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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第2章 建築!!魔王城『タカハシ』
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151 復活する探検心

 鉱山のなかは入口の形に添って伸びてやがる。トロッコのレールも()えず()かれてっぜ。坑内は木材で補強された部分と岩壁の部分が交互に続いてやがる。強度的にはこの間隔(かんかく)で充分なのかもな。

「キヒッ。いいじゃねぇか。ゴツゴツしたむき出しの岩壁が雰囲気だしてっし」

 明りの魔法も使われてっけど、妙に薄暗(うすぐれ)ぇな。間隔も遠いから影ができてっし。けど、悪くねぇ。

「いいねいいねぇ。この、物陰(ものかげ)からなんか出てきそうな薄暗さ。冒険って感じがしてくるぜ」

 僕は奥に向かって一歩ずつ進んでいく。後ろからグスグスついてくるすすり泣きを聞きながら。

「ンで、テメェは何で僕についてきてんだよ」

 振り返ると、涙を手で(ぬぐ)いながらグズついてるドワーフの娘がいた。

「グズっ……何よ。邪魔するなとは言ったけど、ついてくるなとは言ってないじゃない」

 (うる)んだピンクの瞳で、ウーって(うな)りながら(にら)みつけてきやがった。

 コイツ、あれだ。なんとなくだけど、雰囲気(ふんいき)がヴァリーに似てやがる。

「ケッ、僕は何でついてきてんのか聞いてんだよ。質問に答えやがれってんだ」

「いいじゃん。わたしの勝手でしょー。一人きりでいるのは寂しいんだからねー」

 意地になって叫び返してきやがった。キーキー声が耳にうるせぇ。

「だったら家に帰りゃいいじゃねぇか。テメェにも家族がいんだろ」

 格ゲーに出てくる軍人っぽいセリフだぜ。一度使ってみたかったけど、今回は意識してなかったな。

「嫌だよ家族なんて。遊んでって言っても遊んでくれないしー。ちょっとしたことでうるさいって(おこ)るんだよー。ドワーフだったら静かにしろって。もーやんなっちゃう」

 (ほほ)(ふく)らましながら文句をぶつけてきやがった。上目づかいで睨んできやがる。けど、気持ちはすげぇわかるぜ。

「ンだよ。テメェも苦労してんだな。僕のジジイも似たようなもんだぜ」

「そっちもそうなの」

 驚いたのか目を大きく開いて振り向いた。

「っていうか、おじいさんなのー」

「いや、父親(ちちおや)だ。僕はジジイって呼んでっけどな」

 ジジイなんてジジイで充分だぜ。

「そのジジイが最悪でよぉ。テメェは何もできないお荷物のクセに、僕らには働け働けって命令してきやがんだぜ。身の程をわきまえろってんだ」

「うわー。子供を働かせるなんて酷いお父さんだね。あれ、僕らってどういういこと」

 首を傾げるとモサッとしているピンクの髪が揺れたぜ。

「あぁ、兄弟がいんだよ。七人な。僕は六番目で三男だぜ」

「兄弟多っ! けど下の方なんだね」

 いちいちオーバーに反応しやがるぜ。ってか、普通の家庭って何人ぐらい兄弟いんだ?

()ってけよ。生まれる順番を選べたんなら長男になってるぜ」

威張(いば)()らすお兄ちゃんになりそう。弟でよかったかもね」

「うっせぇっての」

 軽口の叩き合いが妙に楽しぃ。案外、気が合うのかもしんねぇな。気がつくとドワーフの娘も笑ってやがるぜ。さっき殺しかけたばかりだってのにな。

「デッドだ」

「えっ?」

「僕の名前だよ。かっこいいだろ」

 自慢(じまん)げに笑うと、腕を組んで首を傾げやがった。

「んー、よくわかんないや。わたしはアイポだよ。よろしくね、デッド」

 一輪(いちりん)の桜が咲いたように、やさしげな笑顔で手を差し出した。

「変な名前だな。まぁいいや、よろしくなアイポ」

 感想を()らしたら口をへの字にしやがったぜ。けど気にしねぇ。小さくやわらかな手を握って、ガッチリ握手をした。

 ギチギチと手が握りつぶされてゆく。人差し指から小指の骨が入れ替わりそうなほど圧縮(あっしゅく)しやがる。

(いて)ぇよバカ! 首絞めてるときも思ったけど、どんな握力してやがる。もっと手加減しやがれ」

 骨を砕かれる危機感を感じて、思わず手を振り払っちまったぜ。ドワーフって子供の頃から力強(ちからづえ)ぇのかよ。

「あはは。デッドてば、弱ーい。変な名前って言ったバツなんだからねー」

「アイポが強すぎんだっての! 何歳でその力がだせんだよ」

「六歳だよー。デッドは?」

 へぇ。アイポは六歳なのか。そういやジジイは僕の見た目が六歳程度って言ってたな。

「僕も六歳ぐらいだ。でも驚いたぜ。僕より年下に見えたんだけんな」

 ホントは一歳半なんだけどな。言っても信じねぇだろぉけど。キヒッ。

「ブー。背が低いのはドワーフのせいだもん。わたしだってボンキュッボンになりたいもん」

 からかうとまた頬を膨らましやがった。いいね、()きねぇ。ドワーフでありながらヴァリーと同じ願いをもってやがるとはな。

「キヒヒ。なれるといいなぁ。ボンキュッボンにさ。キヒヒッ」

「絶対になれるって思ってないなー。笑うなー」

 笑ってたらポカポカ殴ってきやがったぜ。痛みが結構シャレにならないけど、こういうのも悪くねぇ。

「わかった。僕が悪かったからもう叩くな。地味(じみ)に痛ぇんだからな」

「やめてほしい? だったらアイポのことかわいいって言って。そしたら許してあげる」

「はぁ、なんでそんな」

 ポカポカ。

 あぁ、もうウザってぇ。どうにか止めねぇと。

 僕がガバっと抱きしめると、きゃっと悲鳴を上げた。

「わぁったから。アイポはかわいいよ。ちっこくて、つい抱きしめたくなるぐらいだ!」

 ドキドキしながら止まってくれるのを願う。頼むぜ。

 何秒か抱きしめたままアイポの動向(どうこう)を見守る。

「……わかった。許してあげるね」

 助かったぜ。

 ホッとして身体を離す。顔を見ると、頬を赤く染めてやがったぜ。

 変なやつ。風邪かなんかかもな。


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