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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第2章 建築!!魔王城『タカハシ』
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149 武器と職人

 デッドを除いた全員でドワーフの村ベルク……まぁいいや。そのうち名前を覚えれるだろ。に向かう。

 ヴァリーがプンスカと不機嫌なのが気になるな。何か気が(まぎ)れることでも起こればいいんだけど。

「コーイチ、復習(ふくしゅう)よ。この村はなんというのかしら」

 いざ村に入ろうというタイミングで、チェルが抜き打ちテストをしかけてきたぜ。

卑怯(ひきょう)だぞ。不意打(ふいう)ちをかますなんて」

 この仕打ちはあんまりだ。訴訟(そしょう)()さない。

「ベルクヴェルクよ。たまに聞くから、完璧に答えられるようにしておきなさい」

「あっ、はい」

 電気をピリピリ纏いながら脅すのやめてもらえません。次どうなるかが怖いんだけど。

 とにかくベルク……ヴェルクに入るぜ。よく記憶から飛んでなかった。えらいぞ俺。

 無言で小さくガッツをしたら、チェルの嘆息(たんそく)が返ってきたぜ。子供たちの空気を読むような笑いが、俺のメンタルにトドメを刺してきやがる。

 そろそろ泣いちゃうぞ。

「もー、早く行こうよみんなー。デッドが追っかけてきても追いつけないぐらい早くさー」

 先頭にいたヴァリーが振り向くと、地団駄(じだんだ)を踏んで急かしてきた。

「わりぃわりぃ。新しい村に入るのって緊張しちまって」

「もー、パパってばヘタレなんだからー」

 頭をかきながら言い訳すると、プンとそっぽを向いた。拒絶するようにベルクヴェルクへ走っていったぜ。

 やれやれ。だいぶ、おかんむりだな。機嫌がこれ以上悪くなる前にどうにかしねぇと。

 ヴァリーが一番乗りで到着すると、外を歩いていたドワーフたちが首を向けてきたぜ。

 (ひげ)がモッサリしていて、ずんぐりむっくりな体形だ。なかには眉毛が濃すぎて目が隠れているやつもいるぜ。

「こんにちわー。初めましてー。ヴァリーちゃんだよー」

 赤いドレススカートの端をつかんで、丁寧(ていねい)にお辞儀(じぎ)をした。独り舞台(ぶたい)に立ったかのようだぜ。だけどドワーフは首を戻すと、何も喋らずに行動を再開した。

「ちょっとー。少しは反応しなさいよー。かわいいヴァリーちゃんが登場したんだからねー」

 マジかよ。ヴァリーが完全に無視されやがった。

 歩いて追いつくと、肩が悔しそうにフルフル震えていたぜ。

「あっちゃー。失敗しちゃったな。けどかわいかったぞヴァリー。ドワーフにはもったいないぐらいだ」

 ツインテールに結んでいるパーマのかかった赤い髪を、ポンと後ろから撫でてやる。

 ドワーフにケンカを売ったことにならなきゃいいけど。

「もー、最悪。ドワーフにはヴァリーちゃんのかわいさがわからないのかなー」

 (くや)(まぎ)れを、周辺に聞こえるほど大声で放ちやがった。怒っているのはわかるけど、相手のことも考えてほしいぜ。

「だな。職人(しょくにん)気質(きしつ)だといろいろ捨てちまうもんもあるんだろ。さ、気を取り直していこうぜ」

 俺はただ、苦笑いを返すのが精いっぱいだった。


「ここは武器屋かな。看板からのイメージだけれど」

 二本の剣が交差した、鉄製の看板が玄関の上にかかっていた。

「きっとそうですよ。俺も少し、興味があります」

「私はやっぱり、槍を見たいな」

 グラスとアクアが興味津々(きょうみしんしん)に店を眺める。木造建築で看板がある以外では、ドアが広いのが特徴だな。

 パッと見、民家のドアは低い。背の低いドワーフしか使わないことが前提(ぜんてい)だから、余計な高さは()らないんだろうな。

「じゃぁ、入ってみよっかぁ」

「どんなとこだろ。楽しみだな」

 家族総出(そうで)で入っていく。棚には剣や槍、斧などの武器が立てかけられているぜ。

「らっしゃい」

 奥の方から野太い声が響いてきた。カウンターにいるのもこれまたドワーフだ。まぁ、当然なんだが。

「あっ、どうも」

 軽く会釈(えしゃく)を返す。つかみどころがない人だぜ。コミュニケーションはとれるのか?

「いい武器ですね。参考になります」

「はは、そんな無骨(ぶこつ)な武器よりも、ミーの槍の方が……」

「へし折ってやりましょう。ゆでたウインナーみたいに」

 シェイ、シャレになんねぇからそれ。シャインもいいかげん、学習してくれやマジで。

 男としてあまりにも致命的(ちめいてき)なことに肝を冷やしながら、店内を見渡す。

 んっ、(すみ)の方に傘立(かさた)てのような(たる)が置いてあるな。武器が無造作(むぞうさ)に入れてあるぜ。

 扱い(あつか)(ざつ)だから失敗作……とまではいかないけど、完成度が中途半端な商品なのかも。

「おい、そこのお前」

 家族で和気(わき)藹々(あいあい)()やかしていたら、カウンターから話しかけられちまった。

「なんですか?」

「ここは見世物(みせもの)小屋じゃねぇぞ。武器を使わないならとっとと出てけ」

 親指を出口に向けながら、(にら)みに殺意を込めてきやがった。

 やべ、冗談抜きで殺されちまう。

「みんな。充分見たよな。そんじゃ、次行こうぜ」

 子供たちは不満(ふあん)がありそうに見上げてきたが、素直に従っ(したが )てくれたぜ。

 結局ベルクヴェルクでは一日中、どこに行っても(かた)っ苦しかった。



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