138 漂う
アクアとエアが競争するのを見守りながらぁ、蓮みたいにプカプカと海に浮かんでいたのぉ。
二人とも元気だなぁって思っていたらぁ、デッドとヴァリーがバシャバシャって音を立てたんだぁ。
マズいと思って助けに行こうと思ったんだけどぉ、泳ぎ方を知らないことに気づいたんだよねぇ。
どうしものないかぁってプカプカ浮かんでいたらぁ、岸が遠ざかったのぉ。
アクアもエアもぉ、デッドとヴァリーに夢中だったぁ。
何もできないままぁ、遠い海まで流されたのぉ。
あたいは広い海にぃ、プカプカと一人きりだねぇ。
真夏の太陽に冷たい海ぃ。ユラユラと波打っていてぇ、光がキラキラ反射しているよぉ。遠くには岸が見えるんだけどぉ、自力で戻るのは無理そぉ。
というわけでチェルのメッセージを使ってぇ、おとーにヘルプをお願いしたのぉ。
だから一安心だねぇ。あたいは信じて待っているだけでいいんだぁ。
のんびり浮かんでいたらぁ、エアが空を飛んできたのぉ。探しにきてくれたんだと思ぉ。目がキョロキョロ動いているからぁ。
そしてそのまま通りすぎていったのぉ。あたいに気づかなかったみたぁい。
「あれぇ? もしかしてぇ、見つけにくいのかなぁ」
エアは三回くらい通りすがったよぉ。後半になるほどぉ、顔に焦りが浮かんでいたぁ。
「あちゃぁ。思ったよりもキビしぃのかもぉ。もしかしたらぁ、シェイも見つけられないかもぉ」
海を見下ろしてみるとぉ、海底は見えなかったぁ。影が届いている気がしなぁい。
これはちょっとぉ、みんなを心配させちゃうかもなぁ。特におとーは心配性だからぁ。
エアとシェイは頼みの綱だったと思うからぁ、ガッカリしているんだろぉなぁ。
グラスはそもそもぉ、泳ぐの苦手みたいだしぃ。デッドとヴァリーは溺れていたしぃ。
「そういえばシャインもいたっけぇ。その気になったらぁ、ホントに来そぉで困るなぁ」
まぁ、シャインには期待していないけどねぇ。けどぉ、なんとかなるでしょぉ。
「だってぇ、アクアがいるもぉん」
確信して微笑んだらぁ、海から巨大な影が近づいてきたのぉ。
バシャーンて水しぶきが上がるとぉ、三体の巨大な魔物が顔を出したぁ。あたいは囲まれた形になるかなぁ。
「わぁ。逞しい子たちだねぇ。みんなおっきぃ」
リヴァイアサンとオクトパスとジョーンズがぁ、高いところから見下ろしているのぉ。
「こんにちわぁ。強そぉだねぇ」
手をのんびり振っていたらぁ、海からブクブクあぶくが上がってきたぁ。
影がどんどん大きくなってきてぇ、プハッて青い髪の少女が顔を出したのぉ。おへそあたりまで水面から出ているよぉ。
「見つけたよ、フォーレ」
「見つかっちゃったねぇ、アクアぁ」
安心しきった笑顔で迎えに来たからぁ、おんなじくらいの笑顔で返したのぉ。
「みんな心配したんだから。私だって、心配だったんだからね」
アクアは不満げに眉を寄せると抱きついてきたぁ。あたいも浮き輪が邪魔だったけどぉ、精いっぱい抱き返したよぉ。
「ごめんねぇ。ありがとぉ。この魔物たちはどうしたのぉ」
「元々この海に住んでいた魔物でね、フォーレを探してってお願いしたら引き受けてくれたの」
アクアが振り向くとぉ、魔物たちが愉快そうに笑った気がしたぁ。
さすがだねぇ。信じていたよぉ。でもぉ、まさかヌシ級の魔物を三体も手なずけるだなんてぇ。しかもケンカさせずにぃ。
やっぱりカリスマだなぁ。アクアは気づいていないけどねぇ。つい笑みがこぼれちゃうよぉ。
「みんなフォーレを見つけてくれて、案内してくれてありがとね。じゃあ、バイバイ」
アクアが手を振るとぉ、魔物たちはそれぞれ別方向に帰っていったのぉ。
「さっ、帰ろうフォーレ。パパたちが待ってるよ」
一仕事が終わったところでぇ、勢いよく振り返ったぁ。
「そうだねぇ。けどぉ、泳ぎ方がわからないからぁ、連れていってほしいなぁ」
「うん。わかったよ。一人きりで離ればなれだったんだもん。不安だったよね」
アクアはあたいの浮き輪を両手で押してぇ、岸へと泳ぎだしたぁ。顔を見合わせているからぁ、後ろ向きに運ばれているねぇ。
「不安はなかったよぉ。絶対にアクアが助けてくれるってぇ、信じてたからぁ」
だってアクアはぁ、あたいの一番のお姉ちゃんだからねぇ。
「フォーレ。ありがと」
「なんでアクアが感謝してるのぉ。普通は逆だよぉ」
おかしくって笑うとぉ、アクアも一緒に笑ってくれたぁ。
あぁ、今日は太陽が暑ぅい、いいお天気だなぁ。




