133 太陽が眩しぃぜ
ザクッと白い砂浜にスコップを入れては、穴を深く掘っていく。近くにはビーチパラソルが横になっている。
「パラソルを立てるときはっ、けっこう深くっ、掘らないといけなかったからな」
俺は水着にサンダル状態で、せっせと作業を進める。茶色いサーフパンツという、シンプルな姿だ。
「深さはこんなもんでいいかな。ンじゃまぁ立ててみるかねぇ。よっと」
かけ声をあげつつ、悪戦苦闘しながらパラソルを立てる。シッカリと穴を埋めなおして手を放した。
「……うし、倒れねぇな。広げたらビーチチェアも持ってこねぇと」
「随分と手の込んだことをしてくれたわね、コーイチ」
「んっ、おぉ!」
呆れ気味な声に振り返ると、水着姿に麦わら帽子を被ったチェルが腰に手を当てていた。
おぉ、いいねぇ。黒のモノキニ。上下が繋がっていながら、しなやかなくびれをさらしてやがる。胸の控えめな膨らみも滑らかでつい視線を送っちまうぜ。
いやぁ、制作した甲斐があるってもんだ。眼福だぜ。
「電車に何もないと思ったら、マイルームを繋げていただなんてね。すっかりアイテムボックスになっていてよ」
「便利だろ。それに凄くかわいいぜ、チェル」
ジト目で赤い視線を送っていたチェルだったが、褒めると頬をカァっと赤く染めた。
「もぉ、バカ」
プイっとそっぽを向いてしまった。少々、欲望を出しすぎたかもしれんな。
「パパっ、着替え終わったよー。ヴァリーちゃんかわいい?」
「おとー、いい趣味してるねぇ」
「えっと、変じゃないかな」
「大丈夫だよアクア。すっごくかわいいもん」
「ふむ、思ったよりも着心地がいいですね。さすが父上です」
娘たちの楽しげな声に振り向くと、みんな俺お手製の水着に着替えていた。
ヴァリーがイギリス国旗の柄を描いた、フレアワンピースを見せびらかす。その場でクルンと一回転するもんだから、よほど気に入っているのだろ。
ていうかその仕草、チェルにもやってほしかったぜ。
お次はフォーレ。緑色のシンプルなワンピースの上から、黄色いラッシュガードを羽織っていた。隠す美学の集大成と自負している。
けどフォーレ、人を変態みたいにニヤニヤしながら見るのはやめてくれないか。
恥ずかしがっているのはアクアだ。水色のセパレートはお腹が見えるか見えないかぐらいの長さをしている。おへそのチラリズムに全力を注いだ仕上がりだ。
アクアが着ると恥じらいによって魅力がアップしている。俺はい~い選択をした。
エアは黄色のタンキニだ。露出そのものは低いが、元気さと相まって活発な魅力を感じさせてくれる。
ビキニも捨てがたかったんだけど、エアはポロリがありそうで怖かったんだよな。シャインさえいなければ笑い話にできたんだけど。
ラストバッターのシェイ。黒ビキニにパレオを巻いている。一番攻めた水着だけあって、かわいさが半端じゃない。
シェイには太陽の陽射しを存分に味わってもらいたかったからな。しかしグッドだ。
「おー、みんな凄くかわいいぞ。さすが俺の娘たちだ」
褒めると、それぞれの嬉しい顔が返ってきた。
いやぁ、真夏の太陽が眩しぃぜ。
「ケッ、ジジイが鼻を伸ばしてやがんぜ」
「父さんだって男なんだ。割り切ってやれ」
「まったくオヤジは。こんなサプライズがあるなら先に言ってくれてもよかったのに」
息子どもが水着姿で顔を出した。
ふて腐れているデッドは緑のサーフパンツ。
しょうがないって顔をしているのはグラス。黒のサーフパンツを履いている。
ぶっちゃけ、男の水着の種類なんて多く知らねぇからな。俺も含めて、無難で履きやすい水着にしておいた。
なお、男の攻めた水着はググらないことをお勧めする。水着の制作時に画像を見たが、おぞましい物だった。
ちなみにシャインは青のブーメランだ。ナゼかこっちの方がしっくりくる気がしたのだが、予想以上に似合っていたから困る。
「おぅ、お前らも着替えたか。なかなかに男前だぞ」
「勝手に言ってやがれ」
「こんな姿で言われましても」
毒づくデッドに困惑するグラス。初々しい感じが好感的だな。
「当り前さ。ミーに水着を着せた日には、フェロモンが抑えきれなくなってしまうよ。オヤジも罪な水着を作ったものだ。はっはっ」
男子陣でシャインのみが、我が物顔で表情を輝かせていた。
わかっちゃいたがコイツ、女性陣の水着姿を誰よりも楽しんでやがる。この性格さえなければ、みんなとバカンスを楽しめたんだけどなぁ。
ついつい海の彼方を眺めちまうぜ。
「まぁいいや。せっかくみんな集まったんだからな、バカンスを始めるか。みんな楽しもうぜ!」
俺が発破をかけると、子供たちは声を揃えてオーっと握りこぶしを突き上げた。
「まったく。みんな子どもなんだから」
言葉で呆れるチェルだったが、表情は楽しげだったぜ。




