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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第2章 建築!!魔王城『タカハシ』
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117 大規模工事

 憧れのマイホームがわずか一週間たらずでできてしまったわけだが、内装を覗くはちょっと怖い。とりあえず今日は別のことをすることにした。

 魔王城の方が一区切りついたので、ヴェルダネスの方に手を回すことに。

 早朝。地下鉄から村に出て早々、村長が嬉々として手もみをしながら跪いた。

「おぉ、コーイチ様。あなたのおかげで皆、満足に食事ができておる。本日はどういった用件じゃ」

 この村長もすっかり従順(じゅうじゅん)になったな。今はまだ甘えさせているけど、そのうち重労働なんだかんな。そんときに反発しないでくれよ。

 改めて周囲を見渡すと、少しずつだが村人に肉がついてきた。まだまだ()せ気味だが、無気力な雰囲気は()っしている。

「あぁ、そろそろ開拓の下準備でもしようと思ってな。ここ一週間で開拓(かいたく)予定図も作ったんだ。まずは地面をいじるから覚悟しとけよ!」

 一応、脅しになるようにと悪い笑みをして言い聞かせてみる。侵略された立場なんだと、再確認させなければ。

「えぇえぇ。どうぞコーイチ様のお好きなように。あなた様はワシらに生きる希望を与えてくれたのじゃ。反論はなどもっての(ほか)

 カクカクと嬉しそうに頷く長老。

 いやいや、従順すぎんだろうが。もっとこう、怯えたり恨んだりしないの。俺、これでも魔王候補なんだぜ。

 長老の言動にうろたえていたんだけど、不意に強い視線を感じた。振り向くと、ススキが岩陰に隠れながら緑の瞳で睨みつけていた。

 おぉう。強い視線を感じたと思ったらススキか。彼女は若いだけに回復も早いな。すっかり体型がよくなってきている。

 強い視線を心地よく思いながら、意識を長老へと戻す。

「まっ、環境が激変(げきへん)するだろうから文句を言わずに対応しろよ。泣き言なんて聞かねぇかんな」

「まさか。泣き言を漏らすものなど、この村にはおらんよ」

 ダメ押しの脅しのつもりだったが、効き目は全くといっていいほど皆無だった。大丈夫かな、強制労働。


 一応、村長に話を通したので子供たちと集まった。

「てなわけでヴェルダネスの魔改造計画を始めようと思うんだが、川はいつ頃に開通しそうだ」

 グラスに視線を向けると、茶色く凛々しい眼差しが返ってくる。

「距離があるので二日はかかります。ですが川の行く先について考えると、日数の想像が利かなくなります」

 ンだよなぁ。川の流れつく先で水があふれかえっていたら笑えねぇもんな。

 腕を組んで青空を見上げる。本日も快晴で何よりだ。

「どこに海があるか知らねぇけど、開通させるか?」

「おとー。それだと誰かにぃ、ヴェルダネスが見つかる恐れがあるよぉ」

「川を辿って歩いたら辿りついちゃうもんね」

 フォーレが問題点を指摘し、エアが笑顔で回答する。

「じゃあどうすんだよ。いくら溜め池を深く作っても、あふれちまうぜ」

「ヴァリーちゃんはー、地中から海にトンネルを作ればいいと思うなー」

「ナイスアイデアだヴァリー。ご褒美(ほうび)にミーの抱擁(ほうよう)をあげよう」

 ヴァリーが元気よく手をあげると、シャインが図に乗った。

 シェイ、ヤれ。

「うぐほっ!」

 視線で合図することコンマ五秒ぐらい。シャインのあごに影からのアッパーが刺さった。KOだ。

「シャインのバカはいつ治んだよ。まぁいいや、それよりトンネルっ掘るのはいいけどちゃんと海に流れんのか」

 デッドが呆れつつも疑問を投げかけた。

「そこは水が流れるように魔法をかければ大丈夫だと思うよ。一回勢いがつけばそう簡単には逆流もしないし」

 アクアが控えめに意見を出した。根拠も何もないのかもしれない。

「やめ。ウダウダ悩んでても仕方ねぇや、めんどくせぇ。とりあえず地中にトンネル作って流そうぜ。失敗したらまた直せばいいや」

 どうせ答えなんて出ないんだ。トライ&エラーでガンガン進めちまえ。うるさい上司とか責任なんてないんだから。

「おもしろいほど開き直っていてよ、コーイチ」

 チェルの、大丈夫かこいつって視線が痛いけど、突き進むだけだね。

「でだ、グラス。川のルートってある程度は確定してるんだよな」

 開拓予定図を確かめながら確認を取ると、首肯が返ってきた。

「だったらさ川の開通と同時進行で、ヴェルダネスに家建てようぜ。仮拠点に似たやつを、村人の世帯の数だけさ」

「おいおいジジイ。また大変なこと要求してくんじゃねぇか。大変だったんだぞ、アレ建てんの」

 デッドが赤い瞳をジト目にして、嫌な表情になった。

「家を建てるのが簡単でたまるかっての。ましてや一週間で作るなんて異常だかんな」

 よくもまぁ、あんなに立派なものを建てたなって思うよ。今でも思い出すと放心しちまうんだかんな。

「別に二階建てじゃなくていい。平屋建てでいいから造ってやってほしい。頼む」

 子供たちに頭を下げる。するとどよめきが走った。

 人間なんて基本は衣食住だ。ほどよく満たしてやれば多少の無茶も聞きやすくなる。

「頭を上げなさいコーイチ。魔王になるのだから、やすやすと頭を下げてはダメよ」

 チェルからの叱責(しっせき)。確かに頂点(てっぺん)が及び腰だと情けない。けど、頭を下げられない人間になるのも危ない。

「ケッ、だせぇジジイだ。建てりゃいいんだろ、建てりゃ」

「そうですデッド。一回建てたのでコツを覚えましたし、次はもっと早く建てられますよ」

 デッドがふて腐れながら賛成してくれたのはいいんだけど、シェイが不吉な言葉をつけたしたぞ。

 おいおい、いったいどれくらいの期間で終わらせるつもりなんだよ。


 村人の平屋建てを含め、川の開通も二週間という高速スピードで終わらせてくれた。

 だから、早いっての。


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