、できれば原石を掘りたかったぜ。

 けど、収穫はあったんだ。これでよしとすっか。

 隣を歩くアイポを見ると、手元の金貨をもてあそびながらニヤニヤしてやがんぜ。そこまで金に困ってたんか?

 僕は何気なく金貨を指で弾きながら歩いた。

 ツルハシを元の場所に立てかけて鉱山を出る。ずっと暗い所にいたせいか、目が(くら)むぜ。

(まぶ)しっ。長く鉱山に潜っていたつもりだったけど、まだそんなに経ってみたいだねー。デッド、これから何しよっかー」

 ピンクの目を細めながら、顔を向けてくる。

「僕はそろそろ帰るぜ。一人で隠れて単独行動してっからな。バレる前に戻るつもりだ」

 えっ、て口をあけると、(しお)れたように目を()らしたぜ。

「もともと家族旅行で来てたんだけどよぉ、つまらなそうだったからコッソリ抜け出したんだよ。それに冒険におあつらえな鉱山があんだぜ。侵入するしかないっしょ」

 ニヤつきながら同意を求める。退屈な観光旅行なんてまっぴらだかんな。

「もー。デッドってば勝手なんだからー。でもわかる気がするー」

「だろ。まっ、短い間だったけど、楽しい冒険だったぜ」

 一人で楽しもうと思ってたけど、アイポと一緒も悪くなかったな。

「後は、人に見つからねぇように村を抜けるだけだな」

「あれ、村の外まで行くの。てっきり宿から抜け出したと思ってたけど」

 不思議そうに眉をひそめながら、首を傾げた。

「キヒヒ。さっきも言っただろ、僕らは魔王になるって。ベルクヴェルクは将来の侵略予定地だぜ」

「侵略するんだ。ちょっと信じられないなー。今までこの村は魔族に(おそ)われなかったから」

「そこは、魔王にも事情(じじょう)があんじゃねぇのか。アレコレめんどうなやつがよぉ」

 侵略のバランスとか人類が逆転(ぎゃくてん)する糸筋(いとすじ)とか、そういうもんを残さねぇといけねぇからな。詳しく説明しても、アイポにゃわからんだろ。

 頭をかきながら眺めるも、納得は全くしてない様子だぜ。

「まっ、そんなわけで視察しにきたってわけだ。隠密(おんみつ)にな」

 ジジイもめんでぇことに巻き込んでくれんぜ、全くよぉ。

「ふーん。よくわからないけど、デッドも大変なんだねー」

「だろ。わかってくれっか」

「まあねー」

 生意気にもアイポはニヒヒと、めんどう見がいいお姉さん(ふう)に笑いやがった。

 テキトーな相槌(あいづち)かもしんねぇが、嬉しいもんだな。味方がいるって。

「それとさー、村の外までわたしが案内してもいい。人目のつかない場所、知ってるよー」

「ケッ、余計なお世話だ……って言いたいとこだけどな。どうせだからつき合ってやんよ」

 このまま別れんのも名残惜(なごりお)しぃしな。

「もー、素直じゃないんだからー」

「っ()。やめろバカ」

 機嫌よく笑って、バシバシと背中を叩いてきやがったぜ。ガチで(いて)ぇんだからな。背中に手形(てがた)がつかなきゃいいけど。


 テキトーに巡回するドワーフの視界を、建物に隠れたりしながら村の外に出たぜ。ぷちメ○ルギアごっこだな。

 周囲は木々が()(そろ)っていて、緑の葉や草が()(しげ)ってやがんぜ。かといって空気が()みきっているわけじゃねぇ。鍛冶場(かじば)の、鉄の臭いが混じってやがる。

 アイポに案内されるまま村を出たけど、悪くねぇ脱出経路(だっしゅつけいろ)だったぜ。

「ありがとな、アイポ。もう充分だ」

「うわっ、珍し(めずら )ー。デッドがお礼を言ったよー」

 よほどビックリしたのか、瞳孔(どうこう)を小さくして身体をのけ反らせやがった。

「そんな驚くもんか? まぁいいけど」

 どうもやりにきぃ、思わず頭をガリガリかいちまうぜ。

「で、わたしはこれ以上進んじゃいけないんだよね」

「まぁな。ってか、気づいてたのか」

 得意げに、まあねーと返しやがった。何気に勘が鋭いじゃねぇか。ちっと舐めてたかもな。

「まっ、今更(いまさら)どうこうするつもりもねぇよ。誰かに喋ったところでどうこうなるとも思わねぇし」

 アイポは六歳のガキだかんな。大人……それもドワーフが気に留めることもねぇだろ。アイポ自身は油断できねぇけど。

 思わず苦笑(くしょう)しちまったぜ。

「別に喋らないよ。わたしもあの村、嫌いだから。ねぇデッド。手に入れた金貨、大切に持っていようね。約束だよ」

「この金貨か?」

 パーカーのポケットから金貨を取り出して、手のひらに乗せた。

 なんの変哲(へんてつ)もねぇ金貨だし、思い入れもねぇんだけどな。

 微妙に思いながら、アイポの表情を覗く。真剣(しんけん)に僕の金貨を凝視(ぎょうし)してやがんぜ。()(すえ)を心配してんだろぉな。

「わぁったよ。大切な宝物にしてやんぜ」

 強く握りこむと、アイポがニンマリと満足そうに笑ったぜ。

「ありがと。いつかまた会ったら、お(たが)いの金貨を交換しようね。絶対だよ」

「勝手に条件を増やすんじゃねぇよ。お安い御用(ごよう)だけどよぉ」

「うん。じゃあわたしは、村に帰るね。またねー」

 アイポは小さくてやわらかそうな手を元気よく振ると、勢いよく走ったぜ。

 途中で止まって振り向いたから、僕が手を振ってやる。それで正解だったのか、アイポは微笑みながらもう一回手を振った。そして今度こそ村へ走っていったぜ。

「ドワーフのクセに、忙しいやつだぜ。ンじゃ、僕も帰るか」

 ため息をついてから、踵を(きびす )返したぜ。


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