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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第2章 建築!!魔王城『タカハシ』
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144 雑魚寝の陣取り合戦

「パパ、ヴァリーちゃんが隣で寝てあげるねー。嬉しいでしょー」

 花火を満喫(まんきつ)してから寝床(ねどこ)となる電車に入ると、早速(さっそく)ヴァリーが腕を取って場所取りを始めた。

 床にはマットを敷き詰めてある。靴はホームで脱いでいるぜ。

「うおっと。そんなに慌てんなって」

「あーまーいー。場所なんてグズグズしてるとすぐに取られちゃうんだからねー」

 赤いクセっ毛を揺らしなら、出入り口付近をキープする。

「ケッ、ジジイの何がいいんだか」

「もー、デッドも嫉妬(しっと)しないのー。ヴァリーちゃんの隣はまだもう一つあるんだからー、一緒に寝よー」

「はぁ? なんで僕が……」

「いいからいいからー」

 ヴァリーは俺を物のように寝かせてから、デッドの腕を強引(ごういん)に引っ張ってきた。

 軽い抵抗(ていこう)はしてっけど、満更(まんざら)でもねぇんだろぉな。睨みに戸惑いがあるぜ、デッド。

「はい完璧ー。これでいつでも寝られるねー」

「何が完璧だっての。かってに僕の寝る場所まで決めやがって」

 赤い瞳を鋭くさせながらブツブツ言っているけど、移動する気配はなかった。

 ホント、こいつらは仲がいいな。

「はっはっ。さぁ、ミーと一緒に眠るレディーは誰だい。シェイでもフォーレでも誰でも構わないよ。この機会にプリンセスチェルと()い寝もいいではないか」

 あっ、無駄にご機嫌なバカが図に乗ってやがる。そんなことしていると、強制的におネムになんぜ。

 シャインは車内の中央に立って、値踏(ねぶみ)みするように見渡しながら上機嫌になっている。

「グラス。自分と一緒にシャインを寝かしつけて下さい」

「気は進まんが、わかった」

 グラスが車掌室(しゃしょうしつ)の手前で嘆息する。シェイは対面の車掌室からシャインに向かって駆け出した。

 (はさ)()ちになってらぁ。どんなツープラトンが炸裂(さくれつ)することやら。

 シェイがシャインの後ろから跳びかかり、うつ伏せに倒す。

「アグッ! シェイ、熱烈(ねつれつ)じゃないかそんな勢い(いきお )よくミーに抱き着いてくるだなん……ちょ、待ちたまっ……」

 シェイはシャインの首筋をつかむと、地面に押しつけてガガガガと引きずりながら駆けてゆく。

 シャインが悲鳴を上げて暴れているけど、あの態勢(たいせい)じゃどうしよもねぇな。

 グラスは接近(せっきん)を確認すると、茶色い瞳を真剣に細めた。ゆっくりと正拳突(せいけんづ)きの構えをする。

 シェイがシャインの身体を()()る形で持ち上げると同時に、グラスの正拳突きがボディに刺さったぜ。

「グハッ!」

 シャインはくぐもった叫びをあげて事切(ことき)れる。シェイとシャインが静かにハイタッチを交わした。

 俺この(わざ)、知ってる。仮面ラ○ダータ○ガのファイナルベ○ト、クリスタルブレ○クだ。二人して、なんって技を決めるんだよ。

「自分は座席(ざせき)で横になります。グラスはどうしますか」

「俺も座席でいい。堂々と座席で横になる機会は少ないからな」

 グラスとシェイは座席派か。どうでもいいけど、シャインはそこに打ち捨てとくんだな。

「ねえ父ちゃん。網棚(あみだな)で寝てもいい」

「その発想(はっそう)はなかったからな。身体を痛めると思うし、高いからやめとけ」

 てかエア、どうしてそこで寝ようと思ったし。

「ちぇ、残念。じゃあ床でいいかな。アクア、フォーレ。一緒に寝よ」

「おっけぇ。アクアもいいかなぁ」

 緑のボサボサ髪を背中におろしているフォーレが、アクアに向かって首を傾げた。

「いいよ。三人で寝よっか。エアが真ん中?」

「いいの、やったー。ありがと、アクア、フォーレ」

 エアは二人に抱き着くと、ピョンピョン跳ねて喜んだ。

 三人娘は微笑ましい限りだ。後は。

「チェルはどうすんだ?」

「そうね、たまには娘たちと寝ようかしら。コーイチとはいつも一緒だものね」

 まぁ、同じ部屋で寝てっしな。

 チェルは赤い瞳でエアたちを見つめる。どうやら、(すで)にアタリはつけている感じだな。

「エア、あなたたちのところに入れてもらえる」

「いいよチェル様。今日は楽しく寝られそうだよ」

 楽しく寝られる、ねぇ。変なニュアンスだぜ。

「そんじゃ、もう寝ちまおうか。おやすみ、みんな」

「おやすみー」

 寝るだけだっていうのに、(にぎ)やかな就寝(しゅうしん)になったぜ。

 特にヴァリーは俺を抱き枕にしていたからな。これも父親の特権だろう。


 翌日。午前中にもう一回、海で遊んでからイッコクのへそに帰ったのだった。



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