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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第2章 建築!!魔王城『タカハシ』
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128 筒抜け

 夕食を終え、お風呂にも入れば一日は終わりを告げる。

 私は黒いネグリジェ姿でベッドにふちに座り、電気もつけずにコーイチが部屋に戻るのを待った。

 暗い部屋のなかで雨にも似た音を聞くのは、どことなく物寂しさを感じるわ。

「にしても、フォーレの発言には驚いたわね。私の前で堂々と魔物の密輸(みつゆ)について話すのだから」

 お父様もお母様も、戦力面では手を貸さないスタンスだったもの。果たして、手放(てばな)しで許してくれるかしら。

 暗いフローリングを見ながら、ヒタヒタと近づく足音に耳を傾ける。

「こんな暗い部屋でどうしたんだよチェル。電気はつけねぇのか」

「あら、暗さにも風情があると思えなくって?」

 ドアの方を向くと、パジャマ姿のコーイチが立ち尽くしていた。廊下の明るさをバックに、シルエットが出来上がっている。

 雰囲気にのまれちゃったのかしら、足が止まっていてよ。

「入ってこないの。それとも、立ってジロジロ人を見るのが趣味(しゅみ)なのかしら」

「そんなわけでもねぇけどさ……」

 黒いボサボサな髪をかきながら、言いヅラそうに視線を落としたわ。

「隣、いいか?」

「あら。情熱的というか無謀というか、とにかくいい度胸ね。死にたければ隣に座らせてあげてもよくってよ」

 わざとピリピリ音を立たせながら、隣の空間をポンと叩いたわ。

 臆病なあなたにこられるかしら……って、あら?

 うっ、と立ちすくんで、うだうだ悩んでから自分のベッドに収まると思っていた。けどコーイチは、まっすぐ私の隣に腰を落としたわ。

「どうしたチェル。驚いた顔してんぞ。まるで一日、シャインが求愛(きゅうあい)行動をしなかったかのを見たかのようだぜ」

「何よその例え。天変(てんぺん)地異(ちい)が起きてもあり得なくてよ。で、どうかして」

 ちょっとした驚きを胸に包み隠しながら、話を促すわ。コーイチ相手に気が動転するだなんて、認めなくってよ。

「あぁ、なんとなくこうしなきゃいけない気がした……そうだ」

 座るなりに指を組んで俯いたけど、何かを思い出すと顔を上げた。肩が触れるほどの近さだけあって、顔が近い。

「ヴェルダネスってさ、若い衆が出稼(でかせ)ぎに出てただろ。今日、帰ってきたぜ。エアに任せて脅しておいた」

「知っているわ。メッセージで聞いていてよ。コーイチとも直接話したわ」

「そうだっけ……そうだったわ」

 目を白黒させると、勝手に納得したわ。

 すっとぼけた会話ね。けど、記憶が飛ぶようなことも起こったものね。私もかなり心配したんだから。

「しっかりなさい。そうそう、私からも一つあるわ」

「どうした?」

「夕食にフォーレが魔物を運ぶって言ったでしょ。私が先にメッセージを使って、お父様に伝えておくわ」

「そっか。そいつは助かるぜ。いつもありがとな」

 情けなく笑う。そこら辺にいる人間よりも情けなく見えるわ。なのに、どうして嬉しいんでしょうね。ナゾだわ。

「魔物がたくさん来るってことは、住む場所も用意しなきゃいけねぇな。それに温泉はどうにかしてヴェルダネスにも繋げてぇ」

「魔王にしては、お人よしな考えをしていてよ」

「わかってるよ。けど衛生(えいせい)面はどうにかしてぇからな。公衆(こうしゅう)浴場(よくじょう)を作っとけば、手間なく入浴も楽しめるだろ」

 身振り手振りでアイデアを披露(ひろう)する。まるで子供のように黒い瞳を輝かせながら。

「呆れた。仮に作るとして、温泉はどうするつもり。距離を考えると、どう考えても冷めるわ」

「だよなぁ。今度マイルームでググってみるわ」

 結局、最後はマイルームなのね。便利なスキルなことで。

「そうそう、他にもさぁ……」

 テンションが上がってきたコーイチ。暗い部屋で、有意義(ゆういぎ)じゃない会話を私たちは楽しんだわ。

 夜遅くまで、ね。


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